とてもおいしかったのだが、全体的に物足りない、そんなバランスを思わせる料理のような作品。
『魔女の死んだ日』という出来事以降エール系とウォルフバーグ系という、民族間の争いが激化する国の中で、ウォルフバーグ系の少年である主人公とエール系である少女が出会うことによって始まる物語。
ヒロインは四人であるが、その四人も立場的にそれぞれ大きなものを背負った少女たちであり、その少女たちで織りなす音楽団はまさに異形ともいえるだろう。
シナリオとしては音楽祭にこのメンバーで出よう!という話を根幹にしながらもヒロインの背景、さらにはそのヒロインが所属する「派閥」に迫った話を読んでいくことになる。
ぶっちゃけて言ってしまえば、音楽祭はついでである。
音楽祭が終着点になった√が一ルートしかなく、2√ではその描写もなされないことからそう述べるしかないであろう。
CG面は不安定。特に一枚絵だと絵のばらつきが色濃く見える。そこまで普段は気にしない自分でもそういうレベルである。
システム面や色々な部分はお察し。正直言って全時代のものと言っても差し支えないレベルだ。
しかし、よほど最近のものしか触れていないというユーザーでもない限りは特に不満を感じるほどでもないだろう。
その一方で、音楽面はよいものであった。
適度に異国らしさを感じるBGMは世界観に入り込ませてくれるBGMとしては十分すぎる役割を果たしていただろう。
今回はそこまで長くレビューを書くつもりではなかったので、ここでまとめるならば、独特の世界観を生み出す魅力的な登場人物とテキストは素晴らしいものがあったが、CGが不安定であったり、物語全体のボリューム不足、一部キャラ√の展開が物足りないなど色々と惜しい作品だった。
処女作であるとのことなので、今後注目していきたいメーカーである。
推奨攻略順
ティファ二ー→カヤ→サーシャ→リオ→ユイナ
余談)
以下は各シナリオについてのネタバレ感想であるので、注意されたい。
ティファニー√
予想外に普通の物語であった。
異世界的な話ということで油断していたが、「突如転校してくるお嬢様ヒロイン」という定番キャラであることを忘れていた故か。
サーシャ√
少しずつ序盤から映し出されていたこの世界の闇を見始めることになった。
それはさておきすごくかわいいヒロインだと思う。
でもあのフェラシーンは怖い。
リオ√
これも定番と言えば定番なのか。「幼馴染キャラは不遇」というのを体現している。
しかし、その展開のエッセンスは異世界らしさ、もといこの対立多き世界の構図をもっとも的確に表しているのではないか。
個人的にはルートが一番ぶっ飛んでる。でもかわいい。
このキャラが好きな方はユイナ√で私のように苦しむことになる。まぁいろいろと。
ユイナ√
ご都合主義万歳なtrue√。
物語で描かれるアホな子って、ホント芯が強いのよね。
その芯の強さを克明に描けるだけで、もう他のことって気にならなくなっちゃう。
きっとそういう私はこの先もホイホイ人に騙されるのでしょう。でもそれより人を疑う人間にはなりたくない(関係ない
他のルートで描かれない物語の全貌を一気に語る(割合的にユイナ7:その他3くらいで)ので、どうしても語り部のような文章が多くなってしまうのは致し方なしか。
この物語のボリューム不足を感じたのは主にこの部分である。
語り部のような回想部分を語るのに終始してヒロインの話が割とおざなりになっている感が否めなかった。
総じてお話としては大変良いものであっただけに、本当にボリューム不足が悔やまれる。