道中に幾ばくかの不安があったものの、最終的にはプレイしてよかったと思える逸作でした。この作品でエロゲー引退するつもりでしたが、続編があるとのことなのでまだ待つことにします。
【シナリオ感想】
・~Ⅱ章まで
王道学園ものっぽくて、凄く良かった。ここは体験版部分とかぶるので詳しくは割愛しますが、最終章にまで関連してくるとは思いませんでしたね。
・Ⅲ章「Olympia」
この√だけHシーンが4枠。内容もそれに違わず序盤は普通の萌えゲーのような調で進んでいきます。
Ⅱ章からのテンポの落差と、発売後最初にやった√がこれ、ということもあり、早く先が読みたいと焦る自分にはちょっと読むのがしんどかったです。
ただし後半からは急ピッチで進みます。さまざまな事実が明らかになっていきますが、まだ何かを隠した状態でエンディングを迎え、消化不良感が残ります。
・Ⅲ章「PicaPica」
圭と真琴の関係、というかなり重要な要素を序盤でさらーっとバラしてしまったのがあまり好印象ではありません。
それ以外は正直言ってあまり印象にない√ですね。
・Ⅲ章「ZYPRESSEN」
この√は共通部分の段階で異色を放ちます。この辺りからⅢ章も後半、急に個人的には面白くなってきました。
優美が過去を語るシーンは、演出も凝っていて、とても良かったです。
また、語り部の優美にもボイスがついており、耳に入りやすいです。
ただ、プレイ当時は過去の伝奇を夢で見る異色さという雰囲気にゴリ押されてしまいましたが、
後から考えると千年桜が本当に咲いてしまうというのは少々違和感があります。
神の才能を持った稟の才能を持ってしてようやく咲かしむることが可能だったはずの千年桜なのに、
優美という一個人がどれだけ強い想いを持ってしたとしてもその力を行使することが可能なのでしょうか?
もちろんその当時は稟の真実は知らないので、
今後も千年桜が使われるのでは?とも期待半分不安半分で身構えていましたし、
稟の真実を知った後は逆に優美が稟に負けないくらいの才能を持っていて、以降のシナリオに噛んで来るのでは?
などとも期待しました(主にOP映像のせい)
が、(時系列的に)その後に千年桜が使われることはありませんでした。
とは言うものの、直哉自体が奇跡に否定的でもあり、作中でも櫻は咲いたもののその力を使うことはなく、
綺麗にまとまっているものだとは思います。
そして、ラストの優美と丘沢が時を経て再び邂逅するシーンは心に残る名シーンですね。
BGMがまたいいんですよ…ここ。
・Ⅲ章「Marchen」
「ZYPRESSEN」からの派生√で、ニーズ的に作られたのですかね?
まあ百合はウマいのでゴチです。
ちなみに唯一OP映像に存在しない√です。
自分は学がないせいか、よく意味が分からなかったのですが、
ラストのシーンを読み解くことが出来ればあるいは。
・Ⅲ章「A Nice Derangement of Epitaphs」
過去の核心、稟√だけでは得られなかった事実がこの√で得られます。
桜7部作の差分CGがなかったのは個人的に残念でならないです。
ですが、再び明石が登場したり、雫のかわいい真の姿?が見れて満足です。
また、ファンタジー要素が強い√でもあります。
・Ⅳ章「What is mind? No matter. What is matter? Never mind.」
ここでまさかの、しまりのさん登場!
出るとは思っていましたよ!待ってました、まさにヒーローって感じです。
しかし、由岐とは全く違ったキャラなので、最初は気付きませんでしたw
親父さんの過去の奮闘が描かれる√です。
水菜さん、最高です!
ああいう救ってあげたくなるようなヒロインはやはりよいです。
一番感情が入ったと思います。
「オリンピア」の絵を描くシーンは、思わず息をのみました。
水菜さんのオリンピアCGは作中で最高のお気に入りです。
有名な絵の構図を真似ているので当然と言えば当然なのですが、やはり凄いです。
ぐっと心に来るものがあります。
ただし、最近のトレンドなのか、大きすぎますね、おっぱい…
まあそれを差し置いても最高でした。
また、タイトルが最も好きです。
余談ですが、OP映像を見てⅣ章を藍√だと勘違いしていたのは自分だけではないはず。
髪が長いのがおかしいと思ってたんですよね。まさか水菜さんだとは。
・Ⅴ章「The Happy Prince and Other Tales」
「共通BADから派生する形の2部作目」みたいな導入。
実質はⅡ章→ここから本編です。
圭の描いた絵の題材が向日葵だったので、まさかとは思いましたけど
こんな結末になるとは…
正直、直哉のように手を失うくらいかな、と思っていましたが。
しかし、この結末、賛否両論はあると思いますが、そこで安易にお涙頂戴な展開に持っていかなかったのは好印象です。
そして序章の圭と直哉が草むらに横になるCG、
あれの稟と圭が入れ替わったCGを見た時には鳥肌が立ちましたし、その後の稟が圭に代わって絵の道を進む、という展開もCGとマッチしていて素晴らしいと思いました。
直哉の展覧会での絵はすごくよく出来ていました。元ネタとかあるのですかね?
ただ、稟の書いた神の絵というものを、フルで見て見たかったです。
でも、あれは中途半端に書いてしまうと逆にアレですし、なくてよかったのかもしれません。
・Ⅵ章『櫻の森を歩む』
舞台は10年後。
終ノ空Ⅱみたいにさらーっとやって屋上でたそがれて終わりかと思いましたが、そんなことありませんでした。
真骨頂の最終章の幕開けでした。
序盤はOverdrive作品の「キラ☆キラ」某ルートを彷彿とさせるような雰囲気でしたが、
なんと、ここにきてどんどん新しい娘が!!
長い人生においていつまでも過去にとらわれずに新しい娘と新しい道を歩んでいく
そんな普遍的なENDを迎えるのか、それも悪くないなと思いきや
再会する過去のキャラ達のオンパレードに懐かしさを覚える暇もなく、再び動き出す時。
終盤の、直哉とフリッドマンが夕焼けの中で会話するシーンは
会話の内容も相まって、「素晴らしき日々」の皆守と木村が会話しているシーンを彷彿とさせるものでした。
それ以外にもところどころにすばひびと同じネタが使われていて、前作ファンには嬉しいワンポイントです。
そして肝心の本編は、正直もう残りHシーン枠はないものの、新しい娘と結ばれてENDかと思いきや
急にふらっと帰ってきた藍にさらっと手を奪われてEND。
え・・・?あの新しい娘は???フラグビンビンなのにあのまま放置?そりゃないよー…
と最初は思っていたのですが、良く考えるといいENDなのかな、と思います。
いつの間にか、これからも続いていくであろう未来にわくわくしながら思いを馳せている自分がいました。
前半では時が経ち昔なじみが離れ離れになるというリアル感を描写しつつ
いつのまにか未来への希望を抱かされていた。ゲームなのです。これも悪くない。素晴らしいですね。
そしてどうやら続編がある模様。
新キャラの娘たちや大きくなったルリヲちゃん鈴奈ちゃんとハメハメできるんですかね?
今から楽しみでしかたありませんね(ゲス顔)
まあ自分は自分なりに、もう10年生きてみることにします。
すかぢ先生、頑張ってください。
【その他キャラ関連】
・明石姉妹のHシーンがなかった…
3P的な物を期待していたのに。ショボーン
予約特典のタペはあるのにこれですよ!
Ⅵ章にも主要キャラのうち(恐らく)唯一名前すら出てこなかった不遇っぷり。
まあⅡ章で出番たっぷりあったので、仕方ないか、もしあるなら続編に期待です。
・Ⅵ章の登場キャラ達にも愛の手を!!!
これに関しては前述の通り続編に期待です。
・男子生徒C
まさか10年後に出番があるとは…
こういうリアルな感じ、好きです。
それよりⅥ章ではボイスが付いていたのですが、学生時代にもついていたのかな?要確認。
・吹について
立ち絵では人形感がバリバリに出てますけど、一枚絵では普通にめっちゃ美人でした。
【音楽】
主題歌、BGM共に珠玉の出来でした。
主題歌は、OPはもちろん好きですが、「ZYPRESSENの花束」が好きです。
「ナグルファルの船上にて」と同じ作曲者さんだと思いますが、やはりいい曲を書きますね。
BGMでは特に「夢の歩みを見上げて」は、体験版時点から「bgm12」としてとても気に入っていましたが
まさかHシーンでも流されるとは!流石すかぢさんやってくれますねw
【素晴らしき日々との比較】
素晴らしき日々が圧倒的なエンタメ性を有していたのに対し、サクラノ詩はどこまでも人間ドラマであります。
不思議なことに、ファンタジー要素を取り入れた本作が日常的で、ある意味ファンタジー要素は皆無な前作が非日常的となりました。。
また終わってみると「美術」をテーマとして扱った本作よりも前作の方こそ美術的な作品であり、
「哲学」をテーマとして扱った前作よりも本作の方が哲学的な作品であったのではないかな、と思います。
あくまで僕の感想、というよりもほぼ直感でしかありません。根拠もありません。
それでも僕はそう、思いました。
【サクラノ詩について】
本作をプレイし終わった後、僕は不思議な感覚にとらわれます。
僕がプレイしたこの作品は本当に「サクラノ詩」なのであるかと。
決して悪い意味ではありません、確かにこの作品は過去プレイしてきた中でも最高レベルの作品です。
それでも気付けばそう疑問に思ってします。
どうやら、あまりにも長かった時間は、僕の中の「サクラノ詩」ということばを、
未知なる作品を待ち侘びて追い求める概念そのものへと神格化させるのに十分だったようです。
故に「サクラノ詩」はこれからも一生超えることのできない、決して追いつけない存在
金字塔と言うよりは虹、僕の中でそのような存在となりました。
今、僕の頭の中には虹のように舞う櫻の詩が確かに聞こえます。
あまりポエムを書きすぎると時間がたった後に恥ずかしくなって消してしまうのでこれくらいにしておきます。
そう分かっていても書いてしまったのは、今のこの気持ち、この瞬間を忘れてしまわぬように残したいとの願いです。
何のために作品を作るのか-他の誰でもない、僕のために。
P.S.)
「横たわる櫻」の絵が体験版の時よりも大幅にクオリティアップしていました。
体験版の感想でチラッとそんなことを書いたんですよね。
よもや一個人の感想のおかげで改良してもらえた、などとは露ほども思っておりませんが、やはり嬉しいですね。
ありがとうございます!