面白いといえば面白いけど、荒削りなのがとにかく目立つ
『洗練されてない遊べる同人ゲー』というのがしっくり来る作品です。
製作側のやりたい事が伝わってきて、こういうシステムだからこの施設やシステムを使えばユーザーは便利になるだろうな、という
作り手の思いや意気込みが所々に配置されてるのを感じます。
膨大な(膨大すぎる)イベントシーンの数々もそれに拍車をかけてます。
……が、微妙に噛み合ってない部分が多々あるのがネックになってます。
以下詳細
・全体
遊べますし、面白いです。
闇に閉ざされた暗黒大陸を歩いて(光源が全然無くて足元くらいしか見えない)、各ダンジョンを発見したり
敵と戦ったりしつつ、資源を使って光源を設置し、自分たちの領地を広げて安全圏の確保+都市を発展……という
システムは「良くぞ挑戦した!」と諸手をあげて賞賛するくらい、難易度の高いチャレンジになってると思います。
が、まだ2作目のためか、製作側が不慣れな感じも多々あり、それが裏目に出ている部分が目立ちます。
・戦闘
5つのスロットに各種技をセットし、それがチャージが溜まると行動に入るというコマンド別のアクティブタイムバトルです。
装備の耐久力、着てる服のブレイク要素などの定番に加え、面白い点として「相手の技にセットして攻撃しその技のチャージを止める」という
要素が入ってます。
マナを沢山使う大魔法を止めたり、回避技を止めて確実に攻撃を当てたりと序盤は様々に頭を使って戦略を立てていく要素ですが……。
「手数があれば基本的にどんな技でも止められてしまう」という仕様のため、アビリティを沢山セットできて装備が揃う後半に行けば行くほど手数ゲーになります。
序盤はカウンター技持ちの相手には手数を控えて…となるんですが、後半だと「カウンター技にAIMセットして止めてしまえばいい」に
なるため、手数特化で組むとどんなボスでも止められます。
火力が高く足が遅いソードマスターのドレス等はこのせいで割を食ってます。
大火力+ノワールのアシストによるダメージ10倍はロマンがあるんですが、しょせんは一発屋という事でしょうか
・探索
公式でもダッシュを入れたいとブログにありましたが、探索するための足がとにかく遅いです。
ゲーム中の時間の流れを変えられるのですが、開発を指示して移動開始した奴隷人員たちはこれで移動速度変わるのに対し
フィリア(主人公が操作するヒロイン)の速度は一切変わりません
そのため、必然的に「無駄を避けて最短を移動」がプレイヤーの行動原理になってきます。
ダンジョンの位置もこの探索で探していって、見つけたら奴隷を送り込んでアイテムを拾ってきてもらう流れですが
上記で書いたように足が遅いために、外交で座標を教えてもらって最短で移動して探索終了となるのが常です。
出来るだけフィリアを動かさないようにしよう…となってきますので、未知の暗黒大陸であってもあまり探索してる感じが薄いです。
移動しても暗闇の中でばったり敵と遭遇くらいしかありませんので。
・発展
聖光源を設置すると、その部分が明るくなり光に触れた魔獣は近寄ってこないので、これで安全圏を確立していくのが基本スタイルです。
そのため何をするにしても、まずは聖光源を設置して領土拡張がベースになります。
……が、資源で使った聖光の量がそのまま明るさの範囲になるため、序盤からMAXの999固定のままがもっとも効率がよくなります。
(この数を減らしても設置完了までの時間は一切変化ない)
そして次の問題として設置個数が増えれば増えるほど、次の設置完了するまでの時間が掛かります。
この結果何が起こるかというと、上記の探索の問題とあわせて「あまり数をおかずに必要最小限にして、イベント起こる場所やダンジョンには
直接足で出向いて終わらせてこよう」という事になり、あまり探索したり領土広げたという感じがなくなります。
一応、ワープポイントを設置して行き来できるのですが、最大9個までしか置けない(拠点にも戻り専用で飛べるけど、戻るしかできないので
行きのために結局拠点付近にも置くことになる)、チュートリアルであるように拡張していくよりも、中間地点に
適当に飛び地作ってそこをワープでつないだ方が圧倒的に便利かつ開発が早くなります。
後、これは自分のマシンスペックが低いからかもしれないですが、メモリ監視ツールみてると、物理メモリを1G近く
持って行かれて、CPUがたまに100%取られて重すぎる状態になってました。
建物のデータなどもいちいち読み込んでるらしく、画面周りもオブジェクトが密集してる地域と何もない地点ではレスポンスが
明らかに違うため、ますます大都市に発展させるよりも、飛び地で離すのが有効になってしまいました。
突き詰めて言ってしまうと、最終的に移動する必要があるのが北方面なので、そっち側にだけ伸ばしていけば問題ありません。
・娼館経営
経営というか、お金=保有する聖光源量 コスト=使い捨ての奴隷 であり、前者は精液採取で。後者は妊娠させて魔術で大量に生ませるという手順になってます。
ダンジョン攻略して仲間になる女の子たちをココに配置していって、そのためのコストを稼いで貰うのが基本プレイスタイルになります。
色々と収益予測も出るのですが、この予測数値にオブジェクト設置による補正が入ってないらしく、数字は正直アテになりません。
最終的には膨大なイベントを見るために適当に振り分け、リストが埋まった人から順にロイヤル奴隷(通常の奴隷100人分)の出産率だけを見て振り分ける事になります。
操作キャラであるフィリアも、フィールド上の現地にある娼館に連れて行ってイベントを起こせばイベントリストに登録されます。
が、体力を大幅に削られる上に、狙ったイベントが起こせない事も多々あり、初期資源を稼ぐ以外はラスボスとの戦い前に消化試合的に見て終わりになると思います。
ヒロイン格ではありますが、おまけ程度になってしまってるのは残念。
・イベントリスト
本作最大の問題がコレです。
基本的にCG付き娼婦イベント1~2(メイン格は2~3)に、精液採集、妊娠が3パターンx相手3の9パターンx3段階という数です
1キャラにつき27イベント…というとものすごく膨大に感じますし、実際に膨大です。
が、CGなしのイベントのテキスト量はとにかく少なく、2~3行で終わりという物が9割くらいのため、妙に長めにとられてる暗転シーンばかり見ていくことになります。
しかし、全部で20数キャラいてそれぞれに27パターン前後のイベントがあるとなると、1回戦闘してイベント発生するたびに
イベントリストがイベント開始待ちキャラで埋め尽くされる事になり、何時間も死んだ魚の目でイベントを消化し続ける事になります。
「沢山イベントを用意しよう。埋めるリストを用意してユーザーにコンプリート要素を与えて楽しんでもらおう」という意気込みは感じますが
不慣れのために齟齬を起こしてると、最も感じる部分です。
そして大きな問題として「今現在、何段階目のイベントなのか娼婦配属のシーンからは確認できない」という事があげられます。
CG・回想シーン(妙に重くてレスポンス悪い)を開いて、その中から該当のキャラを探し、今現在設定してるシーンが何段階かを確認して
娼婦配属の画面に持っていって設定し…でも20数キャラいるから何人かは忘れてしまって、また見に戻る……という
二度手間、三度手間が必要になります。
これなら自分でこまごまと設定するのではなく、「精液採集」「妊娠」のどっちかにだけ設定していくと、勝手にイベントが発生してリストが埋まっていく方がよほど親切です。
設定項目やその紹介文などは全キャラ別に分けられていて使いまわしも無くて、力を入れてると感じるのですが、不便極まりなさがそれを消してしまってます。
・ヒロイン個別イベント
メインヒロインのフィリア、敵対する3勢力のトップ+その側近のメイン格のヒロイン達(一人男がいますが)
娼婦になる20数人のキャラ
これら全員に個別イベントとエンディングがあります。
更に、これら個別のキャラ同士のそれぞれのイベントも3段階ずつあります。
娼婦イベントはリストとCG登録だけなので、ぶっちゃけやら無くてもいいのですが、こっちは起こす事で装備もらえたりステータス上がったり技覚えたりするので、必須消化イベントになってます。
一応今後のアップデートで、これらのイベントはCTRL押しながら選択で、リザルト画面だけ表示が出来るようになると機能が付くようですが…。
ただ、三段階といっても一つのイベントを細分化してる内容があまりにも多く、途中他のイベントも挟むために、シーンのつながりが分からなくなることが多々あります。
例として
イベント1
「私に何か用か?」
「~にいって話をしましょう」
イベント1終わり
イベント2
(1の続きで会話の内容や回想シーンなど)
イベント2終わり
イベント3
1と2を踏まえた直後のシーン、またはその内容に関する結論など
と、これだけで終わりのものが多々あるので「これ、一つでいいんじゃ」と思う事もしばしばです。
この辺りも「イベントは多い方がいいよね」と思う開発側と、1つのものを3回に分けての消化めんどくせぇと思うプレイヤー側の齟齬になってると思います。
30時間くらいプレイしましたが、多分半分くらいはコレらの消化に費やされてると思います。
・ストーリー
とにかく薄いです。
そして大きな特徴として、主人公の台詞は一切なく
「あなたは~をした。~と思った」
と、三人称のモノローグで語られるので、主人公がどんな人物か一切分かりません。
人当たりはよく、登場人物から好意をもたれやすい事は説明されますが、主人公自身のキャラが薄いため、短いイベントシーンでは、向こうが勝手に主人公に心情を吐露し、結論を言ってくる流れになります。
個別エンドもあるんですが、出てくるキャラ全員にあり、女キャラは全員恋人であり嫁にして、エンディングを迎えるための「真実の絆」の関係も
選択後に違うキャラにやり直す事も出来るため、恋愛要素も薄いです。
恋人、嫁にした後もそのまま娼館で働いて貰うわけですが、そこは一切触れないので(性交渉の相手を主人公、労働奴隷、ならず者の三者から選べるのもそのまま)
NTR感などもまったくありません。
(相手にならず者を選択しても、どこか憎めなかったり、変な性癖持ちだったり、スレてるだけでいい人だったりする場合も多々あります)
・キャラクター
これだけ多くのキャラを出していながら、全員キャラ立ちしてるのは凄いと思います。
が、その分、関係が複雑怪奇に入り組んでおり、各キャラの真相や裏の話を知りたいなら、全員分を見るのが必須になってます。
膨大なリストを消化するためのモチベーションにはなりましたが、正直もっと纏めても良いんじゃないかと…。
特に他の3勢力のキャラは
・主人公の領地から距離も等間隔
・それぞれの戦力もほぼ変わらず
・外交で友好関係にしてイベント起こすにしてもスタート地点が同じだからほぼ3勢力同時に発生
という関係上、3勢力を連続でイベント終わらせて、ほぼ同時に仲間にしやすいです。
この結果何が起こるかと言うと、9人分のイベント(元から仲間にいる20数人x9の個別イベント)と、8人分の娼婦イベント(一人男なので娼婦に出来ない)が、一気にイベントリストに並ぶ事になります。
この頃には戦闘に出さなくてもキャラ同士の友好度があがる施設はもう作ってるでしょうから、9人x20人で180近い未消化イベントがリストを埋め尽くしてるのを見た時は、さすがに気力が続かずにその日はプレイを中断しました。
基本的に戦闘はフィリア一人で、この3勢力のトップキャラが同行者としてサブ戦闘キャラとして連れて行けるのですが、このようにほぼ同時に仲間になる関係上、それぞれのキャラの持ち味も良く分からず、使う機会はあまりありませんでした。
・集団戦
本作最大の不満点です。
イベントリスト等の他の要素は問題があっても褒める部分もあったのですが、これだけは擁護不可能なレベルです。
・こちらに何人いてもノーマル奴隷は最大99人しか出せない
・100人を越える人員を出したい場合、貴重なロイヤル奴隷(一人で100人力)を出すしかなく、設定も別枠
・攻撃力が人数と比例してない。前線の戦闘区域でちまちま戦って減らしていくのが常なので、敵100人相手に1000人規模で挑んでも、相性悪い選択だと敗北もありえる。
・完全にじゃんけんの3すくみ状態で、聖光を使って次の手を探る以外にヒントがない。確定で相手の手が分かるために、「資源を払い続けて後出しじゃんけんをし続けるだけ」になる。
・ヒロインのスキル効果が総じて弱い。発動がランダムかつ時間の変化に対応できてないので、倍速にすると発動しない事も多々ある
・報酬がしょぼすぎる。勝つために使った資源以上のモノは絶対に手に入らない
ストーリー上でも必須なんですが、そちらはロイヤルを使わなくて済む程度の強さしかないため、ギリギリ我慢できる程度の苦痛です。
(ただ、うっかり「撤退」を押してしまうと、後1回勝てば終わりという最終戦の時であっても確認なしでイベント前に戻されるので注意が必要ですが)
無論、自由に参加できるクエストの遭遇戦はやるメリットが一切ありません。
・相手の強さによっては1000以上の部隊もざら
・ロイヤル10人、ノーマル10万いたとして、こちらが出せる最大戦力は「ロイヤル10人+99人」が上限なのでますます大規模集団戦をやるメリットが無い
(ロイヤル一人入れるかどうかで、聖光源を設置する速度が段違いなので、こんなところでは使えない)
・報酬がものすごくしょぼい
正直コレに関してはバランス調整してないのか? としか思えないくらい、開発側の狙いが見えてきません。
他の所は一応好意的に解釈は出来るのですが……。
・総評
不満点も含めて思いのたけを書きましたが、どれもこれも「もう少しこうだったらよかったのに」という思いがベースになってます。
商業作品を含めても、ここまで様々な要素を詰め込んだゲームは少ないと思います。
ただ、製作側がこなれてないため、様々な部分で不便になってしまってます。
(チュートリアルもイラストを沢山用意してくれるのはいいけど、分かりやすさと対極にいってしまってます。それならチュートリアルの内容そのままでユーザーマニュアルをHTMLで用意してゲームフォルダに突っ込んでおいてくれればいいのに)
ただ、不便ながらも手探りで色々とためし、自分なりの開発と探索をして、バトルに頭使って…というのは、近年のゲームには無い楽しさがありました。
昔ながらも不便なUIのRPGやSLGを楽しんでた人には、懐かしさとともに需要を満たしてくれるんじゃないかと思います。
次回作が出たとしたら、作る側ももっと慣れて不満部分も潰してくれるだろうから、楽しみです