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Atoraさんの倉野くんちのふたご事情の長文感想

ユーザー
Atora
ゲーム
倉野くんちのふたご事情
ブランド
CUBE
得点
75
参照数
806

一言コメント

「1×6」を魅せたいのか、それとも「2×3」を魅せたいのか。「双子事情」のタイトルに違和感がある。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

3組の双子という頑強な土台がありながら、蓋を開けてみれば個別シナリオ至上。
テンプレートなシナリオに終始した。設定を有効活用しない構成に疑問を覚えた。


双子には夢がある。なんと言っても双子丼だ。
今作の双子は3組6人で、上から4番目に主人公の♂がいる。
「双子事情」というからには、めくるめく双子丼を夢見てもいいだろう。
双子と楽しくイチャイチャしたい。双子丼を心行くまで食べたい……欲張りだろうか。

しかし、なんと残念なことか。
このゲームのシナリオは、あろうことか双子そのものを軽視した。
そもそも、「双子×3組」という無茶な設定を通しているのだから、もう行けるところまで行くべきだったはず。
それなのに、両親の仲直りや個別ルートといったシナリオから、シリアス臭が鼻を衝く始末なのだ。

結果として、個別シナリオは普遍的なエロゲーのそれへと成り下がっている。
これら個別ルートに、双子ものとしての魅力は皆無と言ってよい。
3組の双子という強烈なスパイスも、活かしきっているとは言いがたい。
そういう窮屈な物語を読みたかったわけじゃないんだ。
双子のどちらかを選ぶなんて、苦渋の選択は必要ないんだ。
双子丼は双子のままい頂くからこそ、おいしく頂けるのである。


ビジュアル面は、兼清さんのポップな絵柄で不自由はしないとみる。
抜きゲーとまでは到らないが、キャラゲーや萌えゲーユーザーにとっては、狙い目の作品ではあるだろう。
それゆえ、萌えゲーやキャラゲーといった範疇なら、ある程度の理解を得られそうだ。
末の双子が人気投票でも好評を博したように、ユーザー次第ではキャラクターがツボに嵌ることもあるだろうから。


絶好の題材を上手くアピールできなかった。
最後まで、突き抜けきれない萌えゲーという印象を払拭できなかった。
「3組の双子とどうしたいか」という部分で、製作者側のピジョンとユーザーの欲求が噛み合っていない。
もっとエッチで、楽しい性生活を送れる作品を意識していたならば、シリアス要素は軽めに仕上げておくべきであった。
その分をエロに注力していれば……なかなかに悔やまれる作品である。



【雑談】
『マテリアルブレイク』のように、オーラルセックスを一つの回想とする手法は少々残念ですね。