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Daylightさんのピュアソングガーデン!の長文感想

ユーザー
Daylight
ゲーム
ピュアソングガーデン!
ブランド
PULLTOP
得点
92
参照数
3102

一言コメント

良作だが、『ころげて』や『よぞらら!』クラスを期待すると期待外れ。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

過去PULLTOP作「この大空に翼をひろげて」、「見上げてごらん、夜空の星を」クラスを期待すると期待はずれである。理由は3つ。

☆テキスト分量が基本的に少ない
E-moteの導入に伴ってかテキスト量が少ない。ころげてやよぞららに30~40時間かかった私が体験版部分を飛ばしたとはいえ20時間以下でクリアできてしまった。

また前2作の物語の構造が
(邂逅)→(日常)→(波乱&失敗)→(少し時間が空く)→(再チャレンジのための準備&準備の中で愛を深めていく)→(告白)→(チャレンジ成功)
だったのに対し、PSGでは
(再チャレンジのための準備&準備の中で愛を深めていく)の部分がかなり短く、個別に入った瞬間にいきなりいちゃらぶモードに入る。そのままドタバタと告白し物語が進み、いろはルート以外ではいつの間にか問題が解決してしまう。

とにかくVRハザードが起こってから付き合っていくまでが短すぎてついていけない。

☆ダイバ(+アリアケ)から出ない/サブキャラクターが少なすぎる

前2作では風ヶ浦/ほしのなか というある程度架空性を持った市をいろいろ駆け回るので行先にいろいろ幅が出てくる。しかし、今作ではダイバという現実味のあるあまりにも狭い範囲である。
いろははダイバ観光をしようとしているが、非首都圏住民でも台場観光は1日あれば済むだろう。1週間、実際は延長されて30日以上あるのにダイバ(+アリアケ)しか観光しようとしないいろはを見ていると、2077年には東京は消滅でもしているのだろうかと思わせる。

またE-mote導入にともなってかサブキャラクターが部長と調(+お父さん)しかいない。サブキャラクターはメインキャラクターを支え、物語の幅を広げてくれる。ここまで少ないのは残念だ。


☆テーマが不明瞭
ころげてでは自転車に負けた主人公が小鳥と出会ってグライダーを飛ばし、モーニンググローリーを見ることを目標とする。
よぞららでは星を見ることを止めてしまった主人公がもう一度星を見たいと願う。

今回の主人公は音楽で夢破れている。しかし全体としてのテーマはVRや人工知能と人間社会の融和であり、音楽はそれを実現するツールになってしまっている。確かに玖音や明日歌ルートでは主人公の音楽がある意味テーマとなっているが...

またグライダーや夜空の星に比べて音楽制作が想像しずらかったのもある。

しかしE-moteやエロシーンの濃密さ、背景の作りこみは評価されるものであり、物語自体も短いと言えどきちんと伏線も回収している。玖音ルートで音楽の楽しみを、明日歌ルートで主人公の音楽を、律ルートやすずルートでVRや人工知能の心を、グランドいろはルートでそれをすべて纏めていった手法には圧倒された。いろはルートは手に汗握る展開であったし、もう少しシナリオの作りこみをしていれば神ゲーといわれたかもしれない。