これといって大きな不満点はなく良かった点もあったものの、共通ルート序盤の描写が希薄な影響で全体的に見ても薄味な作品になってしまった印象です。個別ルートはいちゃらぶが豊富に含まれており、中でも希ルートは特に魅力的で良かったです。
友達の居ないぼっち達が集い『友達ごっこ』をする事により真の友情が芽生え、やがて特定のキャラとの恋愛関係に発展していくという物語でしたが、この『友達ごっこ』の導入や友情の芽生える過程描写が荒っぽく、その後の展開も薄っぺらいものになってしまったというのが個人的な感想です。
ヒロイン達は皆総じて魅力的だったのですが、所謂コミュニケーション能力が露骨に乏しいキャラがおらず、友達ができなかった事を懐疑的に思ってしまうような子達だらけな上に、結局友達ができなかった背景があまり掘り下げられないまま進行していきました。
個人的にはメンバーと徐々に打ち解けていく様というのを見たかったのですが、友達ごっことしての豊富な活動内容に反比例するように描写が希薄で、登場キャラについての背景や設定についてほぼ掘り下げられる事なく、ただひたすら会話をするだけの薄っぺらい展開の連続で、何かを成し遂げた訳でもなければ数多くあるイベントも大して掘り下げないまま、いつの間にか時が飛んで月日が経過していき、別れ際になった途端急に別れを惜しみ始めてもこちらは共感できず......残念でした。
所謂一ヶ月タイプの作品ではなく、今作はおよそ半年間を描いた作品で、他人→友情→友達以上恋人未満→恋人という過程を大事にするのであれば半年間という選択は正しいのですが、いかんせん題材に対する作品のボリュームが足りていない印象でした。
シナリオ面の評価としては、味の薄い食事を大して咀嚼せずに飲み込み続けているような展開が続き、良く言えばテンポがいいのですが、個人的には共通ルートは大して印象に残りませんでした。
この時点では評価を70前半くらいに予定していました。
一方で微妙だった評価が覆ったのは個別ルート。
元々このゲームの魅力としては立ち絵の動かし方が秀逸で、瞬きや口パクも備わっており、キャラゲーとしたの側面が強い点でした。
本レビューを記載中の2022年初頭近辺で本ゲームと同じく瞬き、口パクが備わっているゲームとしては 『創作彼女の恋愛公式』が思い浮かびますが、恐らく2017年発売の本作の方がその点においては高い水準を誇っています。
また、個別ルートに入るとどのヒロインも総じて友達以上恋人未満というもどかしいけど心地の良い関係というものを味わう事になり、関係が崩れる事の葛藤や好意の自覚といった心情描写はよく描けており、恋人になってからは山はないものの、所謂バカップルとしてひたすらいちゃらぶする展開となっているので、キャラゲーを求めている方に対しての需要は満たせていると思いました。
特に抜きん出ているルートは他の方のレビューでも散見されている『ノノ先輩』こと『希ルート』で、ノノ先輩の純真さと素直でストレートな感情表現と恥じらいとのバランスが終始可愛くて素晴らしく、また献身的であったり包容力の高さも相まって抜群のキャラクター性を遺憾なく発揮していました。
主人公の過去を踏まえて作中で最も成長を実感できるのもこの希ルートで、そういった意味でも他ルートよりも深い読後感を覚える事ができました。
ノノ先輩が居なかったら75点という1つのボーダーラインを最終評価にしませんでした。
これまでそれなりの数の美少女ゲームをプレイしてきましたが、ノノ先輩はその中でもトップクラスに魅力的で理想的なヒロインだったかもしれません。
総評すると、特に序盤の描写不足は否めないものの、キャラクターは総じて皆可愛く魅力的でキャラゲーとしての水準はまずまずといった印象です。
特にノノ先輩こと希ルートは素晴らしかったです。