女装系作品として珠玉の作品
ずっと前から所持していて、お嬢様シリーズがやっと終わったのでがっつりシナリオ系を
始めようと思い手に取りました。しかしやっぱりウィルプラス。
おすすめルートは太陽2人→羽音→憩→空→ というところでしょうか。
世界観を知るためには太陽を先に攻略しておくのが絶対的なルールでしょう。
小さな頃から孤児として育てられ、7人のメンバーが集められた集会の場所で羽音と出逢い
使用人として立派に育ったところからスタート。そして自分の病を知り、羽音が進学してしまい
女子校に潜入するために女装して潜入することから始まると。文章にしてみると、非常に「テンプレ」
どおりであることがわかるという。
しかし、学園は2つあり、月の学園に行ったお嬢様とは違って主人公は「太陽の学園」に行ってしまうと。
ここで1つ目のクライマックスポイント。最初に仲良くなった照にどうしてもお嬢様を追いかけたい
気持ちを伝えたところで月の学園に向かうシーンが非常にスリリング。
ここで「太陽と月」のシナリオの分岐点になるのですが、最初は迷わず居残ることを選択。
太陽のシナリオは、全体的に見覚えのあるような光景が多く見受けられます。
願いを叶える絶対的な力を手に入れられる存在、μに一番近い存在が、ヒロインのひかる。
ひかるも集会にいたメンバー。その前に出会っている照もそのメンバー。
ここではところどころで訪れる絶望的なハプニングをことごとく救う主人公に天使の羽が
降臨するところで「奇跡」を引き寄せるストーリーが軸。
最後の最後で絶望の底に突き落とされた、ひかるを救うのも「奇跡」によるもの。
心地いい読後感と、背景にいるサブキャラの素晴らしさに浸りながら2人のヒロインをクリアして
月の学園ルートへ。
月の学園は太陽とはうって変わって暗い風景。そして太陽とは違う3種類の魔法が飛び交う物語。
3種類の魔法を収めるリーダーも、実は集会にいた7人のメンバー。
そして所々で出現する絶対的な強さを誇る武人の存在。
軽めで心地よかった太陽ルートとは違って、こちらは非常に濃密で重厚なシナリオが展開されます。
かといって、読みづらいわけでもなく、文章に一気に引き込まれる魅力で一気に読破できます。
羽音の目的は薄々何となくわかっていましたが、その想いがちゃんと個別ルートで叶うところもホッとします。
憩のルートは、かけがえのない集会の親友、トロ先輩とのストーリー。最後の最後で
かわいいトロ先輩はきっとサブキャラでも人気を集めそうだと思ったら、やっぱり批評空間でもそうでした。
そして、主人公の側にいつもいる「空ちゃん」ルートもちゃんと存在する。
もうこの子は・・。立ち絵ではパッとしないような見た目ですが、個別グラフィックになると豹変します。
金髪ヒロインの中でトップクラスの可愛さではないでしょうか。こんな勇敢で魅力あふれる主人公に
ずっとくっついていれば好きにならないわけはなく、恋心をぶつけるシーンではやばいくらいの魅力。
Hシーンがさりげなく一番多いというのも、この子が隠れセンターヒロインであることを示しています。
ただ、空ちゃんルートで終わるわけではなく、この世界の仕組みを知ったところでラストの大団円を
迎えるというのが、真のグランドルートです。「世界を知る」ことで開放されます。
ここまで読み解いた人には何となく察することはできるとは思いますが、いろいろな疑問点が
このルートでやっと開放されることになります。伏線回収も非常に綺麗でした。
振り返ると、ネガティブなところが殆どありません。
ヒロインのクリア順を守ることが必須なことと、最後のグランドルートでは胸焼けするくらいの
神の存在と悪魔の存在、根底に来る当主様の存在について。これは読んで疲れる人もいるかもしれません。
多分それくらいでしょうか。シナリオゲーでは世界観が事細かに伝えられることが鉄板なので、それを
いかに「疲れずに」伝えるのがライターの腕の見せどころだとは思いますが、多少筆が暴走した感じが
しないでもないです。とはいえ、許容範囲です。私はもっと暴走するシナリオを見てきているので。
キャスティングも非常に見事でした。「お嬢様」を演じる青山さんは鉄板です。
「おしとやかなお嬢様(」を演じた遠野さんも鉄板です。かわいらしい妹を演じるしずくさんも鉄板。
どっかの「かずさ」みたいな憩さんの声も鉄板。
そして、役どころの難しい感情変化が激しく大変だったであろう空ちゃん役のふーりんが大正義。
その他サブキャラも含めて誰一つ違和感を感じない見事なものでした。素晴らしかった。
最後に、主人公の鈴田さん。重要なシーンでしっかりと「伝わる」声を届けられるというのは天性のものであると勝手に解釈しております。それが圧倒的な迫力で伝えられたところ、称賛しかありません。
演技の緩急がとてつもなく上手で文句のつけようがありません。
ここまで一気に楽しく消化できたことは久しぶりだった気がするので迷わず高得点。
高得点がつけられた理由の一つに「かにしの」「乙ボク」をクリアしたというのも非常に大きい。
分校と本校があった「かにしの」の世界観が頭をよぎり
ちょっぴり演技がたどたどしかったけど圧倒的強さで周りをねじ伏せた「乙ボク」の
瑞穂ちゃんのような主人公。
この2つをクリアした人には、余計にこの作品は突き刺さるはずです。自分はそうでした。
Hシーンは全体的に少なめだったような気がしますが、ヒロインと結ばれるときのシーンは
全体的に愛情が溢れていたシーンが多くありました。特に空ちゃんと結ばれたところが印象的だったかな。
女装系作品では迷わずイチオシですが、ダウンロード版がないのだけが非常に痛いです。
ウィルプラス系であれば、是非ダウンロード版を提供していただけないかなと・・。そのせいで
今のパッケージ版が非常に高くなっていてどうにもおすすめしがたいところが歯がゆくて仕方がない。
「知る人は知る」名作といったところでしょうか。ネタバレレビューになってしまいましたが
少しでもこの作品の存在が多く知れ渡ることを祈っています。