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Aizawa Naokiさんのアメイジング・グレイス -What color is your attribute?-の長文感想

ユーザー
Aizawa Naoki
ゲーム
アメイジング・グレイス -What color is your attribute?-
ブランド
きゃべつそふと
得点
73
参照数
258

一言コメント

何をいってもネタバレになってしまう気がする。そんな密度の高い作品だった。感想は興奮しすぎて勢いで書いたポエム。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想


このゲームはヒロインの途中脱落式だ。(厳密に言えば多少の自由はあるが、ここではさして重要ではない。)
4人のヒロインとの付き合うルートがあって、そこから1人1人を降ろしていって、ゲームを終章まで進めていく。私はいつもエロゲをプレイするように、シナリオへの好奇心を持って、作業のように選択肢を選んでいた。
正直な話をすると、私は降りていくヒロインに対してただ無関心だった。「あとで攻略すればいいや」―――そんなことを考えていた。

そう、最後の選択肢を見るまでは。

その選択肢に至る頃、謎はほとんど解決されていて、もっとも重要なヒロインがわかっていた。だから私は、そのヒロインを選ぶだけだと思っていた。でもそこで、ゲームはこう打ち明けてきた―――、「このルートを選んだら、もうひとりは助からないよ」、と。これは生命の危機とかそういう話ではない。ただその人が十数年した努力を無に帰す選択肢だった。私は驚いて、混乱した(そしてASa Projectのバカゲーをプレイして気持ちをリセットした)。もうその時には明らかにわかっていた。この選択肢はどちらかを〈選ぶ〉選択肢ではなかったのだ。この選択肢はどちらかを〈選ばない〉選択肢なのだ。

話は変わるが、この世界は不条理ばかりだ。現実はいつもどちらかを選ばなければならない。ときにはその選択肢から逃げることもあるかもしれない。現実では選択肢を選ばないこともできるからだ。もしあなたが重要な選択から少しでも逃げたくなってしまうことがあるのなら、あるいは私のように逃げてしまったことがある人ならば。このゲームでその選択肢の先を見てほしい。それは私達が思うように択一の選択肢なのかな。それともどちらも救われるようなエンディングを迎えることができるのかな。そしてその答えを胸に、現実を生きてほしい。




ーー以下ネタバレーー

伏線回収(自分で気づいたもの)
・リリィとアンナ(=リラ)は親子っぽい(アンナとリラはグランド12章のリラからリリィ先生経由で電話をもらうシーンで同一人物とわかる、同じシーンの最後の方でリラはリリィを子供扱いする。)。赤リンゴはもういないみたいなこと言ってた気がするから、リリィの父親の方はもう他界してるのかもしれないですねー。(赤青リンゴは男女の前にしか現れない)
・アンナがキリエによろしくって言ってるのは、アンナが1章でキリエパンツ事件の原因になったキリエ御用達店の店主だから?
・4章(主人公から見て最初のループ)で『あなたはこれから、大切な人と生き延びる道を探します。そう―――決して、定められた運命に抗うことなく。』という天の声はサクヤだったのか


伏線回収(自分で気づけなかったもの)
・キリエの映画がほとんどアドリブ→文字がなく、映画のもととなる台本を書くことができないから
・オンネトーは北海道足寄町に実在する地名
・第7章でサクヤと美術回廊廻った後、リリィ先生が突然出てきて最後の審判について解説してくれるが、「本物は縦14<<メートル>>、横12<<メートル>>近く・・・」とさらっとメートル法をつかって外の世界アピールをしていた。(中は高さがハイドで距離がリークル)
・グランド(13章)の黄金の林檎がユネの命を救うシーン、CG差分にも入っている黄金の林檎登場シーンの黒い羽(普通白じゃないのかな、とは思った)は梟の羽で、ユネがミネルヴァ(知恵の女神)であった(になった?)ことを示唆する。そういう意味で、主人公は「俺をパリスと認めてくれた」とつぶやいた。
・リラの実際の立場(青リンゴ)は時を巡るアンナに酷似している


未だ残る謎
・地震の説明(人為的に起こせなくないか)
・最後の12/25にユネが消えた後24に戻るだけでその運命が回避される理由(黄金のリンゴがあったからはわかるが、シュウが異世界に残ればユネが助かる的な描写はなんだったのか):主人公が赤いリンゴを食べたことにより、ユネが赤いリンゴを食べた歴史が覆されユネ復活??それもよくわからなくね。:最後のループの12/24に主人公は赤リンゴ、仲間たちが青リンゴを食べ、最後のループの12/25に主人公が異世界で仲間たちを最初のループ(ユネが初めてのループを引き起こす前)の12/24に送る。ループはおそらく「その時点の同キャラに知識をインストールする」ことで行われているため、主人公は自分が仲間たちを送ることでユネの消失とアポカリプスの回避(ギドウも記憶を保持するため)を同時にできると考えた。実際には、金のリンゴ(赤リンゴ+青リンゴ+強化)のお陰で、主人公は命を使う必要がなく、記憶も残ったまま最初のループより前に戻ることができた。→「俺が巻き戻したのは1日」...おーい....
・ユネが消えた後に「シュウ先生に会った後もう一度シュウに会った」っていうのは?(「シュウ先生も変わった人だと思ったけど、シュウは自分のことまで覚えてなかったから。どっちも同じシュウなのに、印象が違うのは変だけど」)
・アレイアに赴任するシュウが、いつチヴェッタの鬼ばばミズキ先生と知りあったのか→先生全体として町を保全する役割・組織であったと考えれば、その組織の中で知り合っていたのは妥当。鬼ばば、という呼称まで知っていたのはサクヤが教えたからか。