ライターの力量を感じるヒロイン主軸のヒューマンドラマ。キャラデザはノイズ
摩耶のかわいさとツクモの幻想的な雰囲気に惹かれてパケ買いした人にはもちろん不評だったと思う。ヒロイン達にはどこかしら欠点があって、とても全肯定はできないような言動をすることもある。特に共通パートの前半部分はかわいい成分も幻想成分もほとんど感じ取れない。だが、それを我慢してでもクリアした価値はあったと感じた。
登場人物はだいたいが(年齢的にも人格的にも)子どもで、直接の親に頼れないながらも何とか暮らしている。そこにもどかしさを感じた人もいるだろうが、そんな地に足がついた雰囲気がこの作品の特長でもある。お互いがお互いに迷惑を掛け合いながら生きているのは当然で、別に誰が悪いというわけでもない。そこを変にごまかして優しい世界っぽく仕立てていないのはむしろ好感が持てた。それぞれキャラも魅力的で、欠点や失敗はあるがどれも納得のいく理由があり違和感は感じなかった。どの√でもキャラ崩壊や矛盾を生じさせないのも筆力を感じさせる。そのせいか誰か一人のキャラクターに感情移入してしまって他のキャラが悪者にしか見えなくなった方もいるようだが、上にも書いたようにお互いの事情が絡み合っていて誰が悪いとも言えない、そこはすべての√で言えることでもある。主人公が没個性的と見せかけて結構自己主張の強いキャラクターであるので、プレイヤーのアバターのように解釈するのはストレスの素かもしれない。
顔無し鈍感主人公=プレイヤーがキャラクターからかわいい部分や美点をぶつけまくられる萌えゲーではなく、主人公という心配性な青年が色々な事情を持った少女と恋に落ちる恋愛小説。一人称よりは三人称、萌え絵よりはヘタウマな絵が似合うお話。萌え要素はツクモ√のためだけにある。
……雪菜の母はちょっとノーカンにしたい部分あるけど。田舎の因習に縛られた人生だったからって娘に嫉妬したり八つ当たりしたり……流石に醜態が過ぎるというか。いや複雑な感情があるのはわかるし、それを変にごまかさず描写するのがスタンスなんだろうけど。しまいにゃ祠に放火とか、肉虫じゃないんだからさぁ……。