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Accord4312さんのD.C.III ~ダ・カーポIII~の長文感想

ユーザー
Accord4312
ゲーム
D.C.III ~ダ・カーポIII~
ブランド
CIRCUS
得点
85
参照数
928

一言コメント

D.C.シリーズがこの世に生を受けて10年が経過した。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

そして今まで様々なストーリーを経て、ようやく収束の方向へ向かいだした。それが本作の立ち位置なのだと思う。

物語としてはD.C.2からさらに約20年が経過した世界での初音島での物語から幕を開け、そこにいるのは今までのキャラクターの関連性からは大きく外れたようなキャラクターたちが織り成す新聞部での学園生活と、一見すると「D.C.シリーズもついに堕ちたか。名前を借りただけのストーリーでシリーズの過去の栄光にあやかり、お金を巻き上げに来た」と思われることかもしれない。

しかし、その物語の主軸に置かれるのは「ハジマリノモノガタリ」。

「D.C.の世界観における『魔法』の根拠は何なのか?」
「なぜ、桜が変わらぬ象徴として作中に君臨するのか?」
「そして、なぜ『D.C.』なのか?」

このD.C.シリーズの中に抱かれる根本的疑問について、ようやく明かされ始めたのが、今作なのである。

また、作品の構成に関しても、今のユーザーにウケのいい形をとっており、読ませる側が息を付く暇もなく作品に埋没できるようになっている。

その形式ゆえに、ネタバレなしで説明することが難しい上に、私がまだこれを書いている中でもこの作品についてまとめきれていないがために、このような拙い紹介にもならない文章で止めさせていただきたい。
(また機会があれば、大幅にこの文章も書きなおすかもしれない)

ただ、この作品は「曲芸商法」とまで言われながらもファンの要望に応え、世に送り出してきた全ての「D.C.」に関連する物語を今まで以上に堅く太い一本の線で繋ぎ始めた作品であるのは、疑いようのないことであると思う。

本作をより楽しむ上では、ぜひほかのシリーズの作品をやってから、プレイしてみるといいのかもしれない。
きっと、新しい発見をもたらしてくれるだろう。

そして、4月には追加シナリオを含めたR18版が発売予定である。
「またいつものパターンか」と思いながらも私は既に予約券を持って待機しているのであるが、これによってもう一度すべてのエロゲユーザーに「D.C.シリーズの底力」を味わってほしいと、一信者としては願うばかりである。