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CGTさんのはっぴぃプリンセスの長文感想

ユーザー
CGT
ゲーム
はっぴぃプリンセス
ブランド
Terios
得点
70
参照数
979

一言コメント

想像していたよりも面白かったです。でもまあ相性がよかったというべきかもしれません。客観的にみれば凡作くらいなのでしょうね。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

・システム

 特筆することはありません。

・サウンド

 好みにもよりますが特にいい曲というのはなかったと思います。
 ただそうだとしてもサウンドモードがないというのは感心しませんね。

・グラフィック

 立ち絵のバリエーションが少ないというか使っている場所が偏っていますね。
 ほとんど使わないものもある一方で、姫乃ルートのラストの方で夕菜は別にして他のヒロインがわざわざ制服を着ているのは首を傾げざるをえませんでした。

・キャラ

 程度の差こそあるものの総じて馬鹿みたいなお人よし&臆病者ですね。
 主人公は第3話では身勝手で不快でした(他の話でも多少はそういう部分はありますが)。また基本的には鈍感かつ問題が起こった時にうじうじするわけですが、それはまあエロゲー的には仕方ないかな。鈍感でなければ幼馴染2人との日常がありえませんし、うじうじしないと問題がさっさと解決してしまいますから。素敵とは言わないまでも他にどうしようもないダメ男を主人公にしているゲームも多いですしまあ並くらいには評価してもいいかな。

・エロ

 各キャラ2回ずつかな。純愛系ですしこんなものかと。

・シナリオ

 まあ設定はツッコミどころ満載なトンデモ設定であるわけですがそこらへんはスルーするとして。
 ストーリーだけみるとお姫様+幼馴染での主人公争奪戦を予想しそうですがそういうのはほとんどありません。作中でも語られていますがライバル同士って感じがまったくしませんしね。良し悪しは別にしてそういうのを期待している人は肩透かしをくらうでしょう。
 流れとしては共通ルートで全てのヒロイン達と徐々に仲良くなって、中盤の最後で選んだヒロインからアクションがあって個別ルートに行く感じかな。ボリューム的には個別もそれなりに長さがあるので短いとは思いませんでした。
 ただ幼馴染は最初から主人公を想っているのでいいのですが、お姫様が個別までに主人公にある程度の好感を抱くイベントが少なかったように思えます。またヒロイン同士の理解を深めるシーンも不足気味ですね。共通部分をもう1話増やしてそこらへんの補完も欲しかったところです。

 ありすルート以外ではヒロインと主人公の仲はすんなりとはいかないわけですが他のヒロインの後押しで解決する流れですね。ありすルートでも問題解決に他のヒロインの手を借りるわけですし。
 中でも一番お節介なのは姫乃、一番貧乏籤なのはリーゼでしょうか。ヒロインが消極的なことや他ヒロインの後押しするのは、皆お人よしというだけではなく臆病という理由もあるわけですけど。
 共通、個別共に目新しさはありませんが、多少粗はあるもののそれなりに丁寧に作ってあるので、ノリが嫌いでなければ普通に楽しめるでしょう。

 ヒロインがお人よしで他のヒロインを助けるということが好きな方には向いていると思います。ヒロイン同士の助け合いなどが好きな方には良作、そうでなければ凡作というところでしょうか。
 私はそういうのが好きですし、また幼馴染の両親の想いややりとりなどを考えることで楽しめました。
 ENDはどれもハッピーエンドではあるのですが、お約束としてヒロイン達が全員主人公にある程度の好感を抱いていますから、結果的に選んだヒロイン以外を振るわけです。仕方のないことではあるわけですけど、皆お人よしばかりですからちょっと胸の中にしこりが残りってしまいますね。それに各ヒロインの問題解決が他のヒロインのルートでは放置されているので雫葉あたりは他ルートだと可哀想な気もしますし。おかげで読後感はイマイチです。
 あとはあまりどろどろしたのを見たいわけではありませんが、ヒロイン(特に夕菜)が他のヒロインを主人公が好きになった際にあっさり諦めすぎというか、葛藤(失意)の描写がほとんどないのはいくらなんでも物足りなかったです。

 以下ネタバレ個別感想















































夕菜:キャラが好みでないのもありますが、姫乃をクリアした後ですと夕菜はクリアしにくいですね。姫乃の高台での告白とか本気なのがわかるだけに心苦しいです。あと唯一このルートでのみ姫乃がプランタンに戻って生きていくことになるわけですが、それはやはり2人の邪魔をしないようにという意図でしょうから、負い目を感じてしまいますしね。
姫乃:ENDもトゥルー扱いの気がしますし一応メインヒロインなのかな。ただ6話は夕菜とほぼ共通なわけですが、話の流れとしては夕菜ルートの方が自然ですね。6話の最後のあたりの心の中での謝罪がうまく繋がっていないですから。それはそれとして上記の通り一番お節介で夕菜はもとよりリーゼや雫葉のルートでも率先して手助けしていますし本当に損な性格ですね。ただ強いて言えば姫乃ルートでは衛兵やマリウスがかわいそうではありますが。
リーゼ:個人的には一番好きなヒロインですね。第7話の出来は結構いい気がしますがそのあとが尻すぼみの気がします。人選的にやむをえない部分もありますが雫葉やありすルートではなんとも損な役回りですね。
雫葉:個別はヒロイン中最高のバカップル振りを発揮するわけですけど。策士であり最初から主人公に惹かれているくせに行動が慎重すぎましたね。気遣いといえばそれまでではありますが……
ありす:姫の中では異色の展開ですけど正直無理を感じましたね。確かに主人公は芝居はうまくないと思いますけど、それをいうならあのやり方でも不自然なところは見せざるを得ません。作中でも危うく破綻しかけましたし。あとは言っていることは正しいけど破天荒、という設定を表現したいならば発言に正当性を持たせるべきです。言っていることは間違っていないと作中のキャラは認識していますが実際には間違いやすり替えばかりですしね。それがなければ評価も高くなるでしょうに。
のの:好みでないこともありますが、可もなく不可もなくかな。

 最後に個人的に評価している部分として「ヒロイン達が責任を放棄しない(まあ主人公へのアプローチが個別入らないと消極的過ぎとか、理由があるにせよ他ヒロインを助けてしまうというのはありますが)」ということがあります。
 他ゲームでもよく身分や境遇の違いがあるわけですが、その場合往々にして「責任よりも主人公との恋愛を優先する」ということがあります。しかし、このゲームだと皆「責任と恋愛を両立させるべく頑張る」ことに好感が持てます。もちろん設定上身分の差というものが障害になってないということはあるのですが、リーゼは忘れられるリスクを負ってなお一度別れて国に帰って国を変えますし、ありすはテロリストを誘き出すために一度リーゼに主人公を託すわけで。リーゼはまだしもありすはそんなことせずとも主人公と一緒になって幸せになることは出来るのにあえてやっていますしね。
 個人的にそういうあり方は好きですね。

 欲を言えばもっとヒロイン同士の掛け合いやあの祭りみたいな日常を見たかった気もします。そういう意味では姫乃エピローグは好きではあるのですが、あれはあれでもう主人公が姫乃以外を選ぶわけはないですから。できれば各ヒロインの問題を解決したうえであの日常が続くことになり、END時点で誰も選んでないトゥルールートが欲しかったかな。いつかは誰かを選ぶにしてもそれは各プレイヤーが考えるという感じの。それが一番角が立たない気がします。

 このゲームの設定で秀逸だと思ったのは「幼馴染の似てない双子の片割れが実は養子である」というものですね。各要素自体は別にたいしたものではありませんが、組み合わさることでいいバランスの設定になっています。主人公が幼馴染の関係を崩したくなくて好意に気づかないようにしているとか、自分の心を殺しても片割れを応援するような性格になっているとか、実の両親が判明して葛藤するetc...色々なことに説得力を持たせていますから。活かしきれているかというとまた別ですけど、それでもここまでいいバランスの設定はそれなりにはゲームをやっているつもりですけどほとんど見ませんね。

 逆に家族を題材の1つにしている割に父親の扱いがあまりにぞんざい過ぎる気はしたかな。別に不仲にしろとか、もっと関わりを持たせろとは言わないけど、いてもいなくてもどうでもいい扱いってのは哀れです。

 あと心情の問題として夕菜と姫乃ルートでのみ姫乃が帰ろうとするわけですが、その決意をしたのが6話の段階というのは不自然かな。あの時点では主人公が明確に誰かに傾いているわけじゃないですしね。もし他の姫を選べば記憶は残るし、夕菜と離れる意味がない。少なくとも夕菜と主人公が近づく&近づきそうという確証を6話で用意すべきだったかと。それがないので2人のシナリオは評価が下がりました。