情景と心情描写が非常に丁寧で読み物として面白かったです。少女達の綺麗だけど切ない生き方が強く心に残る素晴らしい作品。
メーカーの作品は初プレイですが、結論としては自分の予想を遥かに上回ってくれました。
癖は強めですが絵本を読んでいるかのような深みのある美麗な絵と、キャラクターとマッチした声優の演技、雰囲気に合った美しいBGMに臨場感あるSE、そして何といっても秀逸なシナリオとテキスト。
テキストが本当に絶妙で、情景や心情描写が非常に丁寧なのですが、堅苦しく感じない良い塩梅であったり、難読文字にはしっかりルビが振られているので、濃い内容なのにプレイ中に疲労は感じませんでした。
他のゲームだったら状況次第では流し見する場面が少なからずあるのですが、今作は先述した丁寧な描写により読み物としての面白さが抜きんでており、単語1つ1つを噛み締め、反芻しながら最後まで飽きることなく読み進められました。
シナリオは閉鎖された謎多き学園と過剰なまでに抑圧された環境での少女達の苦悩や愛の物語。
百合やホラー要素があるのですが、トラウマになる程キツい描写はない(というよりは作品を彩る1つの要素に過ぎない程度の微ホラー)ですし、結末はかなり綺麗だったので、ホラーだから結末が......という自分の懸念はありがたいことに杞憂に終わりました。
百合についてもとって付けたような設定ではなく、納得できるだけの説明が作中でされていたのは好印象。
クリア後はむしろ男が居たら成立しない世界だなという感想を抱きました。
シナリオは体験版での勢いが最後まで衰える事無く、本当によくここまで走り抜けてくれたと賛美したいくらい失速せずに描き切れていると思います。
キャラクターも心情描写を厚くした事により、皆魅力的に感じました。
特に好きなキャラはアルエットとアヴェルラ。
アヴェルラは自分の記憶が正しければ笑顔を浮かべたの1シーンだけなんですけど、その為だけに差分描いたとなると贅沢すぎますねw
登場キャラがどのキャラも独立した主人公であるかのように深く掘り下げられており、苦悩や葛藤や欲望に苦しみながらも自分達の生を全うする姿には心打たれました。
作中で強いて気になる点を挙げるなら、各キャラ同士の想いの衝突といった言い争う場面等はほぼ無いので、特に終盤は良く言えば綺麗、悪く言うならややインパクトと余韻に欠ける印象だったという事くらいでしょうか。
そういう意味では作中最も心が震えたシーンは序盤~中盤のマコーのシナリオだったのですが、各キャラについて深く降り下げた後では、あの子達の想いが衝突するような場面でも人物像ではない......争いには発展しないだろうなと終盤の展開にも納得しています。
それ程までに綺麗な少女達の切なくて美しい物語なのでしょう。
作品を通して本当に良いものを魅せて頂きました。
本作をプレイして心から良かったと思います。
今作は綺麗に締められているものの、過去編、プエラリウムのその後、外の世界とまだまだ掘り下げられる余地はあるのでFDにはひっそりと期待したいです。
以下今作の感想とは少し離れた自分のお気持ちです。
今作の主人公アルエットのCV萌花ちょこさんがツイッターにて、新規の作品は今作が最後となる気持ちで収録に臨んだという旨のツイートをされていました。
自分自身界隈の作品をそれなりの数プレイし、作品に携わるクリエイターについても理解が深まってきた中だったので感慨深い思いです。
今作のアルエットやシンソウノイズのモモ、レイラインの眠子等、無垢で元気を貰えるような明るい少女役を演じる上では萌花ちょこさん以上の適任はいないというのが個人的な見解でした。(もちろんどう感じるかは個人の感性次第ですが)
界隈は少しずつ衰退してきており、時代と共に支えているクリエイターも入れ替わっていく事は理解していますが、それでも好きなクリエイターが身を引くのは喩えようのない淋しさを感じますね。
様々な事情がある中で、辞めないで欲しいと言うのは自分のエゴでしかないのですが、継続作品等また別の作品で出会える事を願いたいものです。(エヴァーメイデンFD待ってます)