ErogameScape -エロゲー批評空間-

Accord4312さんのままらぶの長文感想

ユーザー
Accord4312
ゲーム
ままらぶ
ブランド
HERMIT
得点
81
参照数
357

一言コメント

アメリカンコメディーを模倣し、年の差恋愛、しかもほぼ親子でのものという、とても日本の倫理観では喜劇として表現しきれない題材をこれでもかというくらいの綺麗な世界観でまとめきった、粗削りながらもその荒々しさが美しい作品。後にNG恋やパルフェなどで名声を得る丸戸氏の原点を垣間見ることができるような作品でありながら、タイトルや題材からよく抜き系のゲームと勘違いされるのが悲しいところ。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

「喜劇を盛り立てるために、シリアスさを入れる」という、カレーの辛みを引き立てるために砂糖を入れるかのように単純に見て難しいさじ加減を天性の感覚で成し遂げてしまうのは、氏が氏である所以なのだろうか。

ままらぶ、のタイトルが示すが如く、シナリオの中心は主人公の母親代わりとして主人公の面倒を見ながらも、その主人公を男として見てしまった年齢不詳の敏腕デザイナーな未亡人・藤枝涼子であるので、他のヒロインは娘の小雪を除きほぼ刺身のつま程度なので、一応は注意されたい。

ただ、そうであるとはいってもヒロイン一人一人の主人公に対する思いに差があるというわけではない。一人一人が自分の心情を語る、その言葉の重みというのは十分に味わえるのではないだろうか。

惜しむらくは、アメリカンコメディーというのはあくまで流れるようにやってくるからこそ面白いのであって、ユーザーのクリックのペースひとつで流れがいくらでも変わってしまうエロゲーという媒体でそれを模倣するのは、いくら頑張っても無理なものだったのではないかということ。
これがおそらく、主人公にボイスが付いたうえで、最初からオート再生で進む作品であれば、最大級の賛辞を送れたことには間違いないのだが、どうしてもその部分が足を引っ張ってしまったかのように思わなくもない。

このゲームを敢えて表現するなら、「空間ゲー」とでもいうべきなのだろうか。とにもかくにも、全員がそろっている空間というのがプレイヤーという画面を一つ隔てた完全に蚊帳の外であるはずの我々にとってさえ心地いいと思わせる、そのことが非常に素晴らしいゲームであったと思う。

逆に言えば、感想として事細かに書こうとすると、いろいろ悩んだ挙句、このような何も書かないような駄文が生まれてしまうのであるが。

「家族のような空間」「綺麗な空間」「ほっこりする空間」

このようなものを求める方ならば、必ずやこの作品は期待に応えてくれるように思う。

罵詈雑言が飛び交い、モラルに欠ける発言も飛び交い、銃弾にお皿に言葉のナイフに白い液体に、とにかく何でもかんでも汚いものが飛び交うこの空間は、最高に下賤である意味リアルで、決してきれいなものとは言えないのかもしれない。
ただ、それぞれの思いを知り、苦悩を知り、由縁を知る。
そのことで、どんな世界も、あなたを受け入れてくれる、そういう意味では優しい世界になるのだと思う。
何を言うでもありませんが。

推しヒロインとか・・・・・・愚問。十二分にまきいづみ時空のほんわか鈍感未亡人の空間を愉しめただけで、ボクの正月休みに悔いなどありません。