丸戸氏のテキストは鉄板。ヒロインも皆非常に魅力的で、ままらぶに比べ、メイン(トコ)ルート以外が大幅に強くなっている。氏の過去作から、トコルートではさらに盛り上がるものと期待したのだが……。
いつも通りヒロインの掛け合いと楽しい雰囲気からなる心温まるシナリオ。
夏夜、姫緒、麻美、どのルートも彼女たちとやきもちを焼くトコを見てニヤニヤ出来る。
ルートを進めるにつれ、トコをどんどん好きになっていった。
どのルートもトコが絡むので、トコが駄目だときっついだろうな、とは思う。
自分は大好き。
ヒロインがドロドロしている、という意見が多いよう。
確かに本音トークが炸裂しているが、不快に感じるものでは全くなく、むしろニヤニヤどころ。
本作の大きな魅力のひとつだと思う。
主人公も駄目とは言ってもやるときゃやるタイプなので好感が持てる。
もっとも、麻美ルートの主人公はもう少ししっかりして欲しいところではあるが。
トコルート前で82、3点といった感じで、きっとトコルートをやれば80後半いくだろうと思っていた。
トコルート前でトコ大好きになっていたし。
しかしはじめてみると、いきなり麻美と共通でこけた。
そのあとにそれなりの長さのシナリオがあるから許容範囲ではあるが、
他ルートではないことだったので正直残念に感じた。
麻美ルートでは主人公をもっとしっかりさせて、
トコをあそこまで出さずにトコルートにまわすべきだったと思う。
そうすれば麻美・トコどちらのルートも(少なくとも印象上は)もっとよくなったと思う。
まあ、これは減点というほどではない。
問題はシナリオだ。
穂香が帰ってきて、穂香が認めてくれなくて……、というのはほとんどの人が予想していたことだと思う。
穂香に婚約者が付いてくるのは別にいい。
婚約者は、穂香側につくでも、トコ側につくでもいい。
しかし、
な ぜ は な し が そ ら さ れ て い る の か
その、認めてくれない→いろいろ頑張る→認めてくれる、
というのがルートの肝だと考えていたのに(今でもそう思う)、そこがない。
代わりにあるのはいきなり降って沸いたどうでもいい山場(?)。
皆なんだかんだいっても結局はいい人なのが本作の魅力なのに、
ここで真性の悪人を出す意味がわからない。
彼が悪人であることで何か得られるものがあっただろうか。
最後の最後で男性キャラ(しかも主人公除く)の魅力を増されても仕方ないんだが。
ひょっとして上手く書けなくて、話をそらすために出したんだろうか。
丸戸氏にそれはないと信じたいが……。
いろいろ言ったが、基本的に
丸戸氏の軽快なテキストで構成された、心温まる物語であることは間違いない。
あくまでも同列の4つのルートと見れば、これほど安定した作品もめったにない。
トコルートは、他のヒロインルートと比べて悪いわけではない。
ただ、全体の構成やトコの魅力から、期待するなというのが無理な話で、
それにもかかわらず、他ルートを上回るものではなかったということ。