青臭い、青臭すぎる...のに、こんなにも心を掻きむしられるのはなんでだろ...
本当は高得点ではあっても、100点までつけるつもりはなかったんですけど、最後の最後、あのED曲の演出にあと一押しさせられました。あれは反則ですよね。最初に泣き出してしまったのが普段は人一倍リーダーシップを持ってみんなを引っ張っていた会長だったと言うのがまたツボでした。
さすが「パルフェ」のスタッフが送り出す、と謳っただけあって総合力は相変わらず高水準を保っています。
まずシナリオ。周りで言われている通りシナリオの破壊力としては「パルフェ」より控えめになっていましたが、それでも平均的な水準よりは高いと思います。多分シナリオに期待はずれした皆さんは、里伽子シナリオのような超攻撃的伏線シナリオをヒロインのいずれかに期待していたから、肩透かしを食らった感を抱いてしまったのかもしれません。が、私は元々丸戸氏にそんな期待をしていなかったのでそれ程評価が下がる事はありません。
と、いうか丸戸作品の魅力の本質はそこではないと私は思っていいて、彼のシナリオの真骨頂はテキスト力、もっと言えばキャラ達の心情を吐露させる表現、台詞が絶妙なところにあるのだと思っています。それがプレイヤーの感情移入を自然に引き起こし、それほど大した山谷もないシナリオなのにちょっとした事で感動している、あるいは泣いてしまっていると言う魔法がかけられるのではないでしょうか。
振り返ってみると、今回この「こんにゃく」のシナリオは全体的に随所に分かりやすい伏線がちりばめられ、誰もが容易に先を読めるシナリオではありました。私もプロローグを見終えて、「ああ、最終的にはつぐみ寮から旅立つ日にみんなワンワン泣いて別れを惜しんでるんだろうな」と予想出来ました。多分誰でも予想出来ると思います。それでも「約束の日」で涙してしまうのはそこに至るまでの過程でプレイヤー(私)をどっぷりと南栄生島の世界に浸らしているテキスト力の凄さだと思うし、それが丸戸氏の本領だと思います。
それにしても丸戸氏は「絆」というテーマを非常に大切にしている人だな、と改めて思いました。「パルフェ」の仁然り、また今回の航然り、主人公は家族、恋人、あるいは友人、他人まで絆を凄く大切にしている人たちですよね。今回の「こんにゃく」は基本的には田舎の学生寮を舞台とした高校時代の「青春」が主題だと思いますが、根底にはこの「絆」と言うものが脈々と広がっていますね。仁や航と言った主人公が多くの人に好感を持たれているのはこの「絆」を大事にすると言う行為が潜在的に受けいられているからではないでしょうか。これがプレイヤーの誰しもが少なからずもっている良心にちくちくと注しこんでいくからこそ、このゲームをして癒されていくんでしょうね。
ヒロイン達に関してですが、確かにこれも「パルフェ」の面々に比べると少し押しが弱いかもしれませんが、それでもみんなそれぞれに魅力的だったと思います。ちなみに私の好きな順は
1.海己
2.凛奈
3.奈緒子
4.宮穂
5.沙衣里
6.静
7.茜
と、いったところです。海己は正直あのしゃべり口調はイライラしてしまうんですが、それでもあの健気で一途なところは私の琴線に触れてしまいます。凛奈はあの照れ屋さんなところが絶妙にツボでした。奈緒子が世間的には人気があるのが意外でしたが、あの女っぷりに好感が持てるんでしょうね。私はただ単純にナイスバディな所が好感だったんですけど(笑)
BGM,曲に関してですが、私が今回「こんにゃく」が「パルフェ」に確実に勝っていると思っていることが二点ありまして、そのうちの一つがこれです。基本的にアコースティックな曲調が大好きなので、今回のBGMは結構お気に入りが多いです。お気に入りは「風のアルペジオ」、「春を待つ少女のように」、「あの時、もし君が振り返ったなら」、「約束のブーケ」、「もう一つの青空」、「ROCKIN' MOKKIN' CHAIR」ですね。書いてみるとそんなアコースティック入ってないですね(^ ^; あと、「パルフェ」では一番好きだった「暖かい空気に包まれて」も入っていたのは嬉しかったです。しかもそれぞれの曲がシーンにちゃんとあった選曲されてて、素晴らしい演出だと思いました。特に冒頭でも書いたようにED曲の演出はやられました。サントラCDでちゃんと聞いてみても、詩が良くてそれを反芻してるだけで切ない気持ちになってきます。
もう一つはシステム面。「パルフェ」でもかなり良かったんですが、さらにそれを上回って便利になっていると言う点に感心します。特に「パルフェ」の時に希望していたメッセージウインドウの透過機能と個別イベントシーン回想モードがついた事は個人的には◎でした。現時点で最強のシステムと言っても過言ではないでしょう。
最後に原画、CG。ねこにゃんさんの絵自体はそれ程レベルが上がっているようには感じられませんでした。それでも元々好きな画風だったので問題はありませんでしたが、相変わらず一枚絵で同じキャラで顔かたちが微妙に崩れるという欠点は少し残っていますね。そこは今後頑張って欲しい所です。塗りも一部のキャラでベタ塗りな感じがするのも少しいただけません。でも、全体から見れば些細な問題ですね。
まあ、いろいろ書きましたが結局の所、フルコンプし終えた後に「ああ。もう終わっちゃったのか」と思わせ、切なく、心が掻きむしらせられた時点で私の中では優良作品だったと言う事です。しかし、それはひとえに丸戸氏のおかげと言う事ではありません。いいシナリオ、魅力的なキャラ、ふいんきのいいBGM、可愛いCG、そして扱いやすいシステム周りと、さまざまなファクターが突出してなくても高い次元で保たれていた事がこのゲームを名作たらしめているのでしょう。
余談:丸戸氏の真骨頂の一つに何故か私の世代にツボにハマるパロディがあるのですが、そのうちの一つに「12人の怒れる以下略」がありましたね。これはもう散々他でも書かれているようにかなり昔のアメリカ映画「12人の怒れる男」のパロディなんですが、これはさすがにパクリ過ぎじゃね?と思うのは私だけでしょうか。ちなみにこの映画の邦画版パロディに三谷幸喜脚本の「12人の優しい日本人」と言うのがあります。私、これは見た事があって、結構大好きな映画です。それを知っていたので本作のパロディも楽しめたんですけど、丸戸さんはこちらの邦画の方を参考になさったんでしょうかね?凄く雰囲気が良く似ていると思いました。丸戸さんのシナリオが好きな方はこの邦画も楽しめると思うので、機会があれば見て欲しいと思います。
余談その2:本作品でつぐみ寮が実際壊されたシーンと言うのは唯一茜ルートで出てきますが、私これを見て凄く切なくなりました。それはゲームに感情移入していた理由以外にもう一つありまして、実際私の出身高校の校舎が私の卒業後間も無く老朽化により取り壊されて、全く近代的な校舎に建て替えられたと言う事がありまして、しばらくしてから母校にふと立ち寄った時に実際に3年間過ごした学び舎が跡形もなく無いのを見て、ものすごく寂しい気持ちになったのを思い出させられたというのもあります。つぐみ寮の様な木造では無かったですけど、床は板張りで古臭い雰囲気がつぐみ寮と重なり、切なさが倍増してしまったものです。あれ、実際自分の身に起きるとほんと、寂しいものなんですよ...「もうここは俺の母校じゃねえっ」って思いましたもん。
全く本ゲームとは関係ないですけどね。駄文失礼しました。