分割云々に関しての雑多な議論はプロフェッサー諸兄にお任せして、さて、もう一度よく考えてみよう。バルドフォースの後塵を拝さず、よくぞここまで強烈なインパクトのある作品を世に送り出したと、少しくらいは賛辞を送りたくはならなかったか。だってそうでしょ…、これでまだ続編へのさらなる飛躍や完成を求めてるのは、もはやファン特有の心理というか、希望というか、願いというか―――いやはや、なんとも贅沢な気分に浸っている自分に気づいてしまった。
バルドフォースをプレイした時、「これを越える作品もそう出てこないだろうな」と柄にもなく悦に浸ったものである。かつてのレビュアーが評価しているような、至高のゲーム性、雰囲気にマッチした音楽、やや退廃的だがそれでいて魅力的なストーリーなどは同時期の作品と比べても圧倒的な存在感を放っていた。これらを総合的に加味すると、どんな作品と向かい合っても、後年の作品に引けを取らないと感じていた。否、それはもう心の底から作品を信じきっていたのかもしれない。そして、今でもその完成度の高さが業界随一であることは、疑う余地のないところである。
かくして、「史上最高」、「大作」という呼び声高きバルドフォースは、幾多のプレイヤーが費やした那由他の時を吸収しつつ、もはやエロゲー業界の「遊べるゲーム」部門において、不朽のタイトルへと進化したのである。
それに基づいて、当然、系列諸作品のリメイクにも期待が高まったわけであるが、やはりバルドフォースの殻は桁違いに固かったようで、リニューアル作品のバルドバレットリベリオンは、多数の衆目ある中で、無残にもその弾丸を弾き返されたわけである。粗雑(クルード)だの、栄光のバルドフォースの面に泥を塗っただの、単なるCGゲーだの、期待とは裏腹の罵詈雑言が雨あられのように降り注いだのは記憶に新しい。まるで衛星の打ち上げ失敗を目の当たりにしているような感覚を覚えている。ちゅどーん。
否定的な評はこのくらいにするとして、肯定的なコメントをざっと見渡してみるものの、アンチに負けずこちらもひどい。絵は未来、シナリオは古代とか、遅れてきた遺産とか、時代を感じさせるといった、ある種同情的なコメントが寄せられる始末であった。かくしてバルドフォースの奇蹟は、もはや過去の出来事のように思われた。
ところが、このバルドスカイという作品は、その幻想や失望をいとも簡単に打ち砕いてしまった。戦闘システムの良さもさることながら、物語がとてつもなく厚い+熱い。(言葉になっていませんが、もし説明するとしたら)クールな世界での熱いシナリオ、シリアスな物語中の登場人物たちの熱い想いが非常に印象深い。バルドフォースもバルドスカイも、この点に関しては人工的な思惑がちょくちょく見え隠れしているので、意図的すぎるという印象は少なからず受けた。もしシナリオだけのゲームだったならば、きっとマイナス評価に直結していたと思う。
バルドスカイに搭載された戦闘パートは、そんな心の柵を忘却の彼方へとぶっとばしてしまう。だってこの戦闘、すごく分かりやすいし、楽しいし、何よりもプレイしてて気持ちいい。その爽快感をどうやって得るかもプレイヤーの任務の一貫であるが、これを放棄してしまってはもったいないというものであろう。難易度はそれほど高くはないはずであるが、慣れないプレイヤーやPCスペックが足りないプレイヤーには非常に苦痛を強いる可能性がある。やりこみゲーとしての色合は、よくも悪くもバルドフォースよりもやや濃くなったと見るべきかもしれない。
未完成のためかプレイ後に考えてしまう部分は比較的多いが、それでも、Dive1を見る限り特大の汚点は見られず、正直不合格という烙印は押せない。致命的な点を分割商法に求めるのは、efにしても、マブラヴにしても、俺翼(これは少々事情が異なるが)にしても、そしてこのバルドスカイにしても、後編の発売を待ってから結論付ければいい。であるからして、レビュアーとしては誠に残念ながら、甲乙のつかない宙ぶらりんの作品となっている感は否めない。まあ、1つのゲームの未来の評価なんてそう簡単に見えても面白くないし、この際左見右見せず気長に待ちたい。
さて、仮にDive1がバルドバレットリベリオンと同じ轍を辿っていたのなら、TEAM BALDRHEADへの信頼も牙城を揺るがしていたことだろう。私の個人的な賛としては、もうDive2の成功を祈る声を間近に聞けることこそが、TEAM BALDRHEADの凄さを物語っているのではないかと思う次第である。この点については最大級の賛辞を送らせていただきたい。
Dive2に期待する身としては、そういった希望が重圧に変わらないかと申し訳なく思ってさえいる。それでも、バルドフォースに隠れたバルドバレットリベリオンとは、ひと味もふた味も違う魅力を見せてほしいと願う。
点数は保留。しかしDive1を見た限り、バルドフォースの脈動を生き生きと感じる作品であった。繰り返すが、後編には期待するところ大である。
……喉元まで出かかっているのだが、レビュアーのポリシーとしては、ここまでしか言及できまい。残念ながら、作品すべて、とくにシナリオの甲乙をおおっぴらに語るのは、あまりにも尚早であろう。
【雑談】
この拙文をご覧になってプレイしたいなって奇特な方がいらっしゃいましたら、一つだけ老婆心からご忠告を。
バルドスカイが完結し終わってから、バルドフォース→バルドスカイとプレイしていったほうがいいかもしれません。
演出面の格差によって、評価がねじれる可能性があるためです。