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9wa263さんのサキガケ⇒ジェネレーション!の長文感想

ユーザー
9wa263
ゲーム
サキガケ⇒ジェネレーション!
ブランド
Clochette
得点
82
参照数
886

一言コメント

現在自分が最高得点を付けている前作「カミカゼ☆エクスプローラー!」と比較すると色々残念な結果ではありました。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

★以下では同じClochette作品である「カミカゼ☆エクスプローラー」「プリズム◇リコレクション」「スズノネセブン!」のネタバレも(少し)含みます。★

 「カミカゼ」を現在最高得点(97点)にしているものとしては本作品「サキガケ⇒ジェネレーション」は正直「期待外れ」という言葉に尽きる。決してクソゲーではないし、ストーリーもダレる感じはなく、概ね一気にプレイすることが出来たのだが、いろいろな点でカミカゼ、、、、のみならず、スズノネ、プリコレにすら?劣る感じが否めなかった。

●ゲームの中のゲーム
 まず誰でも感じるのは、ストーリーの中でMMORPGである「ウィザードジェネレーション」(ゲームの中のテレビゲーム)が主な柱になっていること、その場面やゲームの進め方などに関する話題がかなり多いことから、MMORPGに思い入れがあるかで人を選んでしまう気がすることだ。無論、そもそも「PCゲーム」をやっている時点で、MMORPGに関する知識がある人が多いのかもしれないが、少なくとも自分はMMORPGは「ほとんど」やったことがなく、思い入れがない。そのせいか、MMORPG主体のストーリーに今一ノっていけなかった感じがする。

●しっかりとした世界観の構築、、、のはずが
 ストーリーの性質で言えば、そもそも自分はファンタジーよりはSFの方が好みなのだ。魔法、よりも超能力、のほうが一応はSF的であり、それも自分の「カミカゼ」評価を上げているだろう。Clochette作品の魅力の一つにはしっかりとした世界観の構築があり、それはスズノネのように魔法世界でも行き届いており、スズノネも楽しく読めたのであるが、やはりカミカゼのような超能力世界の方がより説得力のある世界とストーリー構築が出来ていたと思う。

 しかしこの「サキガケ⇒ジェネレーション」の世界観の構築は、魔法世界や超能力世界の精緻化に使われるのでは無く「物語の中の(ウィザードジェネレーションという)テレビゲーム」の世界精緻化に配分された。
 我々が感情移入が出来るかどうかは我々がプレイする(我々の)「ゲーム」(すなわちサキガケ)の中の世界観がどれだけしっかり、精緻に構築されているかに左右される。ところが我々がプレイする「ゲーム」の中の「MMORPGゲーム」がいくら精緻でも、感情移入が出来るとは限らない。

 ゲームの中のゲームの設定がいくら細かくても我々が直接そのゲームを楽しめるわけではないし、、、、「ゲームの中のゲーム」すなわちウィザードジェネレーションが本当にそれだけで我々が楽しめるくらいのゲームに出来て、それを(サキガケの)主人公として直接にプレイして、他のキャラクターとその中でやり合って、ゲーム進行の成否によってはエンディングやルートが変わる、というくらいだったらすごくなるとは思うのだけど。
 いや、Alicesoftのゲームじゃ有るまいし、Clochetteにはそういうゲームは求めてないけどねえ、、、でも、アトリエかぐや⇒アストロノーツの例もあるし、そんなんだったら応援したいけど。

●キャラクター
 キャラクターはそれなりにそれぞれ魅力的で「萌える」のであるが、それでも「カミカゼ」のメンツに比べると、それぞれ何かがもうちょっと足りないという感じがしてしまう。カミカゼの時にはとにかく、風花、まなみ、沙織、みーこ、(、、、ごめん!琴羽)と、いずれのキャラも、発言や行動を見ているだけで思わず「ニヨニヨ」してしまう「萌え」言い換えれば「可愛くて可愛くてたまらない」感じがあったのだが、サキガケではそこまでの感覚が抱けなかった。
 これに関しては何が足りないのだろう?自分でもまだよく分からない。

●ストーリーの繋がり
 傑作と感じる「カミカゼ☆エクスプローラー!」のストーリーでは★ネタバレになるが★各ヒロインがそれぞれで活躍しつつ、各ストーリーとしてはほぼ最終的に行き着くところが同じだ。それぞれのストーリーで明らかになる部分が少しずつ違うけど、けれども最後に辿り着く場所はほぼ一緒(と私は感じる)。たとえば言えば東京から大阪へ行くのに、東海道新幹線、中央リニア線、鈍行、東名名神、などがあり、途中の景色はかなり違うけど、最後は大阪に着くのは同じ、という感じがあった。

 ところがこの「サキガケ⇒ジェネレーション」ではそういうストーリー分岐の仕方では無かった。到着地点が微妙に(あるいはかなり)違う感じ。上の例えでいえばゴールが大阪、神戸、京都、奈良、みたいな感じ?

 スズノネの時にもそんな感じであったのだが、あれはそもそも落第候補生それぞれの復活劇で統一した課題や目標がないので全く問題ない。ところがこの「サキガケ⇒ジェネレーション」では大きな懸案事項「魔力活動の活発化」が一つあり、確かにそれぞれのストーリーで「それなりには」解決されるのだが、各ストーリーですっきり解決した感じがしない。

 というか、根本的な解決は桜花のストーリーのみのように思われ、他のストーリーではそれを知った後ではイマイチ消化不良を感じてしまう。

●ということで
 結局のところ、辛い書き方をしてしまった自分が思うのは、やっぱり自分は全エロゲの中で一番にするくらい前作「カミカゼ☆エクスプローラー」が好きなんだなあ、ということ。風花のぽよぽよも、沙織先輩のくるくるも、まなみの一直線も、みーこの表裏も、ヒマリさんも、青山ゆかりさんも、ファンタジーでは無くてSFっぽいところも、ギリシャ神話が紛れ込んでいる所も、その作品の時点の御敷仁氏の絵柄も、それぞれのキャラのポーズも髪の色も、主題歌もED歌もBGMも、みんな好き。前作がそれだけ好きだと、やっぱり次作は厳しい見方をしちゃうわけで。ご容赦願います。

 ちなみに辛い評価にも拘わらず点数が他の人よりも高いのは自分が付けている他の作品との比較からです。