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AtoraさんのLove Sweetsの長文感想

ユーザー
Atora
ゲーム
Love Sweets
ブランド
MOONSTONE
得点
79
参照数
2698

一言コメント

良質なイチャラブゲー。一見何の変哲もない学園モノながら、ネガティブな材料が全くと言っていいほど見つからない。構想がツボに嵌ったかのような安堵感を覚える。ありがちな風景を可能な限り魅せようと尽くした堅実な力作。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

 学園生活でのイチャラブに焦点を置いた普遍的なエロゲー。シリアスな展開があるわけでも、登場人物が異能を得てバトるわけでもない。現代日本を舞台にした、陳腐すぎるくらいこてこての学園モノ。それがこの『Love Sweets』という作品の正体だ。それなのに、いや、だからこそ下手にストーリーを誤魔化せないし、メインコンセプト(学園モノ)を軸にしたサブコンセプトも如実に伝わりやすい。実際この作品は、“イチャラブに特化した”サブコンセプトがあるのは明白で、作中においてもイチャつく展開が遺憾なく描写されている。直球すぎるイチャラブゲーと言えるだろう。ビジュアルにもテキストにも死角らしい死角が見当たらないのも強み。学園イチャラブゲーを創ろうとして、狙った通りの作品に仕上がっている。そんなすわりの良さが伺える。


【ビジュアル】
 キュートな絵柄で統一感があり、いかにも萌えゲー向きの画風。ぷにっとした柔らかさ溢れる塗りはなお健在で、これと言ってケチをつける必要性が感じられない。下着もCGによって使い分けており、当然ではあるが細やかな配慮がうれしい。また、擬似的に主人公と肩を並べて歩くアニメーションも配している。手を尽くした印象がある。
 CGの枚数は15×5(キャラクター)+2(共通。全員集合)の77枚。数字だけを見れば、若干の物足りなさもある。しかしながら、そこは的確な判断のもと、シナリオ上必要なところに必要な枚数を配することによって、体感的な枚数増へと繋げている。欲を言えばもう一着、衣装にバリエーションがほしかったところだが、その有無によって作品の軸が揺らぐことはありえない。全体的に質の高い仕事をしているからだ。


【シナリオ】
 事の発端から共通ルートを経た個別ルートまで、実にありふれた内容とイベントのオンパレード。一貫して奇を衒わない学園モノに終始している。幼馴染・妹・先輩・後輩・学園のアイドルの5人と付きあえるとあって、対ヒロイン関係もこれ以上ないくらい典型的だ。生粋のテンプレート仕様にもかかわらず、シナリオは雛形から予想できないほど生き生きとして、なおかつ飽きが来ない。何よりも会話のテンポがいいし、そこに漫才的な面白さがある。

 キャラクターの話を少しすると、5人のヒロインの中で、櫛無の破天荒さはとくに際立っている。彼女が喋るたびに会話に花が咲く。アクセントが生まれる。ヒロインでありながら三枚目の役割もあり、好きな人にとっては、実においしいキャラクターのようだ。全体的に台詞回しが上手く、他愛のない会話を最終的に纏め上げてしまうライターのセンスも抜群。針小棒大な会話の応酬は、見ていて実に明るい気持ちになれる。

 また、恋人との関係はほぼ常時イチャイチャと描かれる。これがまた、明確にステップを踏んでいて初々しい。告白即エッチをよしとしないばかりか、結衣に代表されるように、淫語の使用すら段階的なのだ。大きな流れの中に小さな流れがあるおかげで、二人の関係の高まりが否応無く伝わってくる。清純なカップルから少しずつ大胆になっていく二人に、きまりの悪さを覚えた。
 エッチ自体の尺はそこそこ長く実用的な部類であるが、上記の通り、順を追ったエッチをより強く意識したいのならば、回想を使うよりも、本編の初回プレイ時に愉しむべきだろう。本編のエッチをスキップするのが常となっているプレイヤーには、濡れ場の繋がりを再考できるいい機会かもしれない。ここまで明確に段階を踏んだ作品も、そうないだろうから。


【総評】
 個人的なプレイ時間は30時間程度。ダラダラ引っ張らずにあっさりとエンディングを迎えるため、さほど余韻には浸れなかったものの、とろけそうなイチャラブをどぎつくない程度に堪能することができた。小細工を弄さずに、流行りの正攻法で布陣した結果が功を奏した。嗜好さえ間違わなければ手堅い作品な上、なかなか濃い目のイチャラブを味わえるとあって、ビギナーからベテランまで、幅広くユーザーを取り込める内容に仕上がっていると思う。批判の口実を与えてくれない作品であった。
 


【雑記】
 喫茶店の制服を見て、Piaキャロ3を思い出さずにはいられませんでした。