シナリオの深みが深い
※※!CAUTI0N!※※
ニルハナと言う名前について詳しく考察もしていませんし、ゆにっとちーず様の作品に触れたのもこれが初めてなので、詳しい方から見ると何を書いているのかと言われそうですが、一言感想の頭の悪さから察してくれることを期待しています。
・テーマについて
ニルハナという名前の考察を行っていない理由のひとつはそれがこの作品のテーマではないと思ったからです。(個人的に、ニルハナとは仏教用語だと仮定しています。)確かにこの作品を通して、伝奇的な雰囲気や、終盤に至ってはオカルトな内容も入っているのですが、宗教をテーマにするにしてはそれらの要素が少なすぎると見受けられました。そのため、仏教がテーマというよりはむしろ、宗教の話をすることである程度不必要な話・状況説明を省略しつつ本題(後述)の話が出せるから、という理由であると思いました。
で、その本題とは何かという話ですが、意見がまとまっていません。メインテーマは以下の3つが考えられますが、甲乙つけがたい。
----①主人公タツヤの精神(つらい過去の囚われ続けている)がどのように解き放たれるに至るか。
----②副主人公リュウヤの妹に対する償い。現実にないとは言えないギリギリのラインですよね。
----③施設にいるマユ/タツヤの他人の感情を糧に生きているすがた。
①に関しては物語のラストシーンですね。自分の心と上手に距離を置く方法は、現実世界でも「怒りは6秒でピークを迎える」などかなり研究されていますが、つらい経験と向き合うためにどうすればよいか、そもそも向き合うとはなにか。読み込みが足りないので確証がないですが、タツヤ自身は向き合ってはいなかったですかね。「距離をおいた」と作中でも述べられますし。
②に関して、これはリュウヤのもとに妹が戻ってきてから施設を作るまでの話。独善的な善行など、見るところは多いですが、未だ一周目なので何かを得られるほど読み込めてませんね。
③に関して、①、②は主題候補に挙げつつも、実は違うと思っているのですよね。というのもあまりに解決していないのです、上記2つは。重い内容な割に解決もすんなりしていますし、一般化が行われているわけでもない。ということはむしろ、その解決ではなくそれぞれの生き様をひとつの標本として見てゆくというのが正しいのではないかと思い始めました。すなはち、解決法ではなく問題に対する向き合い方の姿勢が、作者自身の伝えたいことという考えです。その観点から行くと、解決しようと行動を起こすリュウヤは物語的にはむしろ異端で、マユやタツヤのように、ウジ虫のように生きている様が物語的に見せたい観点であるのかもしれないですね。
・閑話
全く違う話なのですが、短く終わるのでお付き合いください。最近「痛み」(誉田哲也、他)という本を読んで圧倒的痛みを感じて文章能力に感動したのですが、その時ふと、人って痛みや苦痛を感じる作品が好きだと思ったのです、ぼんやりとでしたが。なんでだろうという理由がニルハナをやってなんとなくつかめました。
多分人間って思いの外強欲なんですよね。感情をフルに動かしたいし、動かすことをどこか快感に感じているところがあると思うのです。ただ、苦しいことって実際に自分が経験するのは嫌じゃないですか、だから他人の不幸話が好きなのですよね。苦しみたいという感情と自分は苦しみたくないという防衛本能が合を生んだ結果でした。ちょっと自分が嫌いではなくなった気がしました。
・テキストに関して
ニルハナのテキストなのですが、本当に表現力と言うか、読者を心情に納得させるのがうまいです。ファンになりそうです。
主人公たちは大きすぎる不幸を背負って生きているので時々意味が分からない行動に出たり心情になったりするのですが、その心情を俯瞰する別の主人公を心情描写時に加えることで、私達読者にそういう気持ちになることもあるのかもしれないと思わせています。。。意識したことのない書き方だったので感動しました笑
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ニルハナ
実質プレイ時間06:56
クリック数12468
同人ゲームの良作として平均的ですね。値段に対しては結構楽しめる方ではないでしょうか。