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CGTさんの超電激ストライカーの長文感想

ユーザー
CGT
ゲーム
超電激ストライカー
ブランド
OVERDRIVE
得点
60
参照数
928

一言コメント

『これは幸せを知る物語』――鋼の章が終わるまでコンフィグのクリアフラグ設定に気づかず強制スキップで既成ルートをクリアしていた馬鹿者です。他にはいないかもしれませんが前作プレイ済の方はご注意ください。なお第6話が新規書き下ろしで分岐が発生しますので参考までに。ネタバレ感想は長文にて。

長文感想

 演出等の差はあれど個人的には大差ない印象です。
 フェニックスの両手に炎を持っている立ち絵なんて馬鹿っぽいですし総合すると取り立ててよくなった気はしません。

 さて既成ルートは前作と同じなので新規ルートに絞ってのシナリオ感想になりますが。

 最終的に全てのルートの中で一番好きになったのは愛の章。もちろん突っ込みどころは多々ありますし、大団円といえるかというと素直に頷けないのですが、それでも「めでたしめでたし」という言葉が一番似合うルートであると思います。個人的には愛の章というより幸の章かな。他ルートでも幸せそうなシーンはあるわけですけどこのルートほど「幸せ」を感じさせるものはなく、また変わっていく過程をしっかりと描写しているのも好印象につながりました。
 神社と神頼みはわかりやすい伏線ですが、すべての記憶を代償とするのは予想外だったかな。理由としては今までの例では幼かったヤマト以外は記憶の一部を代償としていたからです。ヒルコの思い出で一番大切なものが何になるかは考えるまでもありません。それを失えばヒルコは昔の状態に戻るわけですが、料理教室などの記憶は残るでしょうし周囲の先遣隊は今までのことを覚えているわけで。そのあたりは結構いいネタになると思うのですが、もしそういうことを描写するなら長くなってしまうからでしょうかね。まあこの2人が結ばれるにはお互い立場そのものをリセットする必要があったといえばそれまでなのかもしれませんが。
 お互いに正体を隠して生活する敵対者同士である以上、どこかで相手の正体を知ることになります。それがまずどちらか一方が知ることになるのか、あるいは同時に気づく事になるのかはストーリー次第ですが、今回は主人公側が先に気付くパターン。それは順当ではあるのですが、先遣隊の面々が好きな私としては逆パターンも見てみたかったかな。それもできればヒルコではなく他の者(ロッシュかフェニックスあたりが無難かな)がヤマトの正体を知ってしまう……そうしたらどうなるか。ヤマトが自分達の正体を知っていればとっくに攻撃してきたはずであることを考えればヤマト側は気付いていない可能性が高い。けれどストライカー零は排除しなくてはならない以上ヒルコに伝えることはできないでしょう。だけど2人の激突は何が何でも阻止しなければならない。ではヒルコ以外に伝えてストライカー零を倒す?ヒルコの幸せを壊すと知った上で行う以上それは重荷となる。あそこまで幸せそうな姿を見れば恨まれ憎まれても当然。そんな重荷を仲間に背負わせようとするでしょうか。私は誰にも告げずに単身ストライカーを討とうとするのではないかと思います。そのあとの展開は語るまでもないかな。まあそういうのも悪くないなと思ったというだけですね。
 あとは個人的に評価している点として「否定しなかった(非難しなかった)」ことが挙げられます。とかく自分に都合の悪いことを否定する主人公が多い中で、愛の章のヤマトはヒルコの在り様を最後まで否定しませんでした。強いて言えばストライカーとしての自分を最終的に否定したくらいでしょうか(あとは先遣隊がヒルコに除隊を薦めた事も一応は該当するか)。色々な考え方があるわけですが、このゲームに限らず自分にとって都合が悪いからといって「間違っている」と否定するシナリオの数々に辟易していただけにあくまで相手を尊重して付き合うことに好感を抱きましたね。

 鋼・光の章に関しては正直言って天・空の章の焼き直しという印象です。明確な悪役としてのカーチスの配置、力尽きる一郎Ver天、バルボラ帝国の者(先遣隊やクリエ)との共闘、少年ヤマトの意志が強敵(カーチスやオルレアン)を撃破、最後は漫画の中に帰るetc……内容自体に文句はありませんが細かい差はあれど大筋が同じなのでもっと差を出せなかったのかと感じました。ENDは少年ヤマトが残るだけ空の章よりハッピーエンドだとはいえるでしょうが……
 それにオルレアンはまともな思考能力のない暴走機械で皇帝はあの気の抜けた性格と熱血のトリの相手としてはまだしも空の章の巨大カーチスのほうが相応しかったと思えますしね。
 新OPは別にして唯一追加されたアニメである最後のアレにしたところで部分部分ではいいのですが滅多刺しにされる意味があったのか。戦い方にしても自らを省みない無茶ぶりであるわけですが、いくら漫画の中に帰るとしても鋼の章のあとにそれはどうなんだと感じますから。
 鋼の章といえばクリエ&リンがセットで個別部分がほとんどないとは思いませんでした。てっきり鋼と章の名前がわかった時点でこの章はクリエで最後の光の章がリンかと予想したのですが。そのあたりはおいておくとしても個別の薄さが他ヒロインに比べて可哀想だったかな。

 最終的なシナリオ評価は愛>零>天>空>鋼>光かな。前述のとおり鋼・光は後発である分だけ多少辛くなっていますけど。もっとも本筋から遠い愛の章がもっともソツがないというのは理解できないわけではないけど少々残念ではあるかな。

 以下キャラ別雑感

クリエ:必要性があったかといわれると別に追加されなくても問題なかったと思います。少し毛色を変えるために登場した感じですね。堅物ヒロインは好きな傾向があるのですが、こいつの場合は堅物ではなく都合のいいものを掲げて勝手をする下種でした。まだしも下種なら下種でカーチスやシュナイダーの方が筋が通って正直な分マシですね。先遣隊も天の章(一部零の章でも)では裏切るわけで、任務を放棄したり裏切ったりするのはいいとしてもそのお前が忠誠を語るなという感じでした。鋼以降の章の評価を下げた一因ですね。

さやか:最終ルートにあたる光の章での不遇っぷりったらないですね。サブヒロインといえばリンやクリエも該当するでしょうに扱いの差が大きい気がします。まあその2人は鋼の章を2人で分け合っていることを思えば天の章で単独ヒロインして既に報われているといえばそれまでではあるのですが。

ミラー:重要な役どころなのに不遇ですね。零の章では大きな役割があるものの暴走状態(基本ヤマト?)が大半ですし、天の章では正気であるもののそれほど活躍はしない。空の章では序盤にヤマトに体を任せて消えるし、愛・鋼の章に至ってはまったく登場せず。光の章では登場するもののちょい役ですので。

ヒルコ:根は悪くないのですが前作ではルートがなく、いい見せ場がろくになかったわけで正直言ってルートが追加される今作でもあまり期待していませんでしたが……第8話のラストのこぼれるような笑みにしてやられました。この作品中でもっとも好きなヒロインになったかな。

ジャック:ルート追加されないのは釈然としません。特に最後のアニメを見るとなおさらです。

マリー:前作において本筋になっている天の章で早々に退場するため本作での活躍を期待したのですが……愛の章では年配の気遣いは見られるものの深くは語られませんし、鋼の章ではリン以外で唯一生き残った先遣隊なのに登場することはなく。光の章でようやく登場するものの大していいシーンはなかったのが残念です。

ダニエル:光の章で他の面々と一緒に復活しますが、他の面々と違って消滅現象が起こる前にミラーに殺されたわけで。そのあたり差がなかったのが釈然としませんでしたね。

はるな:鋼の章で焼餅シーンや烈として活躍するなど超になって比較的恵まれたヒロインですね。

春奈:どこかで出てくるかとは思っていましたが光の章でああいう登場の仕方をするとは思いませんでした。それ自体はいいのですが、最終的に記憶が戻った=契約破棄されたならストライカーとしての力を失いそうなものなのですが……

 新しいルートは愛の章を除いて個人的には残念というイメージが強いですが、それでも質そのものが極端に悪いわけではありませんし、完成度を落としているわけでもない。最初からこちらで出していれば……と思わなくはないのですが、一応は追加分のDL販売もありますし前作に10点加点してこの点数とさせてもらいます。