シナリオを題材に、ウィトゲンシュタインの幸福哲学を説明した、あるいは幸福を題材にシナリオを読ませるエロゲ。長文感想は上のほうは哲学の考察、下は考察嫌いの方のための事前知識的ネタバレ。
2022.01.08 執筆
2020.02.24 加筆修正
哲学について
中二病の端くれなので、家にあった論理哲学論考(「論考」)も読みながら話を読んだ。(イきり)
ゲーム内では「論考」が引用されまくっているが、この作品のテーマである(ウィトゲンシュタインの)幸福論はむしろ「草稿」という本に拠っているらしく、「草稿」を読んでいない私には正直どこまで理解できたか怪しい。
が、素晴らしき日々自体の哲学は相当読みやすく書いてあったのでそれを踏まえて私なりの理解を書き下す。
(これを知っていてもストーリーを楽しめるとかはたぶんないです。)
ウィトゲンシュタインの個人的解釈①(これはちょっと拡大解釈:最終章の「死」に関する対話を「不幸」で置き換えています):
・事実とは私が見ているありのままの世界である。
・これに対して、妄想は事実内の事物を好きかってに配置しなおしてできる。(私は日本に住んでいる。->私がアメリカに住んでいたら。[日本→アメリカに置換] )
・よく語られる「幸福」は事実から上の方法で作られる妄想である。(仕事に10時間かかる現実。->仕事が1時間で終わったら幸せだな![10時間→1時間に置換] )
・幸福(妄想)と比較して不幸(事実)が生まれる。つまり「不幸」は、もともと自身に降りかかる事象ではなく、妄想して幸福ができた副産物として、自分自身が作ったものである。(正しい見方で世界を見ると、現状はただの事実。家族が死んだ、というのも現に起こっている運命。)
・つまり妄想が存在しないことを真に認めれば、不幸、そして相対的な幸福は消える(∵事実以外の比較対象がなくなるから)
・この事実だけを見つめて受け入れ妄想せず、比較としてではなく、絶対的に幸福であると信じることが幸福である。(信じるだけなので証明はできないが。)
注1)この妄想できること、の限界が「論理空間」であり、「語りうること」である。
注2)作中「世界の境界」とは、次のうちどちらかを指す:
①「語りうること(妄想可能なもの)」と「語りえないこと(妄想することができないもの)」の境目。例えば「私」の肉体や脳は語りうることである(「私の目が足についていたら」等妄想可能です)が、考える「主体」としての私は語りえないことである。(主体を部分に分割して再構築できるだろうか?主体の位置や大きさを変える妄想ができるだろうか?ここら辺むずいので、論考の5.63周りを読んでほしい・・・)
②主体はそれ自体が「妄想」するという特殊性から、「事実」と「妄想」にどちらにも片足突っ込んで位置する。その意味で主体は「世界の境界」である。
ウィトゲンシュタインの個人的解釈②(これは相当拡大解釈):
・未知のものに対する想像は、上記の考察が成り立たない。(例えば、死後の世界(未知)は「エロゲの主人公に転生する」としても、「そんなものない」としても、ほかの想像でも全く現実と矛盾しない)
・こういうものに関しては自由に想像して信じてよし!(ウィトゲンシュタインは確か神がいる、を信じていたはず。このゲームでも最終章で、死んだあと最愛の人と会える。と信じている病室シーンあり)
作品テーマの「どう生きるか」に対する解釈:
・現実を見つけて生きよう。現実は自分にしか生きられない現実なのだ。
・ただ、未知のもの、つまり、生まれる前の世界、または終ノ空、または他人格の存在、または死後の世界、または神の世界、は自由に妄想してもいいんじゃない?
いろいろ書きましたが、論考読んだりその解説書読み漁ったほうがわかりやすいですね・・・
このゲームと同時進行で論考を読み進めるとめっちゃ楽しい。
サクラノ詩が「なぜ生きるか」がテーマらしいので楽しみ!
→サクラノ詩読了。うーん。。。「なぜ生きるか」はテーマになっていなかったような気がするが、考察(漁り)が不足しているのかもしれない。
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>>>>>>>以下ネタバレしようと思います<<<<<<<<<
(私個人の見解としては(そして実践した身としては)、以下の2要件を同時に満たす方は以下の最低限のネタバレを知ってから読んだほうが楽しいと思います。
・この作品をルート分岐を除いて2周しないと決めている、
・メモを取りながらエロゲに関して考察をした(できた)経験がほぼない
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考察が好きな方は
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読まないように!
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間宮卓司と、悠木皆守と、水上由岐は、同一人物の多重人格障害です。
頭の中でお互いにコミュニケーションとれる(例えば卓司が由岐と話す、等)し、周りの人には全部「間宮卓司口調」に統一されるらしく、本人が障害に気づいてないけど・・・
(本人が気づいていない頭の中のお話モードの場合、テキスト表示部が画面全体になります...元の画面下部だけ、との比較で区別可能)
ほかにもギミックが沢山あるので楽しんでください。