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Accord4312さんのあざやかな彩りの中で、君らしくの長文感想

ユーザー
Accord4312
ゲーム
あざやかな彩りの中で、君らしく
ブランド
プレカノ
得点
73
参照数
416

一言コメント

まさに、低価格帯なりの分量に合わせて、「男装少女」というジャンルの王道を描いた作品という言葉以外に、この作品を形容することができる言葉が見つからない作品なのだと思う。平易さをに辟易し、単調などうしようもない作品であると評することについても、わからなくもないのだけれど。私個人としては「王道な展開である」ことが特に重視される「男装少女」という属性について、駆け足気味ではあるものの、順を踏んで描いてくれている作品であるので、一定以上の評価をしてもいいなとは思える作品でありました。最近減りつつある「王道な男装少女もの」としては、好きな方には一見の価値自体はあるのではないでしょうか。長文部分はいつもの簡易総評と、いつも以上に簡易なプレイメモです。書いてあることは一言と大体一緒です。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

1 総評
 ロープライスであることを加味したとしても、簡潔に過ぎる作品であることは、否定できないのだと思う。ここまで短いと、ヒロインの属性的なもののひとつであった「嫉妬深い」などは到底その設定を発揮することはできないだろうし、主人公と登場人物の二人さえ描ければそれでいい、という風に描くとしても、流石に他の人物を描く隙間がなさ過ぎて、片手落ちになってしまう。
 ただ。自分の行く先に悩む可愛いかわいい男装少女が、主人公というイレギュラーな存在に出会い、本当に自分がほしいものを探し当てようとしていく。そんな「秘密を抱えた男装少女」というヒロインを登場させるにあたって、もはや王道ともいうべきに定着したその流れを、時流に流されることなくメインに据えて、描いていること。それだけで、この作品は、近年様々なメディア展開のいずれでも勢いを落としつつある「男装少女」の可愛さを見せつけてくれるものとして、一男装少女好きとして称賛するのに十分な作品であったと、そう思うのだ。
 
 ちょっと短い部分は否定できませんが、それでも「男装少女」という属性を求めてプレイするのであれば、十分に楽しむことができる作品だったと思います。

 もう少し、またこういう王道な「男装少女」という流れが増えてくれないものかなぁ……
こちらのジャンルも好きなので複雑なのですが、「男の娘」というジャンルが登場して以降、どうにもそちらの方が扱いやすいうえに、話を膨らませやすいからか、王道らしい展開が確固たるものとして確立されてしまっている「男装少女」のジャンルは、どこか食われている気がするんですよね……

2 プレイメモ部分
 といっても、ほぼ白紙に近いんですけどね……

――――――
あざやかな彩りの中で、君らしく
→男装少女と聞いたので! 聞いたので!!

※この子、いいキャラしてるな!!!!
→△でもその一方で、サブキャラがちょっとネタに振りすぎてて寒いかも……人となりもわからないうちからこういうキャラされると、流石に嫌悪の感情からスタートしたくなるんだよなぁ。

※この子らしさを追い求めるという、そういう話に帰着していきそうなのは間違いないんだろうけれど。この子が何を本当は求めているのか、それが何であれ、どのように描かれるのか。ただただそれだけが気になって、クリックをする速度だけが早まってしまう。
→よくもまぁ、ここまで、簡潔明快に描いてくれるものだ。これが文章で勝負をする小説であったなら、「何を言っているか」の一言で一蹴されてしまうところ。
でも、この作品は。「エロゲー」だ。「ADV」だ。
音が、絵が、声が。人間の五感のほとんどに働きかけるその一つ一つが絡み合って、単調な文字列を、魅惑的で誘引力の強い、渾身の叫びへと、その姿を変えていってしまう。それだけでは素人が祝詞を聞いているかのように、何を言っているのかその意味が分からない、というようなものでさえも、よくわからないままに、ありのままに、読み手の心に響かせてしまうのだ。
この作品をもってこのようなことを語るのは「井の中の蛙」に過ぎないのであろうけれど、あえて言うのであれば。
「芸能」とは、こうして、相手の幾重にも積み重なるバイアスを、演者の技量ただ一つだけで貫き通して、その言葉を伝える、そんな神勅のような、神秘的なものなのだろう……