粗削りだが複数のプロットが巧く練りこまれたヒロイン・ユーモア不在の短編SFドラマ
両親も妻子も居場所も失ったプロの運び屋が
アンドロイドに娘を見てしまい、
最大の後悔と共に封じていた記憶をこじ開けられ、
やがて選択を迫られるというお話
特徴的なのはほぼ全編に渡ってユーモアの欠片も
見当たらないこと
いわゆる最初から最後までトゥルーエンドに向かって
突っ走るような無駄/余裕のない構成
粗削りだと感じた部分は主役2人のCVと、フィリアの造形
あまりにも魅力に欠けるし、単調だと感じた
特にフィリアの絵が常に正面を向いているのが気になった
一緒に歩いているのだから、側面の立ち絵の方が臨場感があったのでは
シナリオ構成的には、前半がずっと陰鬱なムードで
不快指数高めのジュードの声が続く点が辛かった
計算されているとは思うけど
また、フィリアの声が最初からアンドロイドとは思えず
成長していっている様子が演技から伺えない点がマイナス
良かった点としては
最後に読者に送られた暖かいエール
サブキャラのデリラが良かった点と
細かいデバイス関連のプロット
個人的には最後までフィリアに魅力を感じなかったが
あくまで彼女は娘であって、ヒロインではないのだから
当然なんですよね
銃を向けられて「安全装置だ」と言える時点で
もう完全に娘でしょう
ただ、最大の不満としては
ウィレムを殺害せずに3人で人類の再生に取り組む展開も
見たかった、という点に尽きる
無償の愛の前には
都合の良い薬で最期を迎える展開も許せるのか
読後感は良いし、爽やかに読者を
後押ししてくれる優しさもある
ただ、単調で粗削りなゆとりの無い短編でもあるし
人類の辿った未来とAIの位置づけに疑問も残る
・人類の辿った未来とその先にある可能性
・共同体から村八分にされた男の生涯の意味
・アンドロイドと人間の境界
・無償の愛
読者によって異なる感想になる作品だと思うし、
色々と考えが広がる佳作だと思う