義理の妹である歩夢をはじめ、個性豊かな女の子たちとの出会いと成長を描いた、ハートフルなストーリーが楽しめる初心者向けギャルゲー
【ゲーム概要】
「いますぐお兄ちゃんに妹だっていいたい!」は、2012年に発売された全年齢対象の学園恋愛アドベンチャーゲームだ。主人公の三谷陸斗は、父の再婚により、新しい家族と暮らすことになる。義理の妹である歩夢をはじめ、個性豊かな女の子たちとの出会いと成長を描いた、ハートフルなストーリーが楽しめる。
【シナリオ】
本作のシナリオは、共通ルートと4人のヒロインそれぞれのルートに分岐する構成となっている。共通ルートでは、陸斗と新しいクラスメイトたちとの交流が描かれ、学園祭「桜花祭」での優勝を目指す中で、絆が深まっていく。
各ヒロインルートでは、以下のような物語が展開される。
三谷歩夢ルート:複雑な家族関係の中で、歩夢と陸斗の絆が徐々に強くなっていくストーリー。再婚によって生まれた三谷家の新しい形を模索する過程は、リアリティがあり、感情移入しやすい。歩夢の素直で前向きな性格に、プレイヤーも勇気づけられるだろう。
奈々瀬奉莉ルート:幼馴染の奉莉と陸斗の関係性の変化を繊細に描いた、友情から恋愛へのシナリオ。奉莉のサバサバとした性格と、内に秘めた女性らしい一面のギャップが魅力的だ。ただし、女性器の発育に関する繊細な話題を取り上げているため、賛否両論を呼ぶかもしれない。
茂森真央ルート:剣の道と恋心の間で揺れ動く真央の葛藤と成長を描いた、爽やかなストーリー。男装の麗人という設定が新鮮で、ギャルゲーの中でも珍しい魅力を放っている。真央の一途な想いと、陸斗への素直になれない姿に、胸が締め付けられる。
拝田希実花ルート:内気な少女が、陸斗との出会いをきっかけに自分を変えていく、感動的な物語。希実花の心の変化が丁寧に描かれており、彼女の成長を間近で見守っているような感覚になれる。ストーリーの展開も、自然且つ王道を行く好例で、ギャルゲー読み物としての満足度が高い。
どのルートも、キャラクターの心情を丁寧に描写しており、プレイヤーを物語に引き込む力がある。
特に、希実花ルートは全体的に高いクオリティを維持しており、個人的にはイチオシだ。
ただし、共通ルート後の各ヒロインルートでは、一部シーンの使い回しが目立つのが玉に瑕だ。
今回は、ルート毎に順位はつけないことにした。どれも良かったので。
それに、どのヒロインも、主人公と恋仲になれなかったことを考えると、胸が苦しくなる。
グランドルートがないのが悔やまれる。
【グラフィック・サウンド】
グラフィックは、2012年の作品とは思えないほど高品質だ。キャラクターデザインも美麗で、感情表現も豊かに描かれている。背景の作り込みも素晴らしく、学園や街の風景が鮮やかに表現されている。
サウンド面では、BGMが場面に合わせて効果的に使用されており、ゲームの雰囲気を盛り上げている。声優陣の演技も良く、キャラクターの感情を巧みに表現していた。
特に、主人公「陸斗」の声があることで、グンと感情移入や物語へ引き込まれるので、これはとても効果的に発揮されている。
さすがは声優って感じです。ほとんどが豪華声優陣ではないでしょうか?エロゲではあるまじき光景。
しかしながらなぜ、「陸斗」の声はフルボイスではないのだろうか?
【システム】
ゲームのUIやシステムは、シンプルで使いやすい設計だ。テキストの読み進めもスムーズで、プレイしていてストレスを感じることはない。選択肢によってストーリーが分岐するのは基本的なシステムだが、本作では選択肢の意義がやや薄く感じられた。
【総評】
「いますぐお兄ちゃんに妹だっていいたい!」は、妹キャラクターだけでなく、全てのヒロインが魅力的な学園恋愛アドベンチャーだ。心温まるストーリーとキャラクターたちの成長を、丁寧に描いた良質なシナリオが最大の魅力と言える。
ビジュアルやサウンドのクオリティも高く、没入感のあるゲーム体験ができる。一方で、プレイ時間の短さやエロ要素の薄さは、人によっては不満点になり得るだろう。
また、本作は良質な作品ではあるものの、長年記憶に残るようなインパクトは少し欠けている印象だ。ストーリーやキャラクターに、他の作品と比べて際立った独自性が感じられないのが惜しまれる。
ギャルゲーのリファレンス的な作品となるためには、もう一段階の独創性が必要だろう。とはいえ、全体としては非常に完成度の高い作品だ。ギャルゲー初心者から上級者まで、幅広いプレイヤーに自信を持ってオススメできる一本である。
定価の8,000円は少々高いように感じるが、3,000円程度なら納得のいく価格設定だろう。100点満点で80点をつけるとすれば、それは文句なしに楽しめる良作ではあるが、永遠の名作とは呼べないという意味だ。