Psy-chsの処女作。姫様凌辱ADVで、調教SLGではない。魅力的なCGとよく練られた設定、ツボを押さえたHシーン。単調でありがちな展開を考慮しても、じゅうぶんそれなりの抜きゲー。「3」が出たら嬉しいのだが。
・ 情景を地の文で語らないせいか、Hシーンの描写自体は割と淡泊。
・ 少し暗い感じの終わり方。ハーレムあり。
・ BGMがハイレベル。特にOPのパイプオルガンは雰囲気抜群。
EDは五つ。「個別ED」は事実上ありません。やることはごく単純。お目当ての彼女のところへ足繁く通い、弱みを握ってことに及ぶだけ。プロローグが少し長いですがそこで舞台とキャラクタの説明が過不足無く行われ、後は黙々とHシーンを見る作業と思って構いません。
本作の良さは設定にあると思います。舞台はエストゥール王国。主人公ヴァンは身分ある貴族の息子でしたが、父親が罪を着せられ失脚。姉ともども国王一家(国王、王妃とその娘等)の奴隷となります。地獄のような生活の中支え合っていた姉弟ですが、ある時ヴァンは姉と交わることを強要される。神の教えに背いたことを苦にした姉は自殺。ヴァンは逆上して国王暗殺を企てますが失敗して投獄されます。
そんな彼を牢から出したのは、元婚約者にして王位継承権第二位の王女、エルディア。彼女はヴァンを解放し、名誉回復の機会を与えることを条件にひとつの取引を持ちかけます。それは、第一王位継承権を持つ妹のフィーリアを追い落とすこと。ヴァンはそれを承諾しますが、エルディアの思惑を飛び越え、王族の全てに復讐を誓うのでした。
不条理な苦痛とそれに伴う憎しみ。これがヴァンのモチベーションです。一般に凌辱系抜きゲーには、女の子が酷い目に遭うのを見るタイプと、主人公視点をとりつつ女の子と関わり征服欲を満たすタイプがありますが、本作は明らかに後者。そこで重要な問題となる、「主人公の動機に共感できるか」という部分を本作では綺麗にクリアしている。
たとえば「信心深い姉が自殺した」ことは、国王一家への恨みだけでなくそんな姉を救わなかった「神」への叛意にも繋がっています。エルディアはヴァンの深い恨みと悲しみを知らず、ただ欲深く低俗な人間として扱う。フィーリアは無垢で王族の実態をいっさい知らない。周囲の無理解、無知といった「キレたくなる」描写が適切に配置されている。主人公の悲惨な境遇を設定するだけでなく、キャラクタとの交流を通して具体的にヴァンの憎しみが発動する場面があることで、設定と感情とがうまく繋げられています。
王宮貴族の無能ぶりも爽快で、誰も彼も保身と物欲のかたまりでまことに見苦しい。そのことが、保身も名誉も考えない主人公とはっきりしたコントラストを描き、彼にある種ピカレスク的な魅力を与えています。実際「凌姫2」では彼が「英雄」としてエストゥールを軍事大国にしたことが明らかになっており、単なる復讐鬼にとどまらない力強さを裏付けている。ユーザーからしたら楽しく眺めていられる主人公ではないでしょうか。
抜きゲーと言いもってエロに触れないわけにはいきませんね。シーン数49。CG差分無しで92。メインの姫二人に加え、フィーリアの側近であるクリスとミシェル。他はメイド、貴族娘(高飛車/病弱)、シスター、人妻とそこそこ豊富。ただしサブキャラはシーン自体三つ四つの「おまけ」。はやりのアヘ顔はありませんが、表情の色っぽさは個人的にそうとう好みです。藤井一葉さんは悔しそうな表情でイくキャラの絵が本当に上手。特に眉と目尻の具合が最高です!…失礼いたしました。ともあれ絵だけでセリフを妄想したくなる、良質なCGです。
Hはそこそこ長め。輪姦もありますが基本ヴァンがハッスルですね。内容的にふつうのHは少なく、ライトなのだと媚薬や恥辱、ハードになると縛りや拷問あたり。フィーリアのヴァンに対する淡い恋心、エルディアのプライドと元婚約者への蔑み。そういうのを蹂躙し、汚していくという過程がシーンをこなしているだけで繋がっていきます。
ただ問題も多い。まず抜きゲーであることを差し引いてもボリューム不足。そのせいか展開も少々唐突です。姫たちに比べてサブキャラはあっさり過ぎるくらいあっさりと籠絡できるし、見せ場であるはずの主人公の「国盗り」も駆け足。要するにHシーンと絡まない部分はこれでもかと削ぎ落とされてしまっており、折角の設定を活かす展開を用意できなかった感があります。
また暗黙のルールを多く踏襲していて、共有できない人には辛い。簡単に寝所に潜り込めたり、城の人事官の目が節穴だったりの状況的お約束もさることながら、女の子がヴァンに惚れたなとかいう場面で直接描写がなく、心理の動きがユーザーに投げられ気味です。快感を感じた後に涙を流したのが折れた合図だとか、嫌がりながらもナニを握ったら好意を持ってるなとか、そういうある種の「お約束」に大幅に頼っている。
あからさまな若葉マークのユーザーが手を出す可能性は低そうなので通じないことは問題ではないかもしれません。しかし裏を返せばなれたユーザーが多くなるということです。したがって、描写がお約束以上にならずマンネリの誹りを受けやすいことが問題でしょう。そしてこのあたりは「凌姫2」で上手に解消されていたように思います。