ヤってみろ。ヤればわかるさ
「ぬきたし」が大感動で100点をつけた自分から見てこの作品だって100点であろうと。
そう思ったんですがルート展開上あれくらいの心揺さぶられるシーンがあったかどうか。
間違いなくありました。ほんっとうにこのメーカーは期待を裏切るどころか振り切るくらいのいろいろな泣き笑いを提供してくれます。
美しょゲは昨今リリース本数が減少していることは紛れもない事実です。だって人口が減っているのですから。
夢中になっていた人たちはもう中高年。クリエイター側は引退しているかもしれない。
そんな中で、これくらいの爆発力のあるものを提供してくれる今だからまだまだ終わったわけではない。買う人はパッケージを買ってもダウンロードを買ったりするんです。そんな「底力」をひしひしと伝えてくれた怪作でした。なんとなく、「名作傑作」というコトバで表現するのは違和感が残る。そんな簡単に口に出せるものではない。そんなレベルにまで届いているのだと。
露出狂の主人公が何故か露出だけで懲役10年というありえない刑期を喰らってありえない監獄に収監されるところから始まるわけですが・・。
共通ルートの時点ですでに軽くクライマックス。理不尽に立ち向かって針に糸を通すような場面の繰り返し。
始めたときから世界観に没頭していました。とにかく盛り上げる前提フラグ立てが常にすごい。
そしてエロネタパロディもすごい。抜きたしのときも大概凄かったですが全く衰えを見せることのないエロネタはすでにメーカーの専売特許といっても間違ってない気がします。
前作の「孕めオラァ」ほどの印象に残るようなフレーズは「山岸刑務官」の担当。全ての普通の文章を何らかでエロネタで拾って因縁をつけます。くどいほどに。上司までくどくて呆れるくらいのレベル。
そして、顔がない俗に言う「モブキャラ」に聞いたような声がいっぱいでてきます。ええ。どっかで普通に
メインヒロインをやっていた人たちです。そんな人達が普通に淫語たっぷりのセリフで盛り上げます。
このやりとりを聴いていると、否が応でも「戻ってきた」気持ちになります。
そんな世界観を植え付ける共通ルートから、ヒロインルートに入っていくわけですが。
ヒロインには「因縁」らしき主任矯正刑務官がいます。
ノア→ソフィーヤ
妙花→樹里亜
千沙都→夕顔
個別ルートでは深くこの繋がりが重要な役割を担います。ノアは姉妹愛、妙花は麻薬と宗教、千沙都は闇を嫌う看守との因縁。
推奨攻略順は、普通通り千沙都→妙花→ノア→グランド これでOKだと思います。
これだと、とあるシーンでノアがなぜソフィーヤを庇うのかというのが個別ルートで綺麗に反映されるので。
3キャラとも個別ルートは10時間くらいでしょうか。
千沙都がシナリオライター、妙花がイラスト、ノアがプログラミング、主人公がプロデューサー。
露出でしか自己表現ができなかった主人公が創作に出会ってヒロインと繋がり、完成させていくストーリーに絶妙に絡んで絶妙に立ちふさがる監獄側の人達。なんとなくグランドルートでのラスボスについては想像がつきましたが、まさか、あそこまで味方につけておいてバッサリ切り捨てて地獄の一歩寸前までいってからの怒涛の展開。
これは抜きたしをプレイしてきた人間からしてみると、どこで誰が最後の最後に助けてくれるのか。まで想像しましたが、「わかってはいても」感動の洪水に巻き込まれて物語に入り込めた人は間違いなく泣けるでしょう。
予想がつけやすかったというのは、自分がそれだけ作品消化が進んでいて展開を読めてきたからであって、それでも、わかっていてても物語に夢中になる。
そして、物語を夢中にさせる「キャスティング」が抜きたし同様お見事でした。ヒロインボイスは3キャラともに完璧。看守サイドのサブキャラも完璧。囚人サイドのサブキャラも完璧。
他のものに比べて飛び抜けて優れていたのが声優さんたちの「声量」です。ブチ切れたときの声量がとんでもなくすごい音量です。これは今までになかったと思います。重ねてメインの声に被せるバックグラウンドボイスも、他作品ではHシーンの演出でしか見たことがないのに、ちゃんと「喋っている」んですよね。ボソっとつぶやいている控えめな千沙都など、そこで存在感をちゃんと演出しているところもお見事でした。
3キャラの個別ルートをやった後、どういう方向に流れていくのか、全く想像がつきませんでした。
ある意味いい形でのエンディングだったので。ただ何となくグランドルートにあの人が絡んで、まさか主人公があそこまで追い詰められることになるとは。さりげなく支えてくれていた絵理子さん、アマツくん。この二人(?)があんな爆発的な感動シーンを演出してくれるなんて思ってもみなかったよ。
このレビューは思い返してまた再編するかもしれません。終わった余韻が大きすぎて随分と書きなぐってしまってしまったので。
令和最強クラスの笑いゲーでシナリオゲーで泣きゲーです。ヤってみよう。ヤってみればわかる。