2011年度にリリースされた同人作の中では、疑いなくトップを争える位置にいる。忠臣蔵というベースがあるから、パロディだから、といった色眼鏡の類は捨て置けい。埋もれてしまうのが実に惜しい。多くのプレイヤーに、手に取っていただきたい一作。続編まで乞うご期待。
萌え時代劇である。侍が女人化した上で語られる仮名手本忠臣蔵と言って誤解はない。
忠臣蔵と新撰組の二つは、いかにも勧善懲悪を好む日本人が好きそうな題材ではないか。
名だたる大河ドラマにおいて、やはりこの2つは頭抜けている。
しかし、エロゲー界ではどうだ。
思えば、これまで新撰組の方は題材としてエロゲーでも使われたことがあった。
(Liar Soft『行殺☆新選組』、May-Be SOFT『学園☆新選組!~乙女ゴコロと局中法度~』、
りぷる『りんかねーしょん☆新撰組っ!』 など)
忠臣蔵を背骨の部分に用いたエロゲーは、寡聞にして知らない。
巷では三国志をはじめ、戦国時代や水滸伝などをベースに敷いた作品は名高い。
忠臣蔵は相対的に見て不遇だった。ようやくエロゲー化されたか、とひとりごちた。
忠臣蔵を土台としているだけあって、話の大筋は忠臣蔵に限りなく近い。
そこに、れいんどっぐオリジナルとでも言うべき小噺や設定が絡んでくるから面白い。
シリアスなシーンになればなるほど、四十七士の胸に宿した想いが燃え滾る。
ぐいぐい引き込まれる。オリジナリティ何するものぞ!!
テキストが非常に巧く、会話のテンポがスムーズで飽きさせない。
かく言う私は一気にプレイできた。濡れ場は若干テキストが弱くなるが、
やはり重要なのは本筋。そこはまったくブレない。
大石内蔵助をはじめ、女人となった忠臣蔵の主要人物の魅力が随所にあふれ出ている。
たとえば、ボイスレスにもかかわらず、登場人物はこの上なく活き活きとしている点。
プレイしていて、これほどボイスレスという環境が惜しいと感じた作品に出会ったのは、
脚色抜きではじめてだ。出来がよいからこそ、目についてしまう。罪なものだ。
もういつ商業化しても私は驚かない。
絵のレベルも非常に高く、立ち絵の多さは他の追随を許さないからである。
この作品に声が付けば、まさに鬼に金棒。虎に翼である。
物語でとくに印象に残ったのはなんといってもラストのシーン。
討ち入りの場面は読み応え抜群で素晴らしかった。
ところが、物語の第一部を読み終えた後でも、大河ドラマさながらの音楽で
臨場感をさらに高めてくれた。これは評価に値する。
おかげで読後の余韻がすこぶる気持ちよかった。
物語が完結次第、あらためて筆を執ることになるだろう。
今回のレビューは、あくまでもこの作品の紹介に過ぎない。
少しでもプレイヤーが増えることを願って筆を擱きたい。
【雑記】
私は以前はパロディモノにかなり懐疑的だったんですが、
今ではそこそこ歓迎しています。
変に意固地にならないように心がけています。