シナリオの題材こそ万人受けであろうが、そのジャンルは全く万人受けではなく。
TSモノを制作するメーカーとしては真っ先にその名の上がるであろうCROWDの作品であることもあって、ある程度は満足のいく作品であったとは思う。
ただ、TSモノ全体としてのうまみというよりは、精神的な部分のうまみが強いというか、逆に肉体的な部分のうまみが弱すぎるというか、そんなバランスの悪さを感じた。
天河コウと大地ルカの二人を主人公に据えた物語であったが、物語の構成的に仕方なかったのであろうが、若干ルカが優遇気味であるように思えた(5つのエンディングはルカ２、コウ１、二人２)。
個人的には性別が変わってもばれにくいタイプのキャラより思いっきり変化を実感せざるを得ないキャラの方が好みであったので、もう少しコウの話が欲しかったところ。過去作との被りを避けたかったのかもしれないが、せっかく男3人でルームシェアという環境であるのだから、暁だけではなく恭介にルートがあってもよかったのではと思わなくもない。
しかし、ルカが嫌いかと言えばそうではなく、むしろ兄弟愛という性別だけではなく超えるものがある背徳感が織りなす展開は見事であったと個人的には思う。終盤がご都合主義前回ではあるが、ご都合主義なぞ戦闘ヒロインモノの常とう手段であるので全く気にはならないだろう。
全体としてはエロが薄めな他、シナリオ構成上視点が違うだけで話の展開が同じであることが多かったり戦闘エフェクトが入り過ぎたりで、少々2周目以降が退屈だったのが△。
また、EDのパターンについては議論を呼ぶところであるだろうが、私個人はTSジャンルを好むもの向けとしてはこれでよかったと思う。その一方で、TSジャンルをあまり好まない者にとっては完全に受け付けなくなってしまっているが。
総じては、最初の一言のように、題材こそ万人受けする綺麗なものを描ききってはいるものの、そのジャンルとしての部分で完全に人を選ぶようにしてしまったことで、中途半端に手を出しづらい作品になってしまっていることは否めない。
しかし、万人受けする展開が嫌いな方はともかく、性癖的ジャンルにあまりこだわりのない方には、この作品でTSFという世界を知ってもらうのもまた一興かもしれない。