人と人の間にあるもの。それはどんなに強く願っても、変わらないということはできないもので。
お互いが傷つけあい、関係を壊し、最悪修復不能になったとしても。
変わらないことへの甘えを捨て、変わることを決意する。
もしくは甘えきった自分によって取り戻せなくなってしまったことを悔み、未来の自分へ生かそうと決める。
そんな少年少女たちの不器用で不格好な物語こそがこのエロゲの本筋なのだと思う。
以下それぞれについての雑感。
攻略難易度
基本的に一キャラを最初から最後まで追い通せばいいので、キャラのルートに入ることは難しくないだろう。
しかし、選択肢については結構判定がシビアではなかったかと思われる。
基本的には、ヒロインのことを第一に考え最良の選択を提示すれば問題ないであろうが、そのあたりは注意。
システム面
そこまでよくはないが悪いともいえない。
メッセージウィンドゥの消去にいったんメニュー画面に入らないといけないのだけはどうにかしてほしかった。
音楽面
問題なし。榊原ゆいさんの唄うOP曲も物語にマッチした良曲である。
シナリオ面
前述のとおり、基本的に一人のキャラクターを追いかけ続けることになるが、それ故に共通ルートという概念はほぼないに等しく、スキップを使用することもないよく描かれた物語とするべきか、単純に長い物語と考えるかは人それぞれ。
また、2部構成になっており結ばれるまでが1部、個々の問題についてが2部となっているが、2部の出来は他の感想を描いている人が言うようにおおよそヒロインとラブラブに結ばれるゲームを想像しているものにとってはいい出来とは言えないように思う。
しかし、私が先に書いたように不器用ながらも成長しなければならない少年少女の物語として見るならば、この2部も面白く感じるのではないかと思う。
過去、「あるぺじお」というゲームの感想でも同じようなことを書いたのであるが、「純愛」、ひいては「お互いのためを思う恋愛」というものについて考える時に、ただひたすらヒロインを肯定し褒め称え、我がままなままにさせるイエスマンのような主人公がする恋愛がはたして「綺麗な物」と呼べるのであろうか?
プレイヤーとして見る第三者の我々にとって心が痛まないものばかりが私たち純愛ゲーマーが求めるべきである「純愛」なのであろうか?
前にも書いたが、これは「否」である。
他人の定義は様々であるが、プレイヤーである自分の心が痛まないラブラブな恋愛模様ただそれだけを「純愛」と呼ぶ傾向にはいささか賛同できないというのが自分の本心である。
むしろ、愛ゆえに行動するがゆえに第三者である我々を苛立たせ、不快にさせることを全くいとわずにただひたすらに二人にとって最良の道を探ること、ひいては、愛し合うことこそが純愛ではないかと思うのである。
閑話休題。
これについては物語を感情移入し登場人物として読むか、あくまで第三者として読むかにも大きく影響され、自分が後者のように楽しんでいるからこそそのようなことが言えるのであって、またこのゲームについての話で殊更に触れるものでもないのでここまでにしておきたい。
しかし、このゲームはあくまで「ヒロインと主人公が自身たちにとって最良の変化を求めた上での愛の物語」であることだけは留意しておきたいと思う。
Hシーンについて。
物語の長さも相まってか意外と数は多い。
何回かはCGや特別なシーンもなしに立ち絵とテキストのみで進行するシーンも見受けられたが、そこまで目くじらを立てる必要もないだろう。
身もふたもない言い方をすれば、普通に結ばれたカップルたちが結構な期間を持ちながらたった三回しかしないとかそういうことになってしまうゲームの方がおかしいのだから(え
また、エクストラモードにも各キャラ一回ずつHシーンが収録されており、量も質もこのようなゲームにしては十分すぎたように思われる。
その他。
ヒロイン全体を通して、そこまで発育しているような攻略キャラが見受けられないが、これは絵柄ゆえのものなのかもしれない。
また、年上キャラもいるにはいるが、正直、他の同い年キャラに劣るレベルで頼りないので、基本的に同年代か年下を攻略している感覚になるのもご愛嬌であろう。
全体。
どのキャラクターもちゃんとした成長の物語が表現されており、個人的には十分その点においては満足したといえる。
しかし、どうしても幼い感じのキャラクターは受け付けない自分としては恋鳥ととばりはHシーンがきつかった。
また、余談であるが、このゲームもまた発売当時購入を真剣に検討し諦め、今の今まで手に採ることもなかなかかなわなかったゲームの一つである。
その理由には多分に榊原ゆいさんの唄うOP曲「Fairchild」にほれ込んだことが影響しているのであろうが、地味に、初めて買ったエロゲ雑誌で特集が組まれていたゲームという意味もあったのかもしれない。
それもあって、かなり点数には思い出補正が含まれているが、勘弁してほしいところだ。
ALcotはこの作品のようにちょっとシリアスな恋愛模様を売りにしたメーカーであると個人的には思っていたし、このゲームをプレイすることによってそちらの方がいいのではないかと思いもしたが、「幼馴染は大統領」以降からはギャグゲー路線に切り替え、皮肉にもそれによって大きくファンを増やしていくことになっていった。
しかし、近日発表されたALcotの最新作は、処女作を彷彿とさせるようなタイトルであるというだけに、原点回帰というものを感じさせる。
個人的にはギャグゲー路線以降のファンが中心となっている現在のALcotにおいてこの作品をどのようなテイストで仕上げるのかは興味があるが、プレイするかはまた別の話。ゆっくり様子を見させてもらいたいと思う。