美麗で可愛いキャラクターにストレスフリーなシナリオ、濃密ないちゃらぶといったブランドらしさが感じられる良質なキャラゲー。
妹ヤバ、神ヤバに次いでHulotteは3作目のプレイ。
ほぼ全ての作品が中央値75点で統一されている安定感のあるブランドで、基本的には神系統のスピリチュアルな力の影響を受けた異能力主人公がモテまくるキャラゲー作品です。
キャラの魅力に重きを置き、濃密ないちゃらぶ、綺麗で可愛いキャラデザ・原画に充実したエッチシーン、ピリっと効くスパイス感覚の味を引き締める適度なシリアスのバランスが個人的にはかなり刺さっており、実際に評価されている中央値以上に個人的には高品質なキャラゲーであると信頼を置いています。
何よりも"作品を通して不快なキャラがいない居心地の良い世界観でストレスフリーで読み進められる"という点がキャラゲーとして見ると大変有難く、非常に優秀な部類であると評価しています。
今作についてもその辺りにおいては自分の期待通りに仕上がっていました。
ここからは良かった点、気になった点(不満点)、各シナリオとキャラクター性について
良かった点。
・原画、キャラデザが非常に美麗で可愛らしい。
→通常、HシーンのCGはもちろん、メインヒロインは衣装のデザインも良い上に差分が多いのも好印象。
・充実したエッチシーン、シナリオとエッチシーンの関連性。
→前作妹ヤバでも原画は素晴らしかった反面、エッチシーンはテキスト数が少なく、せっかくキャラに魅力があるのに薄味の仕上がりになっていたのが不満点でしたが、今作は1シーン毎の長さが良い塩梅になっている他、一族の繁栄の為という主人公の背景設定と、シナリオの根幹部分でもエッチシーンとは密接な関わりがあるので所謂とってつけたようなエッチシーンではなかった点が良かったと思います。
又、今作にはハーレムルートもあるのですが、ハーレムの世界線についてもある程度納得ができる説明をしてくれたのは今作ならではかなと。(ハーレム自体自分は好きではないのですがw)
・サブキャラ含めてキャラ全員に魅力があり、不快なキャラが居なかった。
→個人的には容姿、内面含めたキャラのアベレージは3作品の中では一番だと感じました。
親友キャラのマモが好きだったのもありますが、今作はメインヒロイン三姉妹との同居生活がコンセプトの1つであり、その三姉妹との同居生活で他作品よりも近い距離でヒロインを描写する事により、キャラの深堀りや魅力向上に貢献できていたのかなと思います。
ただこの点においては他の不満点にも通ずる部分があったので後述。
三姉妹以外のヒロインも主人公が攻め攻めなのでヒロインの恥じらい部分が強調されており可愛らしく感じました。
気になった点(不満点)
・サブヒロイン唯の深刻な立ち絵不足。
→制服、メイド服、(ほぼ出番のない)水着の3種。
そう、私服がないんです。
エピローグでメイド服姿で主人公の住む村へ出向くのはさすがに笑いました。
シナリオは良かっただけに残念。
・SD絵がない。
→そういえば無かったな、とクリア後他のゲームに着手していてふと気づいた為追記した次第。
思い返してみればHulotteの他作品も無かったような......?
自分は気になりませんでしたが日常の些細なイベントシーンをSD絵で表現してくれるのは大変癒されますし、あったら嬉しかったかも程度の感想です。
・主人公がモテる理由がやや弱く、主人公の恋愛感情の自覚も唐突。
→このブランドの主人公は一貫してモテ属性持ちなのですが、例えば妹ヤバでは刻廻の儀でモテ属性を付与した上に妹の協力の元自分磨きをしたり、神ヤバでは縁のあるヒロインとの距離を縮める為に様々なアクションを起こしたりと主人公の行動力や努力も相まってこそ納得できるモテ要素だったのですが、今作のモテる理由としましては、過去に嫁となる約束をしたヒロインとの縁を切った事により、代わりに他のヒロインとの縁が強まったという事になります。
納得できない訳ではないのですが、主人公に特別な魅力や努力する描写があった訳ではないので共通から好感度Maxでやたらモテまくっているのにはちょっと釈然としませんでした。
攻略して次第に仲良くなっていく様や恋愛感情の芽生えや葛藤といった描写が弱いのは今作ならではの欠点ですかね。
・各ヒロインのルート格差、真ヒロイン希里乃の作品を通しての扱いと魅力。
→ヒロインとのいちゃらぶはどのルートでもしっかり描かれますが、シリアス部分においてはルート毎に結構差が大きいです。
→希里乃についてはここが今作の一番大きな不満点なのですが、共通時点で希里乃の行動は定まっておらず、各ヒロインのルートによりその行動が変化します。
一例として、ルート選択肢で甘夏や瀬里香を嫁に選ぶと不満の声を漏らしながらヤキモチを焼き、美穂乃を選んだ際は最初は驚かれたものの応援してくれたりと、発言に一貫性が無い為共感し難いです。
また、ルートによっては希里乃が同居に加入する事がないのも個人的には問題点。
妹ヤバ、神ヤバの真ヒロインであるメグリ、麗は、主人公と近しい距離感から良き相談相手となり、支えとなり、見守ってくれたという部分に強い魅力を感じる事ができました。
それは各作品において唯一無二の存在であり、だからこそ真ヒロインとしての魅力を感じられたのですが、今作の希里乃に至ってはシナリオが始まってからはルートにもよりますが基本的には同居生活に介入せず、他のヒロインにアピールする機会を奪われています。
能力的な面でのサポート、気軽に話せる相談役としては同じ能力使いの菜々華がおり、近しい距離で主人公を見守り、時に導き、支えてくれるといった生活面、精神面での支えは美穂乃に軍配が上がります。
先ほどキャラのアベレージが高いと述べたのにはそういう側面があり、キャラクターの魅力は全体的に向上しているのですが、代わりに真ヒロインの魅力がやや低下したという意味合いでした。
もちろん希里乃も不快なキャラという訳ではなく全然可愛らしいヒロインなのですが、他のヒロインに一線を画すような強みがあった訳ではなく、Hulotte特有の真ヒロインを任される能力者、妹属性持ちの中では残念ながら魅力はやや劣っているのかなと感じました。
兄妹としての関係の深さがアピールポイントというよりは、ヤキモチを態度に表したりと年下の妹ならではの真っ直ぐな幼稚さと言いますか、遠慮の無さを可愛さに変換できるかがプレイする側のポイントになるのかなと思いました。
とはいえ、十分に可愛さに溢れてはいるので今作からHulotte作品に手を出した方なら気にならないレベルだと思います。
各ルートの簡潔な感想とキャラ評価。
甘夏→他ヒロインのルートがロックされており必ず最初に攻略するヒロイン。
いちゃらぶをメインに後半には能力や主人公の封印された記憶にも触れ、シリアスもしっかり描かれ、解決はあっさりとしていましたが印象は結構良かったです。
最初にこのルートを強要させる事に期待半分不安半分。
他キャラルートでは同居人としてというよりは級友としての要素が強く感じられました。
結ばれた報告に対し毎度のように複雑ながらも祝福してくれる様を見せられるのはちょっと可哀想。
瀬里香→特に拘りがなければ二番目に攻略するであろうヒロイン→まさかの嫁となる約束をした相手でした。
シナリオはシリアスが強めですが、主人公や瀬里香の封印された記憶、能力の秘密、好意を寄せ続ける他ヒロインに対してのけじめ、絶望的な状況でも諦めずにもがき、苦しみ、最後まで愛し合う一連の流れは素晴らしかったです。
シナリオだけで見れば今作で一番好きなルートです、二番目にこの完成度で今後大丈夫か。
不満点としては、エピローグでとって付けたような挙式イベントだけはやめて欲しかったです。
ウェディングドレスと出産は美少女ゲームの中(というよりも人生の中)でも特に神聖なイベントですので、雑にねじ込むのはやめていただきたい。
他キャラのルートでは......ほんっとうに出番が少ない、残念ながら【空気】としか言いようがないです。
捨てキャラがいるのも考え物ですが、キャラの魅力とシナリオの良さが釣り合わないのもなんだかなあという印象。
美穂乃→基本的にひたすらいちゃらぶするだけの平坦なシナリオ。
ただ美穂乃のキャラクター性が完成されすぎていて、シリアスを挟む余地が無いと言われればそれはそうと納得する他ない程には作品を通して美穂乃の魅力は頭1つ抜けています。
一応突っ込むなら能力の事を明かすと同時にプロポーズする→美穂乃「考える時間が欲しい」→村「能力を知る者が居る、記憶を消せ。プロポーズの返事待ち?んなもんしらん」......この一連の流れはもうちょっと融通利かないもんですかねとは思いました。
美穂乃のキャラクター性については、毎朝挨拶を交わし、朝食や弁当を作っているのが彼女なので他ルートでも頻繁に登場し、その距離感の近さによる温かさや家庭的な一面といった同居生活だからこそ垣間見れる良妻賢母な側面だけでなく、どのルートでも一貫して主人公の事を支え、温かく見守っており、その気さくさや気配り上手な一面による主人公へのさり気無いサポートと、先輩兼姉としてのしっかり者でありながらも時折お茶目で可愛らしい一面で場を和ませたりと他のルートでも幅広い活躍をした他、自身のルートでもその純真さと甘々すぎる日々を描き、その魅力を遺憾なく発揮できていたと思います。
菜々華→ミステリアスな先輩の中にはむっつりな先輩がいて、さらにその奥には純情乙女が隠れていた。
シナリオは不穏な流れを予感させておきながら蓋を開けてみれば平穏と安寧の日々が続くキャラゲーらしいキャラゲールート。
これといった見せ場は無いものの、孤独だった菜々華が主人公と出会い、恋をし、心が満たされていくその心情描写が丁寧に描かれているのが読んでいて心に響きました。
表面上は不思議系のキャラなので会話がいちいち面白かったり交際が始まってからのギャップは非常に破壊力があり、キャラゲーとして見ると満足度は高かったです。
他キャラのルートでは、希里乃と同等の異能力者でありながらも、希里乃よりも身近な存在という事で、サポート役としての活躍場面は多かったように思います。
後はCVがバッチリハマっていたのと、個人的に黒髪赤眼のキャラデザがすっごい好みです。
希里乃→主人公と希里乃の能力、その背景に居る神を重点とした事により、瀬里香ルートとはまた別の角度から一連の物語を深く掘り下げたシナリオ。
話のスケール的には真エンドらしく最も盛大になっていますが、運命性で比較してしまうと幼い頃の約束がある瀬里香シナリオがやはり強いと思ってしまう他、希里乃のキャラとしての魅力については先述した通りですので、それなりに楽しめたシナリオではありましたが作品のトリとして強く心に響いた訳ではありませんでした。
最後に少し全体を通しての余談になりますが、思い返してみると美穂乃を約束の相手候補から早急に脱落させたのは構成として勿体なかったなと。
姉妹の誰が運命の相手なのかわからないドキドキ感は主人公やヒロインの恋愛模様を描くスパイスとして良い刺激になると思っていたので、三姉妹をわざわざ一人脱落させて二択にまで絞ってしまったのはプレイし終えた今となってはちょっともやっとしますね。
何なら記憶が封印されている設定であったならば菜々華や希里乃が相手でも良かった訳ですし、物語の導火線となる重要な部分ですのでもっと作品全体を通して引っ張っても良かったんじゃないかなと。
「大事なのは今の気持ちと直感である」、これは本編で言及されている言葉でありそれは確かにそうなのですが、それはそれとして今作であったりブランドが"運命"や"縁"といった神秘的な運命性を重視しているのは明白ですし、実際そういった力に深く頼っている瀬里香、希里乃ルートは世界観と親和性があるからかシリアス部分を上手く組み込めておりバランスの良いシナリオに仕上がっています。
シナリオの面白さとキャラの魅力はまた別問題であり必ずしも比例するものではありませんが、キャラに魅力がありシナリオも面白かったらそれはキャラゲーとして更に上の段階へと進めた事でしょう。
冒頭に述べた通りキャラゲーとしては大いに満足しているので残念というほど落胆した訳ではないですが、強いて言うならちょっと心残りだったかな、くらいの感想が適切でしょうか。
総評しますと、キャラやルートの差は感じざるを得ない出来ではあるものの、ストレスフリーで濃密ないちゃらぶやエッチシーンはしっかりと描けている為、キャラゲーとして必要なものはしっかり備わっており、Hulotteらしさが顕著に表れた良作キャラゲーであると言えると思います。
メーカーの他作品が楽しめた方に対しては胸を張って今作もオススメだと言えるでしょう。
好きなキャラは美穂乃、次点で菜々華、希里乃。