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ARTOさんのつくもの ~やどりぎロマンス~の長文感想

ユーザー
ARTO
ゲーム
つくもの ~やどりぎロマンス~
ブランド
XUSE
得点
70
参照数
4537

一言コメント

ウリ文句は、「純愛触手ADV」。触手で純愛は無理だろうと思ったそこのあなた!……やっぱり無理でした。コメディタッチで楽しいことは楽しい。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

・ 純愛3、陵辱3、コメディ4くらいの比率。
・ 残酷シーンあり。よく言えばそのおかげで引き締まった話。
・ ヴォーカル2曲。あまり印象にのこらなかった。
・ やや癖のある絵柄。
・ 『GS美神』の横島くんのバンダナ思い出した。


純愛とうたっている割に陵辱色が濃いシーンも多い。半分くらい和姦っぽいから陵辱目当ての人は満足しづらいだろうけど、純愛派の人の中には拒否反応を起こす人が多そう。「純愛ってなに?」という定義の問題はあるかもしれませんが、洗脳したり同意なしでコトに及ぶのは、「純」ではないとおもいます。せめて「ハートフル触手ADV」にすべきだった……ってそういう問題ではないですね。オフィシャルのCGサンプルより多少どぎついシーンもあります。命のやりとりもあります。

開始直後から常に「破滅」や「死」、あとは「別れ」の香りが漂っているので、展開に緊張感があります。ダラダラ日常が続いている…という感じではない。またキャラクタもそれぞれ特徴があり、好き嫌いはともかく位置づけが明確。全員一筋縄ではいかない、癖のあるキャラですが…。紗絵さんはかなりふつうかな。

心理変化が結構急展開で、書き込み不足を感じさせる部分はあるものの、過剰な説明を抑えた描写は比較的読みやすく、通底するミステリー調の雰囲気とかみ合って、良い感じに仕上がっていました。相手の好意が本物なのか、何かの罠なのか。本物だとしてもどういう種類の好意なのか。テキストで直接書いてしまうと失われがちなその辺の機微がうまくでていたと思います。

 (よかったところ)
 楽しかったのは、やたらコミカルな触手の「麻呂」(名前です)。特に紗絵ルートでは、女心に精通した平安貴族である彼が、女心に疎い主人公に恋愛指南をする形で話が進んでいくのですが、これがかなり良い。細かいつっこみどころはあるものの、こういう「師弟関係」で弟子の主人公が成長していく話が結構好きなので、自分としては大変満足しました。古語の使い方や読み方については専門外なのでパスしますが、ちょっと失敗しているところもあったように思います。ただ概ね気にならないレベル。

 (いまいちだったところ)
 話もエロさもネタも標準以上だと思います。ただ、ネックは最初に述べたように、相反する方向(純愛と陵辱)でバランスをとったことと、原則触手がらみのHシーンなことによる間口の狭さでしょうか。自分はあまり気にしませんが、一般的には「自称純愛話でそれは無いですよ、Xuseさん」となるはず。きわめつけは、「Hシーンなのに触手がでないのはメインヒロインの証!」Ω<な、なんだってー。わかっててやってるんですね…。

 あとは突き抜けた売りポイントが無いところでしょうか。ドラマ性で売るには話が拡散しすぎて統一感がないうえに、少し短かった感じがしますし、エロ絡みで押すには少々弱い。打率二割六分、HR15本の七番バッター。下位打線では優秀だけど上位打線ではちょっと見劣りするかも。そんな感じ。

 一応各ヒロインの話で相互補完的に全体像が見えてくるのですが、統一感はあまりなし。ヒロインごとの扱いの差が激しいです。主人公の態度もそれぞれで結構変わる感じ。紗絵ねえさんはかなり気合いはいってます。ライバルもいて、ユーザー側も気合いが入る設定。

 CVは個人的な感想ですが、あんまり上手じゃない人多かった。でも、CG閲覧でキャラのコメントが入るのはちょっと楽しいので続けてほしいです。