「魔法にかかったままセックスすると、主人公の存在を忘れてしまう」という設定が自縄自縛気味。エロゲーであるにもかかわらず、エロシーンを制約する設定には疑問が尽きない。その結果として、総Hシーン数に対するオーラルセックスの割合が高くなったものだと思われる。そこに情状酌量の余地はあるとしても、エロの描写が期待よりもはるかに薄いのは否めない。エロ濃度で言えば、同ブランドの「アネカノ」には到底及ばない。期待はずれ。
【最先端のIT学園都市。フラれまくる主人公と突然現れた魔法少女。魅了の魔法をかけられた主人公は……!】
これら見惚れがちな設定の数々に、「女の子だってヤりたいの!」なんてインパクト抜群のサブタイトル。いかにもエロそうであるが、これに誘われたのがいけなかった。多岐にわたる設定をどう生かすのか興味があったのだが、全てを畳みきるのは単なる絵空事だったようだ。
とにかく物語が窮屈に感じた。設定はやたらと壮大なのだが、あまりに大雑把に物語が進行するため、本来の機能を成していない。物語を読了するに、IT学園都市という舞台は、この物語にはあまりに広く、身の丈が高すぎるように感じた。大半のルートが、この舞台をうまく活用できてない。都市全体を、国家プロジェクトという規模まで引き上げる必要はなかったはず。あまりに超展開すぎて鼻白んでしまった。
作中で話題性の高いプログラミングコンテストやら魅了の魔法やらは、小道具として出したのはいいものの、結局のところ、最低限の役目しか果たしていない。前者は「一位おめでとう」の一言で終わるようなラフな描写だし、後者はエロシーンを自ら低い水準に貶めているとしか思えない。
主人公のノリの良さはなかなかのもの。バカゲーという点では、こういった肉食系のお莫迦な主人公でも、なんら問題はない。しかし、このノリが伝染したかのような地の文はいただけない。主人公視点なのは大いに結構だが、地の文でやたら自分にツッコミを入れたり、言い聞かせたりしすぎて、かなり寒々しい。お世辞にも、読みやすい文章とは言いがたい。
エロは微妙。タイトルが大胆で直接的な割に、注目していた濡れ場の完成度がかなり低い。回想は26シーン。キャストはツンデレの璃乃役に青山ゆかり、清楚美人の卯月役に遠野そよぎ、ほんわか系の瑠花役にまきいづみを充てるなど、その配役は鉄板だが、肝心のCGがエロくない。これはCGの背景がぼんやりとしており、一様に寂しいのもあるのだろう。
それよりも問題なのは、一言感想でも指摘した「セックスすると、主人公の存在を忘れてしまう」という設定が、エロまわりを台無しにしていることだ。この作品がエロくない元凶を探るとしたら、まさにこの設定に尽きる。
この設定のせいで、エロシーンはフェラ・スマタ・69といった前戯を中心に描かざるを得ず、本当にエッチまで行ってしまうシーンは数えるほどしかない。また、いざ事に及んだその後が蜥蜴のシッポ程度しか描かれておらず、ご都合主義もびっくりのというのは、いくらなんでも「女の子だってヤりたいの」というサブタイトルを、羊頭狗肉と貶されても仕方のないところである。
結果的とは言え、「おまけ」や柊蓮という男の娘ルートでもって、エロ濃度を水増しならぬ「エロ増し」せざるを得なかった。未プレイヤーも、エロ濃度はタイトルよりも低めに見積もった方がいいだろう。おそらくは、付属品の「アネカノ」80%ディスクのほうがエロく、実用度も期待できるはずである(「アネカノ」原作をプレイ済みのため、80%ディスクに関してはインストールしていないことを記す)
これはタイトル詐欺。それも、相当に手の込んだ詐欺である。
【雑記】
ちぐはぐな作品でした。「アネカノ」では新進気鋭なところを見せていただけに残念です。