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ERSRさんのFLOWERS 四季の長文感想

ユーザー
ERSR
ゲーム
FLOWERS 四季
ブランド
PROTOTYPE
得点
73
参照数
82

一言コメント

コミュ障のガチ百合軍団がスイーツを頬張りながらターゲットを1人1人篭絡していく少女漫画。「車椅子探偵えりかの学園七不思議事件簿」とかの方がタイトルとしてしっくり来る内容であり、佐倉綾音ファンにおすすめの一品。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

主人公・白羽蘇芳がかなりキツい。
「毒継母に受けた精神的ダメージからの回復」がテーマのうちの1つの物語
ではあるものの、終始異常に小さい声でボソボソと話し、
自分の考えは一切他人に話さない「察してちゃん」状態が最後まで続くため、
プレイヤーとしてはただのストレス装置。

なので、ほとんど物語を動かしていくのは「八重垣えりか」であり
これがほぼ全編に渡って続いていく。明らかに他キャラの2倍以上の台詞量だが
佐倉綾音のCVが良いため、そこは英断だと言える。

原画はなかなかの判子絵で、鼻から口までの距離が長くクセが強いので
好みが分かれる出来。えりかの絵はもうちょっと何とかならなかったのか。
もちろんゾンビ立花は大変素晴らしかったです。
CV的には、ネリネが声でキャラの魅力を大幅に損なっている。

また「推理パート」と呼ばれている箇所で『推理』や『論理的思考』を意味する
「reasoning」というワードが使用されているのは何かの冗談だろうか。

「主人公が知っていること」を「プレイヤーにすら開示しない」ため
当然推理のしようが無く「知識のない状態での総当たり」になってしまう。

こういうプレイヤーのことを全く考えない構成にOKが出されたことが
ミステリーであり、プレイヤーにとっては「ただの押し付け」である。

通常選択肢も「緑」「黄」の種別がほぼ意味不明であるため、
無駄なセーブ/ロードをする必要が生じて快適であるとは言い難い。

全編に渡って漂うネチっこい「優雅な陰湿さ」は独特のものであり、
常に「言葉を発した人の心情」ではなく「言葉尻」だけを捉えて
ネチネチやっていく点は女性脳度がかなり高い。

BGMは良い仕事をしているものの、reasoningではもう少し
緊迫感を出してメリハリを付けられなかったのか。
スネアが鳴ったのは秋と冬の数箇所だけである。
テーマ曲は正直全然良くない。

冬で語られる真相も大したことはなく、
多くの方が指摘している通り伏線の放置も目立つ。

キャラ的には秋以降いじられコメディエンヌとして開花した立花や
えりかと千鳥の仲睦まじい様子は良かったが
ほぼ出番のないメインヒロイン・マユリのどこに魅力を
感じれば良いのか?という疑問は大いに残る。

2回も定番の「入れ替わり」を演じさせられる
沙沙貴姉妹に対する明らかな蔑視や、

やたら「美人」ともてはやされる実務能力ゼロで
妄想の中で生きている主人公──確かに、これは少女漫画であり
言葉にとらわれるあまり、呪文のように無限に続く同じ言い回しや
映画のセリフなど、ライター渾身の「作品」というよりは「性癖」。

「なぜ父親は継母と離婚したのか?愛していなかったのか?」
と蘇芳は考えるが、虐待を父親に打ち明けた結果なのだから、
明らかに自分の娘を守るためだろう。なぜ分からないのか。

それでもムービーと最後のタイトル絵は出来が良く、
花たちの幸せを願わずにはいられない。
分割商法で一定の利益を出した商品の終着地。