瑠奈66碧74雪乃73+3叶88+1摩耶75+1。等身大の初恋物語としては及第点。ヒロインの設定上の好みが如実に内容の好き嫌いに影響してくるという意味でも、まわりの見えない初恋ゲーなのかもしれない。(2015/03/07修正。無料アペンド攻略完了につき)
もっとも、その周りの見え無さが主人公の言動にも多分に現れており、これが物語の内容としてはあるべき主人公かもしれないと思いながらも、どこか受け止めきれない自分がいるが。
そんな本作だが、一言の方に記したとおり、プレイヤー自身が主人公に自分を投影し、初恋を追体験するとでもいうのか、昨今には珍しい非常に無個性な主人公を軸に据え、ヒロインたちと愛を育み、時には感情をぶつけ合いと、お互いの距離にもがく姿を延々と描くという意味で、「初恋」を主題とした「ある種」良質な物語と言えるだろう。
そのことによって不快感を得ることがあったとしても、それは必ずしも物語のマイナスではないはずだ。私たちがこの物語を好くか好かぬか、ただそれだけでしかないのだから。
とまぁ、皮肉ってみますが、実質この作品はヒロインの好みがすべてだと思います。
第一印象で、「あ、この子かわいいな」と思ってしまえばそのヒロインについては間違いなく高評価を下したくなることでしょう。ヒロイン可愛いで突き動かされる物語なので、ある種当然というべきなのかもしれませんが。
そう、たとえば、私は全く受け付けませんでしたが、瑠奈の思慮の浅さ、空回り具合はある意味では年下で、「大好きなお兄ちゃん」のために精一杯背伸びをしようとしている女の子の言動そのものであり、それを「無理しなくてもいいよ、ありのままでいいんだ」と優しく言ってあげるのが最高のカタルシスというお兄ちゃんなユーザーにとってはそれは完全に高評価の対象でしょうから。
もっとも、他の方も言及されているように、摩耶に関してだけはどうともいえない感情があるのは事実です。
ネタバレをためらうことなく書くならば、元子役であり、「私という存在の意味を見出したい」とでもいうような夢を描いていた摩耶は、なぜか女優へと復帰することになります。
そのために、愛する彼氏である主人公や、仲間たちのいる星岡を捨て東京に行ってまで。
「すべては、主人公という大切な人の思いを叶えるため。彼にとって、必要とされる彼女であるために、彼の求める『鴇崎摩耶』であるために――――」
とでもして、摩耶の願望は一応達成されたのだ、と、ライターや製作陣は思っていたのかもしれません。
しかし、それを描くとするならば、いささか描写不足が過ぎるでしょう。
本作は、約一ヶ月の学食向上委員会結成までを共通√とし、その後の活動期間を個別√とする、かなり長めな尺をもって製作されています。それゆえに、何の気なしな部分でさえ大ボリュームで描くことができ、その分に登場人物たちの心をつづることができていたことから、このような良質な物語が生まれることになったのでしょう。
ただ一点。
この摩耶√における、摩耶の女優への復帰については、全く言及されていないのです。
碧√では、母親との約束を守るため、そのために協力してくれる父のために敢えて別れを選び、葛藤する碧の複雑な心境が、しっかりと彼女の言葉によって描かれていました。
瑠奈√では、幼馴染のお兄ちゃんとお姉ちゃん、その二人の仲の良さをずっと続いてほしいと願いながらも、自分にも振り向いてほしい、それで結果的に仲の良さを引き裂いた後でも、純粋に、戻ってきてほしいと願う、瑠奈の幼稚で無謀な願望への執着が、しっかりと彼女の言動に現れていました。
雪乃√でも、自分の愛する主人公が失われることと、自分の感情の天秤を、しっかりと彼女の口から、主人公との対話という形で描いていました。
叶√では、周囲に気を配ることができるはずの少女の、優しすぎるがゆえに自らが犯した罪への懺悔ゆえに周囲の本心に気が付かず勝手に苦しむ姿が、周囲の想いとの対比で描かれていました。
それだけの重量ボリュームをもってして他√では描かれていた、そのことに対する本心というのが、摩耶√には描かれていないような気がするのです。
もちろん、すべてを機械的に描くことは完全に良しとされることではありませんし、余韻をもって読み手に暗示させる、という表現の形をとることも、全く批判されることはありません。
ただそれでも、決定的な描写として、「なぜ、摩耶はこの道をえらんだのか」という部分が、個人的にはほしかった。
一応、エピローグでは女優復帰後の摩耶と主人公の一幕が描かれていますが、あれだけでは全く足りないでしょう。
この物語は先ほども言った通り「初恋物語」なのです。世界が終わるだの苦難を超えるだの運命線からは逃れられないだのといった、一つ一つを明言することが文章量や表現の幅の問題などからはばかられるような、重厚な物語を紡いでいるわけではないのです。
この部分を、余韻という形で逃げてほしくなかった、しっかり紡いでほしかった。
たとえ万人が納得できないような破たんした理屈であったとしても、「摩耶の口から語られた」という事実さえあれば、少なくとも私はそれを受け入れたことでしょうし、摩耶√全体をもう少し高く評価したと思います。
普段は作品に対して「ココはこうしたほうがよかった」などという、展開に関しての具体的な言及を私はしないと決めています。
これは正直なところ、私自身が作品を読む際に、物語の出来というのはあくまでその話がどのように完成しているかであって、自分の好みを言及するものではないと思っているからです。(もっとも、これは言及についての話であって、結局はその物語を好むかという感情によってここで点数という形で評価をつけさせていただいているのですが)
そのため、多少不快な展開・言動であったとしても、製作陣がむしろ不快に思わせるように作っているのだな、と判断できそうな時は、その不快さもある種作品の製作陣が作りだしたかったものだということで、自分の中では加点的な評価の対象としているのです。
それでも、この作品の摩耶√に対してだけは、信念を捻じ曲げてでも言及したかった。なまじ摩耶√がそこに至るまではキャラの好みもありほぼ満点近い評価を突けようと考えるレベルの出来だっただけに、最終的な着地点に対する異常と言えるまでの落胆がそうさせたのかもしれません。
他√については、もともと好みでなかった瑠奈を除けば、評点の通り十分な出来であったと思いますし、不快に感じるところはあれど、一つの初恋物語として受け取ることができたように思います。
主人公の空回り具合も、いい意味で初恋を描いているように見えますし、反省したようで同じ過ちを繰り返すのも、初めてのことに取り組んでいるためどこか完璧になれない等身大さを現しているようで、ちょっと首をかしげこそすれど、顔をしかめるほどではありませんでした。
中でも、叶√に関しては、ほぼ満点近い評価を付けたと言ってもいいでしょう。
大好きなバスケットを諦めざるを得なかった主人公と、諦めなくてもいいのに空回りして諦めようとしている叶のその対比が非常にうまく描けていたと思いますし、自分がバスケットを同じく人間関係から辞めざるを得なかった立場としても、大好きなものを続けられるのであれば続けるべきだし、大好きなものを続けている愛する人というものを見る為ならばどれだけでも鬼になれた主人公に非常に共感してしまいました。
エロシーン的にも、ビブス(ユニフォームと言ったほうのがいいのだろうけど、どうもこの言い方の方がしっくりくる)姿でのエロシーンがあったことや、大好きなフェラシーンが多いこともまた、高評価の対象です。
同じエロシーンという意味では、雪乃もフェラシーンが多かったのでシーンは大変重宝させていただきました。
長くなりましたが、総じて見れば悪いゲームではないですが、どうしても摩耶√のがっかり感だけは目立つ、そんな感想になってしまいました。
先のことが少しでも反映されていたならば、叶√ほどではないにせよ、摩耶√も恐らく満点近い評価になったのでありましょうが。
どうにもその部分が悔やまれてならないです。
(2015/03/07追記)
公式サイトにおいて、雪乃、叶、摩耶の3人については無料の追加ストーリーがあるようなのでプレイしました。
どのルートもヒロインフルボイス&Hシーン3回と、無料配布のシナリオにしては怒涛の量。
元々ファンディスクとして出す予定だった云々などの噂話も聞きましたが、これだけの分量があれば満足と行ったところです。
特に、雪乃のアペンドシナリオは本編の追加&補完としては完璧と言っていい。
これを最初から本編に含めていてくれたのであれば、もう少し雪乃の評価を上げてもよかったのに。
逆に、やっぱり摩耶はしっくりきませんでした。
上記であれだけ否定してやった女優復帰という結末。
それをアペンドシナリオではなかったことにして、普通に学生生活を送っているifストーリーを展開しているのはいかがなものか。
公式でも正式にあれはなかったことにとでもしたいのだろうか?
とにもかくにも、ブレブレな方針を見せられているようで酷い。
ただ、相変わらず萌え要素の塊のような摩耶のキャラは健在。本作一デレデレしてるキャラの座は恐らく揺らがなかったと思います。
叶に関してはいい意味で可も不可なくといったところ。
大きく加点するべくもないですが、減点の余地もなし。アペンドシナリオで「追記」するシナリオとして、過度に本編に干渉せず、ヒロインのかわいさを重視したシナリオだったと思います。
浴衣Hもエロかったですし、お口のご奉仕も相変わらずでした。
と、以上をもって本編の点数に加点。
この三人のうち一人でも好みのキャラがいるのであれば、ぜひともアペンドデータを当ててプレイしていただければといったところです。
(以下は文字増やしとも言えるようなプレイ時のメモをそのまま貼り付けただけです。横の得点は、総じてもう一度見直す前の√終了直後時点での評点になります)
共通
△演出が冗長
◎雰囲気作りは悪くない
藤川瑠奈 68
・わがまま、思慮が浅い、その結果、主人公も、ヒロインも、周りのすべてをぶち壊す。ただ、それゆえの、等身大さ。
△やっぱり妹キャラ好きじゃない。
→好きじゃないけど、話は無難に王道。
→展開運びの骨組みからして鬱陶しく、イライラが募る構成をあえてぶれることなく立て切ったことで終わりがある種リアルに募っているのでは。
真加部碧 77
お嬢様、という感じを設定のみにとどめた、かわいい人。
志と、今の思い。通常の恋愛ゲームであれば、後者を何とかしてとらせようとするものだが、本作はしっかり「初恋」物語として、恋ばかりでは終われない現実と、思いさえも恋ばかりでは解決に向かわない難しさ、恋の前にすべてを投げ出したくなる諦観、そのすべてと向き合い、人生としての糧とする初恋、を描けているのではないだろうか。
森野雪乃 74
☆「転げても起き上がり方が格好良ければ、それは格好いい男なんだから」瑠奈、いいこと言うじゃん
☆近すぎても見えない事がある。慣れてしまうことで見落とす事がある。言葉にしないと、伝わらない事もある。
〇少女漫画に影響され過ぎた、というべきか。それを掴みとれるだけの信頼と愛情と器量があった。
→とは言えども、個人的には好かない「愛に『依存』という名を付け、それを悪としている」物になっていた気がするのは何とも。依存は確かによいことではないが、確実な悪と銘打って感情にふたをすることは、非常に合理的に見えるものの理性的過ぎて、どうにも「噺」感を演出してしまうように見える。本作は少なくとも「等身大の初恋」を求めているのであるから、ここまで理性的なヒロインは必要なのだろうか。そういう意味では、マンガ的過ぎる、とも言いたい。
→個人的に、途中の盛り上がりは幼馴染設定を生かした最高潮。主人公が批判されるようだが、これはそこまででもないような気がする。
→最後であえて色ボケでハッピーに魅せるあたりが、個人的には好印象。もちろん、元鞘で終わらせた方がなんとなく高揚感と共に終わることができるのも理解できなくもないが、この手の作品に必要なのはこのような初恋の成就なのではないのか?
月島叶 86
〇原付免許wwww原付wwwwなんでノリでとらされるwww
☆仕事+初恋って感じ、なんかすき
☆☆期待ゆえの、重圧。重圧からの、最悪の離脱。その場のテンションで解放を求めるが故に何の気なしにやってしまったことは、優しい少女に罪悪感として突き刺さる。
→☆☆☆なんだこの主人公、ちゃんとわかってるじゃん。結構ルートがひどいと言われるから、何をやらかしてるのかと思いきや。彼女のことを考えて選択しているんだろうなぁと思う。ある意味で、先の雪乃ルートと正反対だが、明確に駄目にしていると分かってしまう分、共感はできる。もっとも、自身が男で主人公側であることにその一因はあるかもしれないが。
〇「俺も、こんなチームだったら、バスケを続けていたのかな?」このセリフに何だか、共感する。同じ、バスケットを部活の絡みで諦めた人間としては。
※長年のトラウマに悩む人間の気持ちが、一日のそこらのきっかけで治ることに違和感を持つ人が多いし、実際ある意味間違いではない。ただ、逆に、一日で何か憑きものが堕ちたかのように解放されることが現実にはあるものだ。
※フェラ多い&ビブスでのHとか完璧じゃないですかありがとうございますありがとうございます
鴇崎摩耶 79
・あれー、アプローチが露骨な気がするんだけど、コイツちょろいんじゃね?www
・「よろこべ変態」おかしいな、どうしてこんな言葉でうれしくなるんだろう?
※必要とされなければ、ごみ同然の世界。その世界で幼少を過ごした人間が、必要とされることを目に見える形で渇望することは、ある種当然なのかもしれない。
〇話の世間的な重さで言えばダントツだろうが、特段他に比べれば話が重いように見えないのは、摩耶も主人公もどこか前向きだからであろうか。同じ解決できない、戸惑うにしても、前を向こうとして戸惑うのと、向くべき方向さえ分からず戸惑うのでは明らかに異なる。
〇これはどうなのか、確かに、摩耶は幸せになっているのかわからない。ただ、どうなのだろうか。彼女が求めたことが、全くなされていないとは思わない。でも、どうしても。この展開は設定に引っ張られた結末ありきの物語にしか見えないのだ。摩耶の女優に対する未練という意味では作中の描写は弱い、本当に弱い。そこまでが素直に完璧だっただけに、女優復帰を選ばせるのは本当に残念。
→傍論ではあるが、Backstageの上山ゆとりの結末と対比すると、その差がありありと出る。どちらも、自分というものをアピールしたい存在であったが、何よりも大切な人、主人公に対してアピールがしたいヒロインであったはず。それが、一方は芸能界からの潔い引退を選び、一方が逆を取る。どうしてだろうかねぇ。
アペンド追記
森野雪乃 +3
いやもうこれ完璧。ここまでやってくれたらもう俺両手上げて降参するしかないわ。Hシーンの数も段違いだし、主人公もしっかりしてる。何を責めるとこがあるっていうんでしょうか。
鴇崎摩耶 +1
結局なかったことにしたいんだね、女優エンド。それだけで既にマイナス感情が止まらない。なら猶更そんなことをしなければよかったのに。
☆「だーいすき」なにこのいきものかわいい
→やっぱり、なんで原作ルートをなかったことにするかのような結末にしたのかが意味不明になる。しかもこれ、同じライターが書いたのかしら、書いたのであれば芯がブレブレだし、違うのだとしたらさすがにそれはどうよってなる。
月島叶 +1
無難に完成されているという印象。ファンディスクとしてこれが単品で出ても及第点だろうし、無料アペンドというのならなおさら。