日本のお家芸、異類婚姻譚の類型・亜種とも言える物語。
言葉による表現ないしコミュニケーションを扱いながら、示唆に富む様々な洞察を示してくれた、文字通り“言葉”についての魂の物語。漢字やかなの字義に潜む日本語の意味のゆれや、ひとつの文化圏のなかでの言語変化の歴史など、言葉についてあらゆる角度から眺めなおした、ノベルゲーム界隈ではほかに類を見ない作品である。言葉と命が時に等価となりうることを教えてくれる、私にとっては特別な一作。また、日本における神と人間の歴史を、民俗や神話を介することなくきれいに語った作品は、ノベルゲームに限らずとても貴重だとあらためて言っておきたい。