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Atoraさんのゆのはなの長文感想

ユーザー
Atora
ゲーム
ゆのはな
ブランド
PULLTOP
得点
85
参照数
1329

一言コメント

物語の楽しむための基準は大きく2つある。1つはゆのはに萌えるか、もしくは受容できるか。そして、もう一つは物語を通して抱腹絶倒するか。……なのだが、後者である人が圧倒的多数を占めているのはその内容からも明白だ。これはエロやシナリオを主体として作られたゲームではなく、笑いを探求したゲームと言える。18禁のレーティングが二次的要素として付属してしまった感は否めないが、これまでPULL TOPが培ってきたものや目指してきたものを考えると、「ああ、これも一つの完成形ではあるな」と納得してしまった自分がいる。―――「それはそうと、いいかね。まずそもそも戦艦と言うのは……(09/12/17 リテイク)

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

……(中略)↓






古代のフェニキアの軍船に始まるんだ、その頃の推進機関は人力!つまり櫓を漕ぐことで推進力を得ていたんだ!もちろん人力では限度があるから、通常の航行の時には帆を用いたわけだが、風は不安定でそれこそ風向き次第では思うように航海できない!そこで機動力を得るために櫓を漕いだわけだよ!で、人力なわけだから当然多数の人間が多数の櫓を動かしたほうが当然推進力も高まるわけだ!…そこでね!当初は甲板に櫓を漕ぐ人を並べていただけだったのが、甲板を何層にすることで櫓の数を増やしていったわけだ!この当時の海戦は、接舷して切り込むか船首に装備された衝角で相手に突っ込むかが主武器で、もちろん矢で相手の漕ぎ手を射殺したり、火矢で船そのものを焼き払うのも有効な戦法だったんだけどッ……!」(12月18日 春日尚樹)


…まあ、ここで吹いてしまった(リテイク回数を知りたい)。
 後は笑いのオンパレード。穂波を筆頭に由真、渋蔵、尚樹などの色々な奇人キャラクターが登場するこのゲーム、総じて声優の演技がうまい。なんだか、ほんとに必死で演じている感じがありありと伝わってきて、プレイ中ニヤニヤしっぱなしだった。シナリオは秀逸とまでいかなかったが、日常シーンの笑いが頭抜けていたのが、何より高い評価を与えた理由である。外部の人間を起用したにもかかわらずPULL TOPらしさが出ているあたり、洗練されているブランドだと好感がもてたのも一因だ。



◆シナリオ◆
 シナリオに関して言及すると、攻略するヒロインの順番によって後味がよくなったり悪くなったりとややムラがあるのは残念。とくに、書き手が補完を意図したゆのはシナリオが逆に浮いた存在となっているのが、全体のバランスを崩していると思う。

 わかば=「ほのぼのシナリオ」・・・舞台設定を最大限に生かしていると思う。「田舎っぺ」がわかば自身に染み付いていて、単純にほのぼのとした気持ちになれた。裏返して言うと、由真絡み以外でたいした起伏が無いのはご愛嬌。そもそも、そういう方向性のキャラだろうし、このシナリオは個人の嗜好性がモノをいう。

 椿=「現実シナリオ」・・・書き手の心情をそのまま描写した感が強い。なるほど説得力はもっともしっかりしたものだったのが、逆にそれが強すぎて、嫌に自然な文章が気になった。日常を描こうとしているのは察知できるのだが、あまりに現実的過ぎたのが響いている。

 穂波=「笑いのシナリオ」(感動も少し)・・・最大の特徴はなんといっても面白みに溢れることだ。ギャグが所狭しとちりばめられていて、エッチも純愛の割に濃い。典型的だけど感動もある。このシナリオに関しては、特に文句は無い。出来るだけ後からプレイしたいシナリオである。

 ゆのは=「まとめシナリオ」・・・補完のシナリオなんだろうけど押し切れていない。キャラの位置づけは悪くはない。ただし、他のシナリオでもゆのはは重要人物であるため、彼女主体のシナリオの第一印象は非常に希薄なものになってしまい、物語の前半部のゆのはのツンの部分だけが特化して見えてしまう。


◆音楽◆
 曲の雰囲気が非常にいい。田舎らしい曲もコメディ調の曲も、場面場面に合っている。


◆エッチ◆
 穂波が予想以上に濃い。他は並みといったところである。


◆総評◆
 シナリオを通して見ると、明らかに感動を基礎にして紡いでいないのが分かる。物語序盤から中盤にかけての笑いのクオリティが非常に高かったため、なんだかシナリオの本筋はプレイ後にあまり残らず、印象的な場面ばかりを回顧してしまう。普通は「エロシーンまだかなあ」と悶々としてしまうのだが、「早くドタバタ劇がはじまらないかな」とドキドキしてた自分がいる。
 おそらく、ゆのはシナリオの軽薄さもこのあたりから来ていて、笑いの渦中から一歩外に出ていたために、逆に浮いてしまったのだろう。でも、「この神様はこんなイメージでよかったんじゃないか」と思ってもいる。何よりもゆのはがいるおかげで、他のキャラの個性が際立っていたのは事実だからだ。「ゆのは1人を犠牲に」という言い方は酷すぎるかもしれないが、明らかにゆのはが場に溶け込めてないのは、個性が余ってしまったからだと言わざるを得ない。

 ともかく、ゆのはシナリオの欠点はかなりあると思うが、目立つモノといえば、どうしてもゆのはが強欲に見えすぎたことに他ならない。人間おかしなもので、どうも物欲に関して猜疑心や嫉妬心を抱きがちな一面がある。強欲+守銭奴+毒舌家を併せ持つゆのはが足掻いても、悲しきかな萌えに繋がらなかったことこそ、全体のアキレス腱だったかもしれない。しかし、端的に言って、「これは面白い!」と言える作品だろう。なんだか愛着が沸いてきたりするのが不思議である。




ちなみに尚樹の(略)は以下。読めてない部分と間違いの部分に関してご教授いただければ。


「『秋水』というのはだね。第二次世界大戦末期に日本軍が開発したロケット戦闘機の名前なんだよ。ロケット戦闘機という聞きなれぬ名称に  (中略) →君は戸惑いを覚えるだろう。現在においては消滅した機種だから、当然といえば当然だ。ではまず、誰にでも理解できるように一から説明しようじゃないか―――ロケットというのは爆発または燃焼によって発生した噴流の反作用で推進力を得るという極めて単純な原理により成り立っているわけで、その発明は非常に古い。様々な推進機関の中で最も古いと言っても過言ではないんだよ。文献上確認できる最古の飛行機械は、古代中国において発明されたわけだが、その推進力はロケットを用いたものだったんだ。」(12月21日)


「ドーチェが火事場泥棒めいたノリで第二次世界大戦に参戦を決意した時、イタリアは軍事的には何も準備が出来ていなかったんだ!!   (以下略) →全師団の20パーセントが戦闘可能に過ぎず、装甲師団の70パーセントは1台の戦車も配備されておらず、兵員全体に行き渡るシャツも無かったんだ!!」(12月26日・椿ルート)


「ヴィットリオ・ヴェネト級三番艦ローマ!! 建造所アドリアティコ造船、1938年9月18日起工、1940年6月9日進水、1942年6月 (略)  14日就役、1943年9月9日サルディーニャ沖で沈没。常備排水量43835トン、満載排水量45960トン、全長237.80メートル、幅32.95メートル!イタリア巨砲史のフィナーレを飾るその主砲は、アンサルド/OTOモデル1934ぉぉぉぉん!!」(12月26日・わかばルート)


「拓也くん! 人間魚雷と聞いてさては悪い想像をしているね。安心してくれたまえ!わがイタリア海軍のミゼット潜水艦は… (略) →帝国海軍のカイテンなどと違い、生還を目的に開発されたすんばらしく高性能な兵器なのだよ!たとえば英海軍クイーン・エリザベスのッ……!」(12月26日・穂波ルート)


「一度あの戦いを見た事があるけれどあれは凄いよ。速度に勝り小回りが利くパドリオ元帥と、四十六センチ巨砲に匹敵する必殺の拳を振り回す由真ちゃんの戦いは (中略)→ まさに現代に甦ったダビデとゴリアテ!!ゆのはな町最強の名誉をかけた仁義なき戦い!リッサ島沖海戦か、ジェットランド沖海戦か、日本海海戦か、汝最強を求めるか!?」(1月1日)


「一発でも当たったら致命傷になりかねぬ殴打を、ひらりひらりとかわすパドリオ元帥!!それでも拳圧だけで飛び散る白い体 (中略)→ 毛!!必殺の爪がかすり憤怒の叫びをあげる由真ちゃん…!その叫びはまるで神話に出てくるシーサーペントの咆哮!応えるパドリオ元帥の雄叫びが呼び寄せるゆのはな町中の猫たち!まるで偉大なる将軍を仰ぎ見る兵どものように、パドリオ元帥を見つめる猫たち!!嗚呼ぁぁ……あの現実とは思えぬ光景―――そうあれは伝説!レジェェンドォォォっ!!!」(1月1日)


「このボクも発売日より先に手に入れようと熱く心を燃やしてる所なんだよ。世界中の誰よりも早く欲しいアイテムを手に入れることにマニア (中略)→ は燃えるのだ!嗚呼!これぞマニアとして背負った十字架!……いや、スティグマ!!だがボクはそんな痛みなら甘んじて受けよう。この甘美なる痛みこそがマニアの幸福!だって考えても見てごらん…!?オーストリアの超ド級戦艦なんてマニアック極まりないものが、これから先発売される事があると思うかい!?いや…ないッ!!」(1月1日)


【雑談】
 バックログ+リピート再生機能使用回数が3桁を超えました。リピート再生機能を一番有効に活用しているゲームでもあると言えましょう。ヒロインを差し置いて春日尚樹の演技に脱帽&爆笑しました。「あぐぅっ。眼鏡眼鏡眼鏡が飛んだぁっっっ。眼鏡眼鏡眼鏡眼鏡ぇ」ってのが一番好きです。