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Accord4312さんのFigureheadの長文感想

ユーザー
Accord4312
ゲーム
Figurehead
ブランド
STRONGER
得点
67
参照数
609

一言コメント

エロゲとしてとかそういうことを抜きにすれば王道のSFゲーとしては十分なシナリオだが、問題点があまりに多すぎるゲーム。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

まず、システム。
発売時期を考えればやむなし、という意見もあるかもしれないが、流石にテキストスピードの調整がないのはどうなのか。
物語をしっかり読ませたいが故の演出面での選択だったのかもしれない。
SFという、広大且つ緻密な設定が要求されるジャンルでは、どうしても説明がちな文章になりがちで、読み手を引き込むための方策というものが、よい物語を作るために必要不可欠だ。その面で、演出面でアニメーションを多用し、それっぽい演出も用いることは、いいことなのには違いないのであって、一概に悪い事であると切り捨てるものではない。
ただ、どうしてもエロゲ、ADVというジャンルの上では、その読むスピードというのは重要な意味を持つのであって。
この部分をおろそかにしてまで必要な演出というのは、どこにもないような気がする。
それに、パッチを当てないとまずロクに動かないバグの山はどうすれば治るというのか。

次に、キャラの使い捨て。
ここは主に幼なじみのシュトムだ。
幼なじみ属性、褐色、CV青山ゆかりという完璧布陣で臨み、序章では早くも主人公への好意を表し股を開くまでの大胆行動をとったにもかかわらず、主人公には行為の途中で放り出され、挙句宇宙へ飛び出す主人公に捨てられてしまうという有様。
それだけでは飽き足らないのか、彼女は後に主人公と敵対する公社の幹部クラスの直属秘書となり再開するのであるが、その幹部が倒れた最後以降、その生死を含めて全く言及されないという有様なのである。
いやはや、主人公の興味の具合から見ればこういう扱いでもいいのかもしれないが。
ただただ、購入前一番期待したキャラがこれでは私個人としては納得がいかない。
本筋とは外れた別ルートで2つほど回想シーンがあったことがわずかに救いか。

最後に、シナリオの分量について。
今作は正規ルートで26章、サブキャラ√でも13章までと、かなり長めのシナリオ構成である、かのように見える。
しかし、その実は、十分な読み応えのある章は最初の5章までにとどまり、一つ目の話がひと段落つき新しい話が切り出される14章以降では完全なぶつ切り。
追っている展開やテキストの質自体は全く悪くなかったものの、あまりのダイジェスト具合には閉口するしかなかった。
もう少しでいいから、後編の話の最初の部分、14章から16章くらいまでは分量がもっとほしかった。
おかげで、イマイチ設定に入り込むことができず、混乱したまま話を読むことになり、理解した頃にはもう最終段階だったというね……。

また、一部のサブキャラ√に関して、あまりの投げっぷりに批判が多く寄せられているようだが、私個人としてはこれで十分だと思う。むしろ、もう少し短くして正史であるトゥインの話をしっかり描写してくれればとも思ったほどだ。
SFというものはとかく、一本筋の通った大きな世界観と設定の描写が大切だ。
この話も、トゥインとの物語に重点を置くのなら、下手にサブキャラ√を置く暇があれば、そのすべての労力をトゥインとの正史に回してほしかったと思わなくもない。

総じて。
批判ばかりではあるが、声優の豪華さなどをはじめ、SFゲーとしてはまぁ及第点の設定、シナリオは確保していることからも、少なくともその目当ての人々にとっては愉しめる「物語」であると言えるだろう。
しかし、それ以外を、特に「エロゲー」としての何かをこのゲームに期待しているのであれば、それはほぼ叶えられないと言っても過言ではない。
とにもかくにも、SFとしての話以外はほぼエロゲとして褒めるところが見つからないゲームだったと思う。

今現在であれば、500円もあれば余裕で買えてしまうゲームであると思うので、ワゴンで見つけた方が、興味があれば時間つぶしに手に取る、その程度で十分ではないだろうか。

追伸 やっぱりシュトムが可哀そうすぎるよぅ。