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EmuGameさんの百奇繚乱の館の長文感想

ユーザー
EmuGame
ゲーム
百奇繚乱の館
ブランド
アストロノーツ・シリウス
得点
80
参照数
83

一言コメント

ツッコミどころは多いがしっかりした「館」モノである。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

はるか昔にあった「館モノ」という作品。
マップ移動があって、時間という概念があって、フラグがいつ立つかどうかもわからない。
一つ踏み外すとあっという間にバッドエンドになる。
世界観がぶっ飛んでいて圧倒的なスケールのかけ離れた場所に潜り込むという設定。

「遺作シリーズ」「河原崎家の一族」などなど。緊張感のある場面やシーンが思いっきりオマージュされております。
なので、こういう作品を遊んだ人にとっては懐かしさを感じることは間違いないでしょう。
遭難しかけて偶然転がり込んだ巨大な館がいろいろと浮世離れしていて、選抜された「婿候補」にちゃっかり
潜り込んでいろいろな場面に遭遇していくという。

マップ移動があり、そこで遭遇するキャラによってルート分岐がされていく。
昔ながらのバッドエンドがあちこちで埋め込まれたマルチエンディングもの。進めていくのが非常に楽しみ。

私自身はるか昔からのゲーマーというのもあり、この作品には高評価をつけました。
今どきの人たちには受け入れられない人も多いかもしれません。
ホラーと言ってもいいくらい、やばげな場面やシーンも非常に多くあります。嫌悪感を感じるキャラも
出てくるかもしれません。それくらいクセの強いキャラのオンパレードです。

そして、私自身「女装モノ」というのはいろいろ遊んできたのですが、本格的にショタキャラが
ヒロインと同格で多くシーンが有るという設定は初めてでした。しかもこの子のエンディングまで存在する。
あまりその手は得意ではないのですが、果てしなく近く「オンナノコ」寄りなキャラなので、普通に
女装キャラなんだろうという視点で見ることができる分救われたかな。

近親相姦で生まれてきた娘たち。婿選びは出来レースで、血のつながった人間がとっくに
当選するシナリオが出来ていたという。
この大切な場面というのが、だいぶ掘り下げたところでやっと判明するところもいい塩梅。
意外と伏線回収もしっかりしています。文章も非常にわかりやすい。難儀することもさほどない。
重ねて優秀なのが「音楽」。怖い場面ではしっかりと怖いサウンド。ホッとするときはホッとするサウンド。
音楽による演出が非常にしっかりしています。これは評価していいところじゃないかな。

ヒロインも一癖二癖ある人ばかりですが、みんな個性が際立っていて上出来。
お母さんから娘さん、はたまたメイドからショタまでいろどりみどり。それが選択肢によって
ちゃんと決まっていくのも面白かった。

良いところが目立つ反面、今一つの部分もちょっと目立ちすぎ。
まず、主人公が「絶倫」すぎる。もうだいぶ人間離れした性欲モンスターです。
シーンでの発射が凄まじい。まず一回では終わらず、二回三回は当たり前。それが矢継早に続くもんだから
現実味からズレが生じてくる。ヒロインが魅力的なところは認めるのですが、ここまでくるとさすがにヤりすぎ。
そして、声優陣がちょっとキャラとズレていたかなぁ。
最年少であろうリリカの声が全然「最年少」ではないんですよね。
演技力は申し分ないというか、別なゲームでも聞いたことのある声で申し分ないのですが、キャラが若くても
声に若さを全く感じない。全体的にバランスが取れていないんですよね。
あと、もっとHシーンはシンプルでも良かったんじゃないかなと思います。抜きゲーであるのはわかりますが後半はずっと流していました。それくらい凄まじく長い。こんなに長い作品は色々やってきた中で初めてです。

新しさと古さがうまい具合に調和している貴重な作品であることには間違いありません。
みんなに推奨できるというものではありませんが、懐かしさを感じる方もいるはずです。
懐かしいものを愛する人、抜きゲー的なものを愛する人には、刺さる人がいるかも。

文章も上手でずっとモチベーションが下がらず読んでいけたのも、良作だからこそだと思います。
最後に一言。
エッチシーンが多いのはいいのですが、エッチシーンの声がお腹いっぱいになって流した作品はまーまれぇどのあの作品以来。声もちょっと自分好みじゃなかった分、余計しっくりこなかったのは間違いないのですが・・。
普段の会話シーンでの演技は皆さんお見事でした。