女装潜入モノ、というジャンルの作品としては、過去作に比べてその展開があっさりし過ぎている部分が多く、どうしても高い評価をすることはできないかなというのが正直なところです。ですが、過去2作品で「このタイトルを冠する作品は、このような雰囲気を纏った独特の世界観が描かれている」とまで思わせたシリーズの3作目としては、その雰囲気を見事に踏襲し、なおかつ、目新しい部分もいくつか取り入れた、タイトルを名乗るにふさわしい作品に出来上がっていたのではないかと思います。製作の限界と言わざるを得ない穴もあるかとは思いますが、シリーズを愉しめた方であれば、間違いなく損をしない作品ではないでしょうか。登場人物は全員好きですが、あえて好きなヒロインをひとり選ぶのであれば茉理ちゃんです。彼女と一緒にほえほえした人生を送るのは、きっと最高に違いありません。長文は雑多なプレイメモです。
処女はお姉さまに恋してる 3つのきら星
→待望。前作までのクオリティを維持することはなかなかに難しいところはあるのだと思うけれど、どうなるか。非常に楽しみです。
【Ⅰ 共通部分及び、細かな考察紛いのメモ】
→順当に、プレイ開始からの純粋な思いのみが書かれています。そのまま未編集なので、文章としておかしい部分もあるかとは思います。
※織女さん、順調にぶっ壊れていってますね……まるで、2人のエルダーの時の薫子を見ているようです。とはいっても、薫子の方は、頭からしてぽんこつでしたので、壊れ方もちょっと違う気がするのですが。
※美玲衣さんの方が、なんとなく話は通じそうな人物ではあるなぁ。世間知らずというか、そういうところがある可能性は否定できないにしても、少なくとも、自分の領分というのを弁えていそうな、そんな感じ。
※今回のエルダー(照星)というのは、そういう意味なのね。3人で運営する、というところに掛けているのでしょうかね。
※姉に甘える方法はわかっても、娘として甘える方法はわからない。うん、そうなのかな。自分はそんな状況にないから、まったくわからないけれど、「甘える」といっても一筋縄ではないということはわかる気がするだけに、なんとなくあやめちゃんの言いたいことも、伝わってくる気がするようなしないような。
※自分が手が届く可能性が高ければ高かったほどに、無力さが悔しさを上回る。手が届かないものであれば、自分の力が及ばないことは「ある程度仕方のないこと」であるとして、十分に納得がいってしまうからこそ、その意味で、自分に力のない悔しさを感じてしまうのだろう。その一方で、自分に手が届くものであれば、力及ばない悔しさももちろんだけど、なにより、「実は自分には手が届かないものだったんじゃないのか」という、自分の力量を見誤ってしまったかのような、そんな無力さを感じてしまうのだろう。
その感覚は、あまり努力というものをしてこなかった僕も、なんとなく、わかるのだ。
△いや、前会長の話、前しませんでしたっけ……? 後で確認しておこう。
→あやめのピアノの話も同じ趣旨。
※なるほど、補佐の話はそこで使うわけか……。まぁよく考えなくても、美玲衣だけは友達らしいメイン登場人物級の存在がいなかったのだし、モブの取り巻きを連れてくる、なんていうのも変な話だからなぁ。
→そうすると、密―鏡子、織女―美海、美玲衣―茉理の構成になってくるのだろうか。
※人の好き嫌いは、理性だけで解決するものではない。なるほど、その通りでしかない。だからこそ、好き嫌いなんてまじめに考えるだけ無駄、という一つの精神論が成立してしまうのであるけれども。
△あなた、結局1つ下なの2つ下なの、どっちなの?
※茉理さんかわいい。そしてそれを見た美玲衣・織女の反応が予想通り対照的で、かわいい。
△Ⅳ-B、途中で一部背景が切れるの、ミスでしょ……
○あぁ、紫苑さん、ちゃんと瑞穂と過ごした日々を自分なりに昇華できているんだなぁと、しみじみ。
○花ちゃん、いい子だなぁ……。相変わらず人外レベルに聡い集団となってしまう嵩夜作品の中では明らかに普通な女の子なんだけど、それなりにしっかりと悩んだうえで、しっかりと自分にできることを精一杯しようとするんだ。そりゃあ、上級生にも同級生にも愛されるわけだよ。
○そうやってバレんのかーい! たしかに、今回は協力者がヒロイン内には少なかっただけに、もうちょっと何かあるかなぁ感はなくもなかったけど!
→そして正直、美玲衣にはその性格や容姿も相まって、2人のエルダーの淡雪のようなイメージを抱いていたところもあったから、もうひと悶着個別に入ってから何かあるのかなと考えてはいたのだけれど。これはこれで、どうやって行くかは見ものなのかもしれない。過去作とは違い、「演劇の主導者」が味方になるというパターン、どうやって描いていくのか、気になるところです。
→いや、それでそっちにもバレかけんのかーい! けっこーガード甘いですよね貴女たち……いいぞもっとやれ()
→今回の作品、おとボクシリーズにしては珍しく、主人公がそこまで完璧超人ではない。メイン核となる人数を増やすにつれて、だんだんと支え合うことを重視する形になっている、というところなのだろうか。今作の密までくると、流石に「ちょっと周りよりできる、想像の範疇の天才」に留まってしまっているところもあって、シリーズの主人公としては少々能力に欠けている、軽率であるという部分があるのは否定できないところではあるのだけれど。2人のエルダーでも人間として全くできていない千早を何とか描き切った製作陣だ。これさえもうまくシナリオに昇華して、共闘とでもいうべきか、そういう形に仕上げてきていると信じるばかりだ。
→もう、共通ルートで解決してしまおうって話ですか、そうですか。こんな書き方ではなんか、文句持ってるように見えなくはないですけど、ぼく、これはこれで、面白いなって思ってます。
→それに、ぼくはこういう展開、本当に大好きですからね! 弱いんですよ!
○「KawaiiMadoka-chan-jayo」……円さんホントいいキャラしてますね!
△一度一部だけでもシーンを見てしまうと、全部CG差分が解放されている場合があるというのは、どうにかならなかったのですかね……
※美玲衣さん! 顔! 顔!!!
→この3人、反応が三者三様でいいよなぁ…… 常にわくわくキラキラな感じで見ている茉理に、基本は冷静に干渉しながらもホラーな部分では殊更に怯えている美玲衣、そして基本的に俯瞰的で無表情に近い様子で見ている密……みんなちがって、みんないい。
要するに…………尊い。
※今のところの、疑問整理
・花が学園に入った理由は?
→この寮の生徒の構成からして、花は出自が不明確な側であるし、そもそも、途中編入組であるにもかかわらず、特段にその理由が見受けられない。途中退学者も出るなど、何らかの事情でもなければ入ることさえも難しいこの学校に、母親がOGという単純な理由だけで、入ってきたりするものなのでしょうか?
→その辺は特に何もなし。まぁ、結構難癖的な疑問ではあったし、仕方ないところではあるのかも。そして、理屈でこそ求めたくなる理由であるものの、こういうものは結局、だいたいからして感情で決めてしまうようなものでしょうから、公式に言われている以上のことはないのでしょう。
・迫水姉妹の学年の謎
→ほぼ解決。おそらくだけれども、親が厳格に手続きをし過ぎた故に、双子であるにもかかわらず、日付をまたぐ誕生日となり、なおかつ、学年も分かれる羽目になってしまったのだろう。どこかではその点を矛盾として苦言を呈する人もいた気もするが、まぁわからなくはない理由だ。現実にあるか、と言われればほとんどないのであろうけど。
→この謎というより、この姉妹に大きく根付くのは「お互いに対する思い」とでもいうのだろうか。すみれはとんでもないピアノの才覚を有するあやめが、ただ単に「妹」として自分を慕ってくれていることに、どこか申し訳なさを感じている。他方で、あやめはあやめで、几帳面で対面的に非の打ち所がない姉であるすみれを心から尊敬し、そのようなことができない自分を貶めてしまっている。
こんな仲もよく、容姿も似通っているにもかかわらず、歪な感情が交錯している姉妹を、この物語はどんな塩梅で紐解いていくのだろうか。
・茨鏡子がこの任務に従事する理由
→密との会話等からしても、ある程度密よりも年上であること、本来であればこのような学園生活を送る年齢ではないことは明らかであろう。そうすると、そんな彼女がこのような任務に関わる理由は何なのか。単に会社の職務と考えればそれまでかもしれないが、任務であることを知る密にまで実年齢を隠そうとする当たり、なんとなく、そのあたりにも理由がある気がするのだ。
・仲邑茉理の存在
→ここ(一つ目の選択肢)に至るまでに、彼女について明確に語る部分が存在しない。2人のエルダーでいう優雨のような存在(芸術の才覚、という意味で)であるように思われる彼女のルート、そんな単純に、音楽の話をするというだけで済んでしまうのであろうか、という疑惑。
→もっとも、音楽に対して無理に向き合わなくていいというスタンスを両親はとっているようなので、家庭的な問題はあまりなさそうだ。
○1回目は、のんびり物語を眺めつつ、花か、美玲衣のルートにたどり着けたらいいなとは考える。明らかな本筋であろう織女が独特のルート構成をしているのではないかという私個人の考えからすれば、極力織女に与する選択肢は避けるのが無難だろうか……?
→できれば、花に行きたいなぁ……
(この間、大量に選択肢の攻略に関するメモが残っていましたが、今更その点のメモを残すというのも何か違う気がするので、省略します。)
【Ⅱ 個別感想】
伊澄花 75
→みんなの可愛い玩具……もとい妹ちゃん。すっごくかわいいいい子なので、こんな子を騙すなんて罪な主人公だ断罪してやる!!
→本当に主人公断罪してやりてぇ……歴代の「妹」に恥じない本当にいい子やでぇ……
確かに、個別としては特段のイベントがあるというよりも、花ちゃんの今後を描くために必要なことを描いていたというだけではあったけれど、そんな何気ない成長の描写こそ、「妹」ヒロインらしい変化を描ける部分なのかなとも思うのです。いやはや、とにもかくにも、花ちゃんはとってもかわいかった。それでいいではありませんか。
迫水すみれ・あやめ 70
→理性的な姉と感情的な妹の凸凹双子姉妹。理性的に加えて生真面目すぎる、妹愛が過ぎる姉がつぶれてしまいそうな展開が描かれるのかなという予感はするけど、どうなることでしょうか。
※ちょっと、展開が重めかなぁとは思う。今までがどちらかといえば人と人、という話で済んでいただけに、お金が絡んでくるようになるというのは、ある意味でお嬢様学校らしい話ではあるけれど……
※そwwのwwwばwwれwwwかwwwたwwww
→そwwしwwてwwwwこwwのww姉www妹wwww
△仕方ないといえば仕方ないけど、せめてシーンが前後する場合くらい修正テキストがあってもよかったんじゃとは思わなくもないんだよなぁ……
→というより、デートテキストもまるっかぶりかいな……
※それエピローグでやるのかよw
→花のルートに比べたら、確かに個別でやるべきことはやっているようには思うけれど。その分に、テキストかぶりとかそういうところが目についてしまう所謂「雑」なルートであって、あまり褒められるルートではないように思う。展開だけを追いかければいいわけではないというのは、メーカーの作品の今までの系統からしても重視しているところではなかったのだろうか。共通√等、あくまで物語に読み手を引き込まなければいけない部分で勇み足になってしまう結果として生じてしまう多少のテキスト矛盾程度であれば、あまり気にすることもないのかなとは思うのだけれど、これは到底褒められたものではないのかなと。
→点数はこの憤りもありつつも、雰囲気という部分だけは何とか維持してくれていたことに関して、最大限の便宜を図ったつもりです。
仲邑茉理 80+1
→本作のぽえぽえ枠。でも多分、人間としては存外出来上がっている子なのだろうと思ってる。
※また来てるwwwwww
→そしてそこから、いい話にもっていくんだなぁ……。というか、密が何もしなくたって、茉理はちゃんと自分のことを考えて、ちゃんと決断自体はできているんだなぁ。やっぱり、できた子だわ。
○今まで見てきたバレ方のパターンの中で、今回は一番好きなバレ方だと思うwww
→先までの2ルートに比べたら、個別でしっかりヒロインのことを描いていたので、その意味だけでも十分に面白かったと思います。さらには、茉理ちゃんという、ふわふわはしているけれど、自分についてしっかり考えている、ある意味で年不相応な女の子を眺めることができた。このことも、このルートを面白いと思えた大きな理由なのだと、ぼくは思うのです。
できるなら、この子を自由奔放に養育したいですよね……お父さんって呼ばれたいよこういう子に。
○EPが尊かった……これだ、これが見たかった……
正樹美玲衣 78
→割と共通で話は出ていたような気はするけれど、彼女自身の問題はあまり出てきていなかった気が。なので、このルートには、そういう彼女の境遇らしい話が出るのではないかと、正直期待している。
※お嬢様学園の、お嬢様らしくない生い立ちの少女。こういう話が、こんな形で話として再び出てくることになるのか。素直にその構成力の高さに対して、賛辞を贈りたいくらいだ。
○やや簡潔に過ぎる展開のような気はするけれど、ここはいちいち書くべくところでもないような気はする。あくまで、お嬢様学園のお話として描きたいのであれば、このような展開は必要でこそあれども、雰囲気にそぐわないものであることには間違いがないのだから。
→旧態依然な「お嬢様」が苦手で、織女とも反目していた彼女に待っている展開が、「深層の令嬢」なお嬢様でさえ今時妄想さえしないであろう、夢物語とでもいうような白馬の王子様的な展開というのは、なかなかに趣深い、とでもいうべき面白さがあるように思う。
→展開自体は確かにあっさりしているけれど、美玲衣さんらしいといえばらしいお話で、僕としては好きな物語だったように思います。先にも書いたけれど、美玲衣の設定を皮肉っているかのようなシナリオ展開は、いかにも「キャラメルBOX」らしい作品とでもいうかのような雰囲気を感じられて、とても楽しかったように思います。
やっぱり、というわけではないですけれど、「おとボク」というシリーズには、こういうちょっと反骨心みたいなのがあるタイプの「活動的な、ザ・お嬢様」っていうヒロインが必要不可欠なんだなぁって、そんなことを思ってしまいました。だって、かわいいんだもの、ツン子ちゃん。
茨鏡子 75
→一応、今作におけるサポート役の立ち位置。ところで、サポート役のヒロインは主人公に対してどこか冷たいという流れは確実なんですかね……?
→気づいたら黙々と読み進めていて、あんまりメモを残す余裕もなかったのだけれど。先に攻略したヒロインン達に比べれば、かなり「お金持ち」のお話として作られていたお話になっていて、今までの穏当な雰囲気とは打って変わった展開になってしまうのは、個人的にはありですが、賛否両論なのかもなぁと。
ただ、同時に。そこまでしなければ素直になれないのか!という位に素直じゃない、とってもかわいい「お姉さん」を短い文量ながらも堪能できる、というところは、とっても良かったのではないかと思います。
風早織女 78
→今作のメインであろうお方にして、多分一番共通で語りつくしてしまって個別で話すことがないヒロインなのではないかというお方。
→なんで僕は、貴子さんのルートを頭に過らせていなかったのだろうか。今までは人気を一手に担う主人公に対するやきもきだったそれが、愛しい人が異姓に好感を持たれていることに対するヤキモチに変わっていくさまを丹念に描く。それだけで、ルートとしては十分だったということを、貴子ルートで学んだのではなかったのか。
こんなに可愛くやきもきしてくれる、自称破天荒期なお姫様。可愛くないわけがないでしょう。
→そして、何事にも期待に応えようとして受け身である主人公だったからこそ、これだけのアクティブお嬢様が生きたというべきでしょうね。始めた当初は、まりやとは違って高貴なままにアクティブという感じで、シリーズの名前を冠する作品のヒロインとしてはちょっと活動的に過ぎやしないかとは思っていたけれど、全2作の主人公と比較して大人しい今回の主人公とのバランスを考えれば、本当にベストマッチ。
メインヒロインの貫禄をしっかり見せつけられました。ありがとうございました。
おまけシナリオについて
→ボイスはないが、両方とも、サブヒロインの描き切れてない部分を的確に描いているので、読みごたえは十分。日常を描くという形に近いものであるので、細かいことを感想としてかけないのがもどかしいが、とにかくは、作品を支えたサブヒロインの魅力を堪能できる、とても良いものでした。
ミニゲームは、ボクはこういうのが苦手なのでイージーですら大変でしたが、楽しいと思います。戦略性がものをいうと思いますね。
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点数
共通√80
全体 82点
→完全に全体の空気のみを考慮してつける、直感的な点数です。どうにも私は、個別の平均で単純に点数をつける、というものに、この作品は当たらない気しかしないのでして。
→信者得点と言われようと、何だろうと、それで結構。私にとっては、舞台が変われど、またもう一度、あの独特な雰囲気を味わうことができただけで、十二分に満足です。