童話と現実を繋げる不条理を描いた佳作。上質な絵とBGM、場所選択とスケッチブック等の工夫による魅せ方の巧さが光る。
「シンソウノイズ」「バタフライ・シーカー」の海原氏作。
railの希氏もシナリオ参加。ということで興味を惹かれた。
フェアリーテイル・シンドロームという病気に罹った患者たちが暮らす医療施設、
裏の顔は、実験施設であり、会員制の風俗施設。
記憶も役割も失った主人公が目覚めるところから始まる物語だが、
施設の中でも理性的で疑問を持ち続ける主人公とゲルダによって
読者とのつながりは保たれ、物語への牽引力はある。
アリスを始め、現実から逃避し、童話の登場人物だと思い込んでいる女たちと
一部犯罪者も交えたリアルさに徹した医者・職員たちとの対比が凄い。
絵が普通であれば、エロ的にはこれはほぼ凌辱ゲーであり、
ヒロインルートは全てBADENDと言っていい内容だが、
不思議と悲壮感は無く、作品全編に漂う諦念による窒息、という印象だ。
やはり紙芝居なのでところどころ演出が弱く、
クライマックスに迫力が不足していたり、
ミステリーとしては中だるみするのが惜しいし、
グレーテル(CV:草柳順子)は狙いすぎだろうと言えなくもない。
それでもアリス、ラプンツェル、ゲルダはキャラとしての完成度が高く、
計算された空虚さや、絵における美術面も非常に高度なものだった。
何だかんだ、アリスルートで説かれるイマジネーションの重要さ
という点には頷けるものがあった。
現実においても、良い未来を描く妄想力って大事だよね、と。
ただ、どうしてもヒロインに焦点が当てられる話なので
女の身の上話になる面白みの無さという点と、
主人公/ゲルダの過去的にもシナリオはやや弱かったかなと思う。
オデット/オディールも、そんなもん?という。
各ルートで死亡者が出ても、あまり衝撃が無い軽さ。
そういった意味で、もっとエグかったり、ミステリー色が濃かったり
した方が面白かったかもしれないという意見には同意。
最後はオズの魔法使いのドロシーが霊として生き返るとか、
超展開で解決するあっさり風味。
主人公の男の子が可愛いかったり、ラプンツェルがエロかったりするのが
個人的には良かったかな。
総じて、オンリーワンの魅力を備えた佳作でしょう。