“NO SISTER, NO FUTURE.”を地で行く内容。この作品に限って言えば、「頭が悪い」「残念」という表現は最高の褒め言葉だと思う。どうしようもないお兄ちゃんによる、どうしようもないお兄ちゃん達のための物語だ。
お兄ちゃん
「ちゅー、しなきゃ」
お兄ちゃん
「妹達に目覚めのちゅーを……しにいかなきゃ!」 (冒頭より)
この二つの台詞から、おかしな朝が始まりを告げる。
痛々しくも甲斐甲斐しい「お兄ちゃん」と、かわいい妹たちとの生活を描くハートフルコメディ。
この作品はそれ以上でもそれ以下でもない。実に「頭が悪い」作品だと思う。
貶しているわけではない。むしろ最大限の賛辞を送っているつもりだ。
何か色々と間違っているのがお分かりになるだろう。うらやま……いや、実に鬼畜ではないか。
それでも、これほどまでにぶっとんだ方向に熱い男を、私は否定する気になれない。
こんな無茶苦茶な雰囲気を後々まで損なわないのが、この作品の凄いところだ。
この作品は、およそシリアスとは無縁の存在だ。
作中では、兄妹ものにありがちな心の葛藤をことさらに深く描かない。
妹との「いちゃらぶらちゅっちゅな日常」を、最大限満喫できるように設計されている。
妹にキスしたり、耳かきしたり、歯磨きしたり、しまいにはエッチしたり……。
角砂糖のような雰囲気を台無しにする要素は、ごくわずかしか内在しない。
軸となるテーマを大切にしているわけだ。
世間一般的に言えばそれ自体はとても不純なことで、私から見ても非日常の景色に映る。
主人公ですら、二次元世界での決まり事とはいえ、子供のころから気づいていたのだ。
「キスを日常的に行う」ハウスルールがおかしいことに。
だが、この勇気ある「お兄ちゃん」は出だしからインモラルの類を一掃する。
それも理論的に飛び越えるどころか、説明するのも野暮とでも言いたげに力強く跳躍する。
まるで「ハードルなぎ倒し男」と呼ばれたアレン・ジョンソンのようだ。
そこにハードルがあれば蹴り倒すように、妹がいればキスせずにはいられないというのは、一見するとなんたる暴挙か。
しかしながら、その理由はハウスルールにあり、「妹が好きだから」ということに集約される。
冒頭の台詞に使命感どころか悲壮感すら滲ませているのは、彼なりのやんごとなき事情によるものだ。
この潔さには、もはや非難を通り越して馬鹿馬鹿しくなってくる。
そしてこの瞬間、私の中の背徳感はもはや行方不明となっていた。
そういうおバカな一面を最初から明け透けに見せることで、この物語は非常に馴染みやすくなっている。
そのため、導入さえ躓かなければ、あとは四人の妹とどれだけ楽しく過ごせるかが満足指数の鍵となる。
無条件に妹口家の日常に身を任せることで、とてもハッピーなお兄ちゃんライフを送ることができるだろう。
なお、続くシナリオの出来不出来によって、評価が急変することはまずない。
「頭が悪い」展開は最初から続いており、その空気は最後まで激変することがないからだ。
そのため、痛々しさあふれる「お兄ちゃん」に同調できるかがこの作品最大の関門となのだ。
たしかに、特殊すぎる「お兄ちゃん」の存在がゆえに、ちょっと……いや、かなり「頭が悪い」場面も多い。
だが、先述のとおりそこに物申すのはセンスがない。柳に風を受け流させるようなものだ。
物語を楽しむためなら、できる限り気にしない方が賢明である。
ところで、私は妹もの専門のプレイヤーではない。
それゆえ、妹ものに関する心の機微は計りかねる。
そんな私でも、ここに新たな踏み絵が生まれたことくらいは分かる。
実の妹のためならば、たとえ火の中水の中(ただし二次元に限る)。
「目に入れても痛くない」のは子でも孫でもなく、いの一番に妹だ。
……そう豪語してやまないユーザーにとって、この作品はうってつけだと言える。
もちろんそれ以外のユーザーにも、ある程度は楽しめるつくりとなっている。
ただ、さらに高みを目指すのならば、“NO SISTER, NO LIFE”の精神あってこそ、この物語は真に楽しめるだろう。
シスコンという言葉が軽く感じられるほど、この「お兄ちゃん」から狂おしきパトスを感じるからだ。
そう考えると、そこそこ人を選ぶ作品なのかもしれない。
さて、四人の妹はいずれも可愛いし、キャラデザも大変よろしい。加えてエロ方面も内容がいい。
Galette節全開のお兄ちゃんシリーズでは、ツインテ妹のエロがやや突き抜けきれていない側面があった。
ところが、本作のツインテ妹であるやよいは、台詞回しからエロの構図、エスカレート具合まで、格段に良くなっていた。
また、全員にアナルプレイがあるなど、シチュエーションが色々とある中で均一化も図られている。これは明確な進歩だ。
そのぶんハーレムは若干伸び悩んでいる気もするが、実用性にさほど問題はない。
もちろん実妹が好きだった方が好ましいが、そうでなくとも、萌え抜きゲーとして合格点を出せる部類だと思う。
エロ方面で補足するなら、「のぞきみダイアリー」が今回もいい仕事をしていた。
妹視点が入るとやたらエロく感じられるので、是非オンにしてプレイすることをお勧めしたい。
これが、予約特典でなくゲーム内容として同梱されていたのも誠に喜ばしい。
入手如何によって、ゲーム内容に差異が出ることがなくなったからである。
かえすがえすも非常に残念な内容だ(褒めている)。 本当に緩い。
ただし、妹属性(ただし実妹に限る)が好きであればあるほど、この作品は外せない。
そんな世の中のお兄ちゃん達に向けられた、とびきり残念なお兄ちゃん向けの作品と言える。
【雑記】
電波曲に毒されそうです。