世の正しさと相いれなかった人間が、ゆがんだ正しさによって崩壊した自己を築きなおす物語。
私の記念すべき初エロゲ。処女作がこれでなかったら、もしかするとノベルゲームをここまでプレイしていなかったかもしれない。現代の狂気は私たちみなが抱えているものであり、それはまさに本作で描かれたような、自己が静かに崩壊してゆく狂気なのではないだろうか。世間に掲げられた“常識”からはずれた者は、ゆがんだ価値観をよすがとして自己をうち立てるしかなく、それをひとは時に狂気と呼ぶことがある。『CARNIVAL』で描かれたのは、そのようにして常識の外で音もなく崩れてゆく子供たちの姿であった。空転する生を生きながら、ぜったいに手の届かない“幸福”という幻を目指し、走りつづけようとする姿は、すぐ先にゆき詰まった未来が見えるにもかかわらず、とても美しく感じられる。