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Accord4312さんのことり Love Ex Pの長文感想

ユーザー
Accord4312
ゲーム
ことり Love Ex P
ブランド
CIRCUS
得点
70
参照数
580

一言コメント

いろいろ言われているので、プレイする前に逆に身構えてしまったというのはあったけれど。終わってみれば、私個人的には「まぁ悪くないんじゃないかな」と思えるファンディスク?に仕上がっていたようには思います。もっとも、いくら褒めてみたところで、このシリーズのファンであるか、シリーズをプレイすることなくして「白河ことり」というヒロインを病的に好きになってしまった奇特な方でもなければ、まず手に取るような作品ではないという事実があるので、なんともほめづらいところは否定しがたいのですが……。長文部分は一応の追加部分に関する感想と、PCゲーマーが本作において初体験となるであろうシナリオ部分についてのプレイメモ雑感を、いつもの通り記載しています。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

1 総評部分
 まとめ部分に関しては、良くも悪くも「白河ことり」の部分を抜き出しただけという感じなので、この作品にまでわざわざ手を出そうという方の大半が既にプレイ済みであろう範囲だと思いますので、割愛して。
 追加部分に関しては、いい意味でも悪い意味でも「初音島」の物語の雰囲気からは浮きまくっている股ゆるヒロインな「葛飾あゆみ」という存在が、僕にとっては存外悪くなかった印象です。

――――――初恋で、愛を知って、一生を共に歩むことを誓う。

そんな今時エロゲ世界でさえもなかなか見ない理想郷のようなこの世界にも、こんな人物はいるのだということを示すと同時に。男であれば少なからず思うであろう、「他の女ってどうなのだろう」という素直な色欲に負けかけてしまう
(ネタバレをしてしまえば、結局「負けない」のである。そこが、この作品が「初音島」の作品としての最後の一線を頑なに死守したというべきか)という主人公の「男」な一面をも見せてしまう。
あくまで身体のみを求め続けたあゆみと、あくまでことりを一番に据えることだけは変えなかった主人公。この二人のちょっとしたお遊びによって、理想郷過ぎた「初音島」の空間が、いい意味で身近になってくれたような、そんな気さえしてしまいました。

 エロスに関しては、C.D.C.D.や、D.C.P.K.などといった、この手のファンディスクに連続して言えることなのであるけれども、存外「頑張って」いると思います。
バニーな愛妻ことりちゃんや、朝から積極的な愛妻ことりちゃん、女王様なことりちゃんと、「泣きゲー全盛」?とも言われた時期の作品であったがために封印していたんじゃないかというような、「非日常」に求める妄想エロス全開なシーンが用意されていて。どうせこのシリーズだしエロは薄いのだろうと思っているファン層にとっても、存外悪くなかったのではないかと思います。

 総じて見たところで、結局はよほどのシリーズファンか、あとから「白河ことり」というヒロインの魅力に取りつかれてしまったシリーズ未経験ながらも重症患者であるユーザーでなければ、結局のところ手を出すことはあり得ないのであろうなという作品ではあるので、それなりな点数を付けたくはなる割には、全く人にはお勧めできないのだろうなと思う。
 それでも、上記のような人にとっては。ちょっとの女遊びくらいは「男の人だから」と、聖天使朝倉ことり様のように許せてしまう決して狭量ではない心をお持ちであるならば。
きっと、そこまで悪い思いはさせない「まとめシリーズ」なのだろうなと、そう思うばかりです。

余談:PS2を持っていない僕にとっては、D.C.I.F.のシナリオがPCでプレイできるという意味でも、この作品はありがたかったです。もっとも、その部分で一番心が抉られる羽目になってしまい、以下のような無駄に長文なプレイメモを製造することになってしまったのですが……

2 プレイメモ部分
 いつものことながら、ネタバレの可能性がありますので、気になる方は読むのを回避していただければありがたいところです。









ことりLove ExP
→実は今までやれてなかったDCシリーズ()。久々にことりを見るわけだけど、懐かしさでいろいろこみあげてきてしまわないかしら。

D.C.if
※いや、あのですね……この展開で選択肢って、もう選ばせる気ありませんよね?
でも、選ばないと、進まないんですよね…… つらい。

マスカレード 点数なし
→この作品において、この話がある必要性とか云々を言い出してしまえば、きりがないので割愛します。
ただ、個人的には。「ことりのお話」としてではなく、「ことりを選んだ可能性のお話」の世界を描き切るという意味では、その世界があくまで別世界であることを描くために、この展開は一応は必要だったんじゃないかなと思います。
と、そんな風に考えなければいけない程度には、この話、どう考えたらいいかわかんないんですよね()。

ただ、今を繰り返す 72
※なるほどね。「見せて」しまうわけか。もはや「主役」ではなくなってしまったとはいえども、物語のすべてをつなぐ女の子の、最悪の物語を。
その描き方の単調さといい、突き刺さるものがあるなぁ……
〇単調といえばそれまでかもしれないけど。人と人とのわだかまりなんて、元をたどれば案外そんな程度だったのだ、ということは、往々にしてあることなのだ。
→そして、その上手く行きすぎてしまった流れに、ふとした瞬間に。自分を冷静に見つめてしまい、なにも掴まないことを選んでしまうということだって、あっていいのだ。

→重石、という言い方は失礼に過ぎるのだろうけれど。そんなひっかかりが残る中では、本当にいいものをつかみ取ることはできないと。そう考えてしまった一人の登場人物の、やけにあっさりとした顛末を描いていたように思います。いつまで時が過ぎようと、傷っていうのはどうしても、どこかに残ってしまうものでありまして、完全に癒えるっていうことは、理想論過ぎてあり得ないものなのだと。そんなことを感じずにはいられない、「どうしてそうなってしまうんだ」というものが残ってしまう、微妙な読後感ではあるものの、ある種「人」を描いたお話としては中々にいいのではないか、そんな風に思ってしまうお話ではありました。
いろいろ言いたいことはあるかもしれませんが、私個人はこういう展開は、嫌いじゃないですよ。すっごくもやもやはしますけど、それが人の物語だといわれてしまえば、ああ一つの形だなぁと、納得できてしまう気がしていますので。

いつか描いた未来地図 80
※他の本編のルートでは、何気に明確には描いていなかったことではあるのだけれど。この作品において、先の最悪の展開を避けることができていたのは、ひとえに、こうやって「一言」を告げることができていて、お互いが、それを自分なりに消化する機会があったからなんじゃないかと。先の展開を見てしまってから見ることになった今だからこそ、そんなことも考えてしまうのだ。
→余談ではあるけれど、似たような展開を、同じような関係で描いた作品としては、後発作品ではあるが「夏空のペルセウス」が挙げられるのではないだろうか。あの作品もまた、最後のルートに至るまでは、明確にお互いがお互いの思いを消化するという明確な機会に恵まれることがなかったという描写を入れていたように記憶している。この登場人物の関係性を描いたものというのは、自分自身はあまり好きではないのではあるけれど。しっかりと、明確に、「変化」を描き切っているというその一面では、一定程度好感を抱いてしまうような、そんな展開ではあるのだ。
→もっとも、それが、一つの最悪を回避したに過ぎなくて、また別の最悪を回避したということには繋がらなかったというのが、最高に皮肉ではあるのだが。
◎ことりも、工藤も、杉並も。それぞれ、思いの根幹や、表に出す態度こそ違えども。みんながみんな、主人公を信じて、愛して、想ってくれているがゆえの行動をしていることには、変わりない。主人公という、いまや完全に物事をうがった見方でしか見ることが出来なくなっている人間の目線を通してさえも伺うことが容易なその想いに、どうして主人公は答えられないのだろうか。
そんな疑問が沸くと同時に、主人公だって、わかったうえで、どうにもならない気持ちの逝き場所を探していることに気がつく。理屈でいえば、3秒も悩めば結論づいてしまうであろうことを、延々と悩み続けること。それは確かに傍から見れば愚行に過ぎないのだけれど、そんなに、人間の想いというのは、単純に割り切れるものではないのだよね。
そんな、難しい胸中や、わかってやりたいけどわかってやれない、でも精いっぱい、想いゆえに向かい合ってやりたいという、登場人物それぞれの想いが虚しく交錯する様に、私は自然と、不思議な心地よさを感じてしまうのだ。
→ところで、これって一応ことりの話なんですよね……ことり、心の底からどうでもいい感じが沸いてきてるんですけど……
→でも、ちゃんとしっかり〆ちゃうわけだ。ここまでうじうじと引っ張ってきたお話を、爽快に投げ飛ばすような、しっかりとした展開で。
※ちなみに、何気に、そのXデイを、合わせてきてる当たりがまた、粋なんだよなぁ。この二人のことだから、絶対にこれは、合わせているんだよなぁ……
ここまでやってくれるなら、そりゃあ認めないわけがないよね、あのヤキモチ焼きな甘えん坊さんも……

→上の方でいろいろ書きすぎて、書きたいことがあんまり残っていないのだけれど。
ifとはいえどやり過ぎなんじゃないかという位のシリアスな展開さえも、逆に、ifであることを強調するかのように独特の展開に持ち込むことに利用していて。このシリーズでこういう話を読むこともできたのだなと、今更ながら新しい発見をできてしまったことに、ひたすらに感謝したいばかりだ。
もっとも、その異質さゆえに、あくまでこれは「if」でしかないのだなという思いもまた浮かんできてしまうのは、2大派閥でいうのであればことり派であることに間違いはなかった私にとっては、少々悲しいことではあるのだけれど……。それは、この物語という素晴らしいものを見せてくれたことに免じて、許すという形でも、まぁ、いいのではないだろうか。

愛の証と桜色の奇跡 上記√に+3
→いやさ……そんなハッピーエンドがあるわけないって、そんなことをさ、今までを見てると思っちゃっているわけなのよね?
そんなに都合のいい幸せな展開なんてありえない、って。
でも、それをやっちゃうんだよね。やってしまうんだよね。
人によっては、それはやっちゃいけないというのだろうし、僕自身も、普段はこういう展開はあまり好むほうじゃない。だけれども、この使い方は、本当にずるいさ。あぁ、本当にずるいさ……

以下、エクストラシナリオ
・ことりと家族とお饅頭
→ちょっとした前日談だけれど、こういうお話が明確にほしかったんだよね。

・ーーまた来年
→ちょっと頭が回っていなかったせいで、どういう扱いで読むべきなのかわからなかった。もう少し時間をおいて読み直した方がいいのかもしれない。

・世界を守ってるんだぜ
→杉並も頑張ってるんだな、うん(しろめ

・加奈子、知子、ことり
→ことりさんの意外な一面、みえますよ(

・オトメゴコロの秘密
→これって一応、「桜色のドルチェ」の展開を踏襲してはいるんだねと。

ことりPlus! 69
→唯一に近い追加部分にして、評判を落とした根源となっているシナリオ……
僕はどう受け止めていくんだろうか(他人事

あゆみ√? 68
※存外ガチ、という感じではないんだね……少なくとも、相手は。
→というかこれ、ことりさんわかってたんじゃないのか……? あの能力を抜きにしても、すっごく聡い子ではあったわけだし……
そして、そう考えると、なんなのだろう、この器の広さは?
そうか! これが! CIRCUSの出した! ことりは偉大! ということを示す答え!(ない
→あゆみさんも主人公も、あくまで「ことりが一番」ということをわかっていろいろと「親交を深めている」という感じなので、思ったよりは悪印象は抱かなかったかなという感じ。あゆみさんのある意味さっぱりした人柄は、いい意味でこのシリーズでは異端で、面白い存在だったのかなとは思う。
ただ、いい登場人物ではあるんだけど、初音島の物語の中ではやっぱり「異端」な存在なので、そのあたりで「シリーズの空気が壊された」と感じるか否かも、このお話をどう評価するかの一つの分かれ目になるのかもしれませんね。

ことり 
→いや、まぁ、分岐というかなんというか……
これを分岐といっていいのかわからないんだけど……
→二人が幸せ、それでいいんじゃないかな(投げ
エロは存外よかったので、僕は大好きです。

3 得点
 70点

 上記に諸々付けましたが、いろいろ考えているうちになんて言ったらいいのかわからなくなったので、印象そのままの点数をつけてみた結果が、この点数です。要するに、明確な根拠は特にありません。