案の定あったアペンド第二弾、これにて完結。テーマの選択は良かったものの活かし方に疑問。
新要素を一通り消化しました。
本アペンドの新要素は以下の通りです。(公式HPより一部抜粋)
・全25種類以上の新規マップ+αの新規ストーリー
・ストーリーに準ずる新規ユニットの追加
・一部、既存敵ユニットのクラスを追加
・燐光石の機能を解放
・ユニット追加に伴うアイテム、スキルの追加
・輪廻項目に、既存メインキャラの上級クラス追加
・LVとそれに伴う各種能力の上限値を上昇
・契約数や捕獲数の上限上昇イベント
本アペンドですが、以下に該当する場合は購入を検討しても良いでしょう。
・最後まで見届けたい人
→本編では五十説、アペンド第一弾で追加された二十五説を迎えたところでそれぞれエンディングを迎えました。
本アペンド第二弾にてさらに二十五説が追加され、物語としては完結することになります。
各追加内容に対して点数はつけませんが、いくつかコメントを記載します。
[主要ストーリー]
アペンド第一弾では魔族側の支配者レーヴァロイスが天使と魔族の争いの戦線膠着状態を生み出した現況であり、クラウスに天使を複製して生み出す廻天の聖壇の脅威は終わらず、より機械的に目的を果たすだけの天使を生み出すようになること伝えました。それを受け再び本編で制圧した聖禦の霊峰へと戻る方針を定めたところで終わりました。
ヘルミィナとの夫婦漫才、狂言回しのラムエルを主軸としたやり取りは全く変わらず、アペンド第一弾で追加されたアンリエットやカミラが会話の中に入ってくること以外にシナリオ進行のベースに変化はありません。
起伏のないままシナリオが進んで行く中で、上位存在の命令に従い魔族を殲滅することに疲れた天使の首魁であるマルティーナと、魔族側で台頭してきたレーヴァロイスはお互いの被害を最小限に抑えるため、上位存在からの命令に逸れないまま茶番じみた戦争を繰り返すことが最善であると結論づけたことが明かされました。また、意思のない人形にレーヴァロイスの力を混ぜ込むことで命令に逆らう、すなわち個々が自発的に物事を判断できるように仕組まれたものであったとのこと。また、結局クラウスが何故人間族の体になったのかについてはマルティーナの実験の産物であったこと、オルガ=ニザ=カイトもあくまでマルティーナの意思に従うだけの創造物であったこと、ラムエルは上位存在からの使命に影響されない存在であることなど、本編・アペンド第一弾で提示された謎は一応全て回収されました。
それらの現実を踏まえてクラウスはレーヴァロイスのやり方を継いで茶番戦争をそのまま維持するのか、それらをはねつけて自分のやり方でイムニスの支配者になるのかの二択を選ぶことになります。
当初は団結を知らない魔族たちを束ねて天使を滅ぼし、自身がイムニス地方の支配者になることを目論んでいたわけですが、レーヴァロイスやラムエルとのやり取りを経て力による支配ではなく天使と魔族の融和が選択肢として追加されたことは納得の行くものですし、堕天していない天使ではノルファザ(創刻のアテリアル)やドミニオンズ(姫狩りインペリアルマイスター)と同格の第四位天使がラストボスに据えられたことについても格落ちとまでは感じませんでした。
結局のところありふれた存在の魔族や一介の創造物に過ぎない天使では上位存在に逆らうことは不可能なので、目をつけられないように引き続き"仲良く喧嘩する"ことが着地点になりました。その被害が最小限になるよう計算された天使と魔族の茶番劇がいつまでも続けられるか、使命のないラムエルが天使側の指揮を取っていることに上位存在が気づかないままでいられるのかの疑問は残ったままです。
[キャラクターたち]
こちらも時折サブキャラクターも会話に加わってくるようになった点は本編・アペンド第一弾と変わらず、アンリエットとカミラも会話に参加する程度のものです。クラウスのイジられキャラの確立、クラウス大好きルシエルとベアトリースのライバル関係、エルヴィールとカミラの戦いに何を求めるかという主義の違いなどのちょっとした掘り下げが追加された点もアペンド第一弾のやり方を踏襲しています。
また、サブキャラクターのレベルを上げることで侵攻・遠征にてシーン回収ができるだけではなく、新しいスキル・専用装備を獲得できるイベントが追加されており、こちらはアペンド第一弾よりも改善が見られていました。
登場キャラクターたちのパーソナリティが描写されており、性格・考え方なども理解できた点は神のラプソディや珊海王の円環に比べて良かった点ではあります。しかし、やはり根幹のゲームシステムにより幻燐の姫将軍2・マイスターシリーズに比べるとキャラクター間の交流が薄くなってしまった点を考慮すると、残念なところではありました。
[各種追加要素について]
・追加されたユニットと上位クラスなど
レベルキャップが99まで開放され、ステータス上限も同様に上昇しました。他にも過去のシリーズに登場したユニットの登場、はぐれ魔神に相当するキャラクターの追加などもあり、自軍の編成のバリエーションがさらに拡充されました。合わせて過去シリーズにおける星石に相当する燐光石が用意されたことで、ステータスの上限に達しなかったユニットの補強も実現できるようになりました。
ただ、最終的にエクストラダンジョンも用意されなかったので、「自由な勢力の作成・オンリーワン部隊の編成を実現」は相変わらず縛りプレイを設けて本編をひたすら周回する点に変わりありません。
そして、過去のシリーズからの伝統、あるいはSRPG自体の宿命とも言うべきか、敵ユニットのHP・攻撃力の上昇、スキルの脅威が増大していくにつれて、遠距離攻撃(特に魔法や命中率の高い攻撃)に耐えられる固さを持つ、敏捷ステータスの確率によって再行動ができるスキルを持つ、クリティカルを出しやすくなる高い技量や範囲攻撃を持った殲滅力の高いユニットの利用頻度が高くなり、最大出撃枠の10名に収まる一軍とそれ以外の二軍に分かたれてしまう箇所はそのままでした。
神採りAMの店番システム(クレールには悪いと思いますが)、天結いLMのユニオンシステムはそうした二軍に落ちてしまいがちなキャラクターにも一定の役割を与えた良いシステムでした。ヘルミィナが戦闘前にしばしば放っている使い魔のような形で斥候の役割を持たせられ、斥候に出したキャラクターによって増援が防げる・アイテムが貰える・儀式ポイントが追加でもらえるなどの報酬があったのなら、二軍たちにも存在意義があったのかもしれません。ただ、手軽さとはかけ離れることになるので、実現可能性は低かったのでしょう。
・追加イベントとシーン回想など
各種追加要素の存在により、サブキャラクターの親交イベント時と捕縛したユニットを契約した際に発生するシーン回想も同様に追加されています。
メイン・サブの12名に二つずつで24、敵ユニットの捕縛・契約時で6の総計30シーンがありますが、こちらは本編同様の絵柄ですので特に問題はないでしょう。
ヘルミィナのみオークを交えたシーンや捕縛したユニットとのシーンがありますが、今回も基本的にクラウスとの一対一は変わりません。
[総評]
まず、本編発売からアペンド第二弾で完結するまでの2年と2ヶ月間お疲れ様でした。
あらためて振り返ると神のラプソディと同じようにあれよあれよと使役できる魔物や天使が増え、いつの間にやらラストボスや先代魔王の拠点に殴り込みと、終始シナリオを進めている感覚は薄いままでした。
キャラクターもマッドサイエンティスト然としたレジーニアや性格のころころ変わるルシエルなど他のタイトルに見劣りしない濃さがありながら、お気に入りのキャラクターの育成に血道を上げても活かせる場所は本編だけ、戦闘に出られる8~10枠から外れたユニットはそのままお蔵入りなど、なんとも薄い作品でした。この設定で冥色の隷姫や魔導巧殻のブラッシュアップ版を遊びたかったという思いもあります。
クラウスがレーヴァロイスの力に頼りイムニスの支配者に君臨する選択肢は用意されたものの、取ってつけたような感じのため分岐に至るまでの判断材料になるイベントもなく、せっかく創刻のアテリアルから存在する天使をメインに据えたのに三神戦争やシェミハザなどの世界設定に切り込むこともないまま。
作品の主軸にも据えられたかもしれない何故自分が自分であると言えるのかについては、全く同じ見た目や名前であってもヘルミィナやラムエルたちとの出会いなどの積み重ねこそ重要との結論を出したわけですが、これもラストボス前のやり取りで一言二言触れられただけでした。
本編とアペンド二本をそれぞれ独立して買うよりは安くなったオールインワンパッケージがあるといえども、せっかくのテーマ、キャラクター、世界設定の選択は申し分ないのにこれらをうまく活かすような出来になっておらず、人に勧めることはできません。
次回作は"大艦巨砲"にふさわしいタイトルを期待しています。