(GiveUp) 隔靴掻痒の極み。周回に対する配慮の無さ、エロの薄さが欠陥のSLG。
「詰め将棋的展開が好きなゲームが増えてきたな」と感じる昨今である。
計算づくでの勝利は、対人でこそ格別の味わいがすると信じてやまない私であるが、
近頃は、こういうゲームが波に乗りつつあるのだろうか。それとも、私が時代遅れなのだろうか。
ゲーム構造自体は王道的な陣取りSLG。
敵の思考ルーチンは特攻ありきのため、初歩的な戦術は「守りながら敵をおびき寄せる」ことになる。
地味な匂いがぷんぷん漂う。
戦闘システムは、習うより慣れろを地で行くシンプルな構造。
・前後8列でユニットを配置して戦闘を行う
・ユニットは遠距離(弓)・中(槍)・近(剣)という3つの攻撃距離を持っている。
・それぞれ三すくみの関係にある。陰陽師という例外がある
・2対2のターン制バトル・撤退すると攻撃力半減、2度撤退すると攻撃力0
・戦う場所によってユニットに強弱がある(陰と陽)
弓(2、3マス先に攻撃可能)
□□味□□敵□□
□□□味□敵□□
↓こうなると、弓は攻撃される一方
□□味敵□□□□
槍(1、2マス先に攻撃可能)
□味□敵□□□□
□味敵□□□□□
剣(1マス先に攻撃可能)
□□□□味敵□□
基本的に、これを2対2で行うと、 『味□味□□□敵敵』 のような状態で戦闘開始。
行動順はユニットの敏捷力に左右され、各ユニットが6回行動するか、
いずれかの小隊が全滅した時点で、戦闘は終了となる。
移動は基本的に一歩刻みだが、前衛のターンで後衛と入れ替わった後、
新たな前衛となったユニットはもう一歩先に進める仕様。
事実上、二歩までの移動が可能である。
□□①②□□~
↓
□□②□①□~
つまり、こういうことになる。
戦闘はスキルを除けばこの繰り返しによって、敵を打ち倒していく仕様である。
敵の弓ユニットに隣接すると、後ろに下がらないばかりかなぜか撤退もしない。
これはおそらく、バグに近しい仕様なのだろう。
数ヶ月前に出たどこぞのSLGとは違い、ちゃんと味方は撤退もできる。
画面左端から一歩外に退場させれば、それにて撤退完了となる。いたってシンプルである。
ユニットのスキルは多種に渡るため解説は省く。
一応このゲームは陣取りでもあるのだが、それはお飾りに過ぎない。
敵CPUのごり押し一辺倒という思考ゆえに、戦術的な要素がうまく反映されていない。
こちらから積極的に打って出る必要性はあまりない。そのため、敵陣を駆逐する爽快感は得にくい。
敵の雑魚小隊の数が多く、連戦に次ぐ連戦といった感じで、シナリオの流れを阻害している。
1周目はパラメーターが脆弱なことも相俟って、一通りの攻勢を受け流した後で、
空の陣地を進軍するという間抜けな構図になりがちである。難易度は低いほうだ。
ただし、陰陽と妖怪を題材にしているだけあって、場所によって陰が強かったり陽が強かったりと、
ユニットごとの得手不得手を把握していないと、思わぬ苦戦を強いられることもあるだろう。
主人公や特殊なアイテムでその流れを調整するというアイデアは、なかなかに面白い。
また、このゲームには回避という概念はあれど、防御という概念はないので、
どのようにガタイがよかろうと、HPが尽きれば即刻ご退場願うことになる。
システムに不慣れな序盤は、ユニークキャラクターが斃れがちなので注意したい。
しかし、喉もと過ぎればなんとやらと言うように、仕様に慣れてしまえばどうということはない。
後半に至るにつれて、味方の強さが浮き彫りになってしまう。
周回を重ねるうちに作業化の色は徐々に濃くなってしまうことだろう。
完全に場慣れしてしまった2周目以降は根気の問題だが、
引継ぎ要素が資金とアイテム、それにMOB式神のみと極めてチープ。
レベルが引き継がれないのは、モチベーションの低下に拍車をかけている。
パラメータの引継ぎすらできず、かと言って、戦闘もスキップできる仕様ではないため、
1周目と似たようなことを延々と続けざるを得ない。これは痛い。
なお、シナリオを全てコンプリートするには4周必要らしい。
時間という代価を支払うには、システムの弱さという点で払うに値しなかった。
やる気を削がれる理由としては、その操作性の悪さも挙げられる。
行動済みのキャラがどれなのか、ユニットリストを一見するだけでは分からない。
出撃キャラクターのソートが不可と、これらは隔靴掻痒の極みである。
戦闘で獲得した経験値が表示されなかったり、特定条件下では進行すらままならなったり、
行動不能表示の相手が動いたりと、この手の作品にしてはバグも比較的目立つ方である。
状況次第では手詰まりになってしまうパターンもあるので、セーブ箇所は1つに絞らないほうがいい。
バグフィックスの遅さは致命的な域に達しており、発売からはや1ヶ月経過しているというのに、
なんら修正パッチが出ていない点については、対応に疑問を感じる。
SLGやコンフィグまわりでは、常にフラストレーションを溜めがちであった。
ギャグテイストの平安時代チックなシナリオは、好き嫌いが顕著に分かれそうだ。
個人的には可も不可も無くといったところだが、プレイヤーによっては、
「晴明を攻略(要周回プレイ)するまでやめない」決意に燃える方もいるかもしれない。
ただ、小噺が少ないサブキャラクターたちは、ずいぶん気の毒に思える。
濡れ場での難もあって、私はキャラクターに愛着をさほど抱けなかった。
ギブアップしているため、シナリオに関してはここまで。
もりたん氏の絵は、流石に『ひのまるっ』で好評を得たクオリティを維持しており、
本作でも如何なく実力を発揮なさっていると思うが、『暁の護衛』に代表されるあかべぇ系だけあって、
エロ方面は尺の短さや描写の拙さも見て取れた。
具体的には、唐突にエロシーンを挿入するという暴挙に出たのである。
処女とかそういうのはお構いなしに、挿入後の描写から事が始まってしまうキャラクターもおり、
数の豊富さが系列ブランド随一ならば、尺の短さも随一というアンチノミーたる様相を呈している。
そのせいか、他のエロゲSLGに比べると、特定のキャラクターに愛着が湧きにくく、
パラメーター初期化の弊害もあって、ユニットを育成する楽しみに欠ける。
要するに、ビジュアル面を除く総合力が低い。
いまだSLGにはTRYの段階といったところであろうか。
『俺サマのラグナROCK』よりは成長が見えた。次回を待ちたい。
【雑記】
東漢直駒やら蘇我入鹿やら、登場人物が割とフリーダム。
私も「恋姫無双」の初期では批判の論陣を張りましたが、
ここまで溢れると流石に慣れてしまいますね。