そのニッチな性癖から決して主役を張れる存在ではないが、 エロゲー界の「遊べるゲーム」として、何物にも代えがたい存在感を放つ続き物の一作。 組み合わせの妙味をこの上なく生かした、シリーズ屈指の名作ではなかろうか。
凌辱系ファンタジーと言えば触手が付き物だ……と個人的に信じている。いつの頃からか、ラノベでも割と過激なシーンがカラーページに採用されるようになった。最近では、それらのページを捲るたびに、年を取ったものだと実感せずにはいられない。
まあ、そんなくだらない雑感はスルーするとして、レビューに取り上げた本作は、まさに触手でもって、ヒロインを徹底的に、しかも性的に「ビョルンル!」(※1)しちゃうゲームなのである。“竜姫産卵触手SLG”という不道徳極まりないジャンルを自称していることからも、どす黒い内容であることは、容易に思い浮かべることができるだろう。その実態もご想像通りで、「神話成分多めのファンタジー+触手によるハードコアなエロ+SLG」である。事実、触手はエッチシーンのいたるところに登場し、二穴や人体貫通も当たり前のように備えている。穴さえあれば、どんな狭いところでも入り込むウナギのように、触手状のモノはそこに収まると考えてよい。
個人的にアナルセックスが多いのは嬉しい限りだが、下品な言葉がピー音なしで飛び交うあたり、マイルドなユーザーは思わず一歩引いてしまいそうだ。およそ万人向けとは言い難い。それでも、過去作品である「RAGNAROK」における“凶堕ち”と比べれば、まだまだ精神的にキツくはないはず……という所感ではあるが。なお、触手や産卵、悪堕ちといったシチュエーションを広く採用しているため、従来のシリーズ作よりも、やや広範な嗜好性をカバーしていると感じられた。
だが、ここで少しだけ注意しておきたい。“触手”は本シリーズ作を語る上で重要ではあるものの、必ずしも評価する時の最重要カテゴリではない。というのも、このシリーズの評判を高めているのは、紛れもなくSLGの部分であるからだ。いかなるSLGであっても、たびたび戦略的あるいは戦術的な操作は必要になってくるが、このシリーズは、前者の占めるウェイトが異様なまでに肥大化している。面白さの核たる部分がそこに集まっていると考えてよいだろう。加えて、この作品がナンバリングタイトルの中で、最も重量級の戦略性を備えていることも、評価を上へ上へと押し上げる大きな要因となった。
一般的なウォーシミュレーションゲームでも、どのような部隊を用いるか、部隊の中にどのような能力を持つユニットを置くか、または組み合わせるかということに思考を働かせるはずだ。この作品は、その組み合わせの数が桁違いに多く、それらを考えることが非常に楽しいのである。ユニットの数・ユニットごとの能力・そのユニットに付加できる能力・装備で付加できる能力など、無意味な編成も含めれば、我々が考えうるありとあらゆる可能性が存在している。
文字通り、天文学的数字に達していると言えよう。
好きなユニットを生かすもよし。強さを追求するもよし。ねずみ算の如く爆発する無限の組み合わせは、数多の煌きが放つ万華鏡のような魅惑的な内容ゆえ、魅入られたが最後、そこにプレイの意識を持っていかざるを得ないことだろう。このシリーズをプレイする者ならば、必ずだれもがベストな編成を見つけようとして、際限なく時間を空費することは宿命づけられているのだ。時間の無駄遣いによって得られるカタルシスは、なかなか他のゲームでは味わいにくい。常日頃から、整理整頓が好きだったり収集癖のあるユーザーは、尚更その中毒性に注意しておきたい。
ただ、戦術性については……実はあまり気にしなくていいのかもしれない。何度でも言うが、多くはユニットの組み合わせを覚えることに価値を見出すからだ。実際の戦闘よりも、前準備の方がはるかに面白さが勝っているのである。
ここまでSLGの重みを書いてしまえば、最早シナリオには触れなくていいのかもしれないが、全く触れないというもの些か気の毒であるから軽く触れておきたい。触手の絡んだエロの嗜好性はさておき、いつものシリーズ作の雰囲気を考えれば、この作品は編年体テイストで硬めの語り口はそのままに、いずれの話も、ややソフトに描き切ったと言えるのではなかろうか。SLGのせいで流れが切れてしまうのが残念ではあったが、ロウ・カオスともに、読み物としてよくできていた。とくに、キャラクターごとの小話には光るものがあったように思われる。
総合的な難点があるとすれば、まずは、シミュレーションパートにおけるレトロ感あふれる画面の“進化不足”であろうか。世界地図は決して心躍るファンタジーを感じられるマップ描写ではないし、肝心の編成画面も見やすいとは言えない。ただでさえ目にする機会が多い画面なのだから、そろそろ意識的な改善が必要ではないかと思う。せめて、ラグナ解放時の新規参入ユニットくらいは「NEW!!」の表示をつけるなどして判別させて欲しいものだ。自由度の高い編成なのだから、そこに余分な時間を使ってフラストレーションを溜めるのはもったいない。
また、行動力不足によりヒロインのイベントを消化できない点は、計画的なプレイを著しく阻害している。時間の限られたスレイヤーを取り込むにあたり、もっとユーザーライクな設計を反映してもよかったのではないか。
Windows媒体で遊べる低価格ゲームが溢れる中、アブノーマルなシリーズものを世に送り出し続けている点は、いちエロゲーファンとして本当に頭が下がる。メーカーには感謝してもしきれない。触手・産卵・悪堕ちというニッチなジャンルを加味すれば、色んな意味で唯一無二と言わざるを得ない。選ばれしプレイヤーのみが安心して遊べる粋な作品ではあるが、皆さま。是非プレイして、一緒に「ビョルンル!」していただきたいものである。
【雑記】
これは誤字ではない。作中で触手さんがそう言う(?)ものだから、そのまま載せているだけである。どのような心境かは、字面から察してほしい。ビョッフ!ビョルンル!