登場人物同士の距離感が良く描けている群像劇(の一部)。突き抜けてないことに突き抜けた作品なので完全に埋もれ、会社も潰れてしまったのですが、もっと評価されていいはず。点数はともかく一番好きな作品といったらこれ、誰かもっと誉めてあげてください。
シナリオ
登場人物の悩み抱えながら生活していく姿を丹念に描いていくのが本題で、驚きやカタルシスは徹底的に排除されています(一番近いと感じた「はるのあしおと」と比べても、主人公は大して成長しません、高校生が数ヶ月くらいでは簡単に成長はしないってことでしょう)。
エンディングもハッピーエンドでも壮絶なバッドエンドでもない、主人公はただ彼女と手をつなぐのみであって明るい未来が開けているわけではない。
なんともすっきりしないところが夏音-Ring-という舞台、それが大好きなのですが讃える言葉が見つかりません(笑)。
その反面インパクトは皆無、明るさや萌えは半減しているので前作(Overture)の購入者の多数の期待を裏切る結果になったのは想像に難くない、キャラの魅力も半減との声も当然有るだろうが、たぶん一見のイメージだけではない人格に魅力を感じてほしいのでしょう。
構成
「俺たちに翼はない」「ef - a fairy tale of the two.」の先を行き、章立ての群像劇を採用していると思われます。
つまり
第1章 Overture(+June Strange Song) 主人公 霧坂鈴菜 期間 4月~6月
攻略対象 なし
第2章 Ring 主人公 三雲 響 期間 7月~9月
攻略対象 星崎彩音 霧坂鈴菜
となり、章ごとに主人公を変えて攻略対象を絞りさらに時間を経過させることによってエロゲーにありがちな①攻略キャラを変えることによる他の登場人物の行動の不自然さ②主人公と攻略キャラが付き合うまでの期間の短さを回避し、登場人物同士が性格を不自然に崩すことなく微妙な距離感を保ちつつ、作品舞台を魅力的なものにすることに成功しています。
た・だ・し、この構成はOverture製作時にはたぶん予定されていたものではありません。(群像劇では登場人物中男性の数が明らかに足りてないですし、OvertureにはRingの世界観では以降登場出来なさそうな幽霊?がいます)
その結果、OvertureからRingの発売まで2年近くかかった挙句
第3章 Concert 主人公 月村 奏
攻略対象 風祭沙織 朝霞静流 (雨宮詩子?)
第4章 (少なくとも、霧坂なずな、を描くためには必要です)
となりそうな分割商法の汚名を得るのは当然の結果でしょう。
音楽
ボーカル曲5つ、収録曲40以上の豪華版(収録曲については前作から引き継ぐ分割商法の効果は否定できませんが)、夏と百合ヶ浜という舞台を十分に感じさせてくれます。
音声
自分が今までに購入した作品の中では間違いなく№1、声優さんが豪華なだけではなくその実力を生かしきっています。特に霧坂鈴菜のサンプルボイスを聞いて反応するファンの方は是非購入をお勧めします。
戯言
所々にあるパロディネタは反応できると嬉しい(今さら星の瞳ネタを使ってくれるとは)のですが、作品の雰囲気を損なっている気がしないわけではない。
サンプルボイスを聞いて即購入決定したこの作品(要するに声買い)、たぶん評判を調べた後では間違いなく見送っていたことでしょう。点数も高くしづらいのですが好きな作品といえばこれを挙げさせていただきます。