幼き頃の、一つの出会い。そこからちょっと時が過ぎてから、再び出会った者同士が冬の田舎町で見えたとき、どんな話が始まるのだろう。――という期待を持たせるだけ持たせて、何も動かないだけならまだしも、動いたとしても全体的に尺不足でイマイチ伝わりきらないというのが、何ともこのゲームの評価を難しくさせる。個人的に推察するに全く話の筋としては(ごく一部のルートを除いて)悪くなかったと思われるだけに、その部分はモロに「(更迭)」の煽りを受けてしまったことになるのであろうことが、悔やまれる部分と言われればそうなのかもしれない。長文部分は簡単な総評とメモ書き。
というわけで、冬空の下、なにかが起こると思ったんですが何も起こらなかった作品でした。
いや、最後にちょっと起きるんですけどね。起きるのが遅すぎて、別に悪いことはしてないはずなのに白い目で見ざるを得ないようななんというか。
まずはともかく、中身についてですが。
なんだかよくわからないけど不思議なことが起こった面々を対象としつつも、あくまで面々のパーソナリティに終始した√展開を目的としている話とでもいうべきであろうか。
はっきり言ってしまえば、すべて終わった後でもそうとしか思えないくらいに、全体的に描写が淡泊に過ぎるのだと思う。
そして、描写が淡泊であるせいか、いつまでたっても設定自体が漠然不明確で、それなりの時間を要して物語に入り込まなければそれを何となくでさえ腹に落とし込むことが難しい状態になっていることに加えて、分量が全体として少ないが為に、腹に落とし込める状況が見えてこよう頃にはもうエピローグになってしまっているという、まさに悪循環というべき状況に陥っていたようん思う。
話の内容としてはいろいろ突っ込みたいことがないわけでもないが、物語として見たときにこの作品に対して、メインとして言いたいこととしては、それだけの題材をちりばめたのなら、せめて椎奈と百合佳くらいはもうちょっとキャラクター個人の設定を生かした√は書けなかったのかとは思わなくもないということ。
椎奈はこれが特に顕著。
椎奈は物語のきっかけとなる澪とも関わり、共通部分の話にも十分関連し、主人公の過去にも言及できるといういいポジションに位置するヒロインというかなり美味しい位置に立っていて、その地位を脅かされるということも特にない、まさに王道ポジなヒロインだった。それだけに、ただ思いを告白してエッチして終わり、で済まされてしまっては、さすがに呆然とするしかないだろう。
ただ、百合佳と澪の√に関してはそこまで一刀両断するほど悪い出来というわけでもなく、他3√を含めて全体的に頓珍漢な話を展開しているということはないので、細かな部分に目をつむれば、キャラクター性などがうまく表れる様を楽しむという楽しみ方くらいはできる作品ではないだろうか。
エロは正直大きなマイナス要素。全体としてシーンそれ自体の描写が悪いということはないのだが、ほぼすべてのルートで
個別突入→何かが起こって恋仲に→エロ→エンディング→エピローグ
というトンでもびっくりワンパターンにやってくれちゃったがために、エロを作中で見ようという気力が全く怒らない構成になっているのはいかがなものか。
かといって、この構成ではエロを飛ばすと余韻も何もなくエンディング(OPもそうなのだが、このゲーム、無駄にボーカル曲が良曲で何度も聞き入ってしまう)に突入してしまうので、尚のことその楽しみの部分を削いでしまう。
別に付き合ってからの話が必ずしも必要だとは思ってはいないが、このような構成を取るのは物語をうまく見せる手段としては私個人は必ずしも適切な手段には思えなかった。
あと気になるとすれば細かなシステム部分。
タイトル画面でConfigとGallaryでEndをはさまれてしまうと、一瞬どれを推すべきか悩んでしまう。
また、アイキャッチや暗転などの場面転換をほとんど用いないせいか、一部部分を除いて場面転換が全く分からず、クリックを続けていたらいつの間にか勝手に翌日になっていたり、勝手に重要なイベントがあっさり蹴りをつけられていたりということになっていたため、ただでさえ短い物語で間を置くことによる余韻や深みを感じさせることすらできないのは問題なのではないだろうか。
総括すれば、まぁそこまで悪いと言い切るほどのゲームでもなかったのかなと思う。
評価としては正直なところ、アリス・椎奈といった正直どうしようもない出来のルートを見ていた時点ではフルコンプしたゲームとしてはアイ参以来の基準点割の得点も真剣に考えた。ただ、キャラの個性を全開に生かすための題材自体はしっかり揃えていた栞、まさかのメインヒロインで共通ルートに渦巻く話を占める一角を担ったことからその中身を存外しっかり描くことになって分量的にも十分となった百合佳、ラスト√としては少々淡泊ながら王道なシナリオとしては形が整っていた澪√をふまえれば、当初の製作陣通り作品が完成していたのであれば、それなりな作品には出来上がっていたのではなかろうかという思いも抱いたので、そこまで低いものにはしなかったつもりです。
生憎太平洋沿いに住んでいるもので、雪が舞う田舎の状況というのは、物語などで得た伝聞のものでしか想起できず、完全にこの作品の描く舞台の空気に浸ることができない身であったのは、少し残念だ。
ただ、そうであったとしても。
そんな田舎町の古よりの想いのつながりというものなら、その氷華舞う空と私のような遠い場所の空とを通じて、少しでも感じることができるのかもしれない。
そう思うことで強引に〆ておこうと思った本作でした。
追伸;ホントにボーカル曲は完璧だよこれ。
(以上、感想部分2134文字。)
(以下ネタバレを含みうるプレイメモ)
※イマイチ、スタートが見えてこないなぁ。淡々と学生生活を過ごす中で、いったい何が起こるのかは、少なくとも、Opが流れるまでは見えそうもなかった。似たような空気として、季節こそ違えど「かみぱに!」を何となく想像したが、これもやはり神様と交わした約束的なものに昇華してしまうのだろうか。
△いつ場面が変わったのかがマジでわからない。
まじめな話が始まると思った? 翌日だよ!→この展開何度見たかもうわかんない
アリスティア・ブライト 58
※本永君イケメンだ。()
△なに突然独白し始めるうえに勝手にあきらめてるんでしょうかあなたは。
×このタイプのテキストミスはあんま見ないよ……タグそのまま入ってるんじゃねーのこれ。
→しかも一度や二度ってレベルじゃない。どうやったらこんなミスでるんだよちゃんとデバッグしたんか。
×赤ペンキじゃねーかwww
△なんで、やることはしっかりやっておいて手をつなぐのにこんなに苦労してるんですかねぇ。いやまぁ、恋愛の育み方は人それぞれだし、悪くはないと思うよ。うん。でもやっぱり、割と常識的な感覚をしてるとは思ってる自分からすると、どうもね。
△冷静に考えちゃだめなのかもしれないけど、いったんこの二人デート騒動噂になってますよね? その上でこんなイベントが起きる中、主人公に影響なしっていうのもある意味凄い。
→え、これで終わりなんか……
まぁ、したかったことはわからんでもない。美人なガイジンさんの、「『私』を見てほしい」ということでもやりたかったのかなぁとは思えそうだし、かろうじて。
ただ、この話をもって結局何を言いたかったんだ。アリスというキャラクターから得られる話がほとんどない。それこそ、「私という人を見てくれる人がいい」的なアリスの希望はユーザーが全く叶える隙もないじゃないか。
そうか。きっとこれは、アリスみたいな女の子といい関係になる人間として、このゲームのユーザーになるような人はその資格すらないと、そういうことが伝えたかったのか(皮肉)。
本気で、久々に内容だけで落第点レベルのものを見た気がしました。こうなってくると、最早(更迭)や(臨時)の文字が本気の言い訳にしか見えなくてどうしようもない。
三池栞 65
△いきなり勝負の話が出たから、「いつ出た?」って焦ったけど、そもそもそのあとに書いてたのね。よかったよかった。なんでやねん。
〇キャラとしてはなかなかにかわいい系で、それが文章にも表れてるのはいいと思う。
→それに、物語としても至極普遍性の高い物語で、短い文章ではあるものの先の√に比べれば触れるべき要点には触れているからか、話としては存外まとまっている感じはある。それでも、話の唐突さは抜けきらないが。
→描き切るは、「女の子でありたい自分」との葛藤。スポーツなど、女の子なイメージとはかけ離れていることにコンプレックスを抱く、本当の意味で「庇護欲を掻き立てられる」女の子との、ぶつかりあいながらの恋愛は、題材として悪くない。
一つ一つの反応がしっかり可愛いのが、いい。文責にとっても、この部分は譲れないというところでもあったのだろうか。真に「こういう部分を入れれば可愛い」というのを描いているようにも見えた。
氷見川椎奈 55
→ちょっとこの子何考えてるかわかんない。好きなのはよくわかるけど……
〇もし昔のことを覚えてなくて、別の誰かを好きになって、結婚して、他の人をお嫁さんにしたとしても……短い時間かもしれないけど、わたしは……家族になれるんだもん。
×……は? は?
→エロ3回やったら終わったんだけどwwwwメインじゃねぇのかよコイツwwww
→どうしよう、正直何も描くことないレベルに言うことがない。
→マジでどうすればいいんだよこれ。
水無月百合佳 68
→こういう飄々なお姉さまはわりと好きになることが多いので、一応は期待している。でも、大丈夫なのかこれ……?
→無駄シリアルなの?そんな予感がするの?
〇すっげえ突然な気がしないでもないけど、これはこれで可。飄々としたキャラ演じてる(?)な年上としてはいい感じ。内心ドキドキなんだけど、勢いでやっちゃったー、てきな?
→あ、ここメインなのね?
→〇必要十分。少々説明不足もあるかもしれない。ただ、狙ったかどうかはわからないこの全体的な描写不足からすれば、却ってここを重厚に表現してしまう方がバランスを失するというものであって。そういう意味では、ここは唐突さをしっかり出す方が良かったような気がした。作品としてのクオリティとして決して高いものとほめることは出来ない形であるが、その分に知足というべきか、しっかりと身の丈に合った〆方をしていると思う。
→個別√として見るのであれば、そのあたりは他と大差はなく、単純に個々別の性格に沿ったシナリオを描いているものに終始しているということになるだろうか。私個人としては、これは全然悪くないと思う。同じ意味で、澪という枷をシナリオ上課せられた椎奈に比べて、個人とあらすじを混合したいい塩梅になっていて、ここまでの悪印象とは一転、存外悪くない感情に満たされていると思う。
〇エピローグ加点あり。
澪 65
→人間ではない謎の存在、というヒロインを扱うにおいて、本筋かつ、王道の話を従前の4ルートとは異なり、その分量相応にしっかり丁寧に描いているのは好印象。ただ、大上段に振りかざすかのように解放という形を取ってまでするルートとしては淡泊であるように思う。
欲目を云えば、もう少し三角が四角になるさまを描けていても良かったかもしれない。