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9Relc0さんの抜きゲーみたいな島に住んでる貧乳はどうすりゃいいですか? 2の長文感想

ユーザー
9Relc0
ゲーム
抜きゲーみたいな島に住んでる貧乳はどうすりゃいいですか? 2
ブランド
Qruppo
得点
88
参照数
615

一言コメント

頭のねじをケツにぶっ刺して考えたようなテキストで埋め尽くされてはいますが、困難な世界でどう生きていけばいいのかという普遍的な問いが軸にあるので飲み込みやすいです

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

・好きな台詞一部抜粋

凛「世界史Aのくせに生意気なんですよ!!」

淳「じゃあまず手始めに、一人称は僕にしてくれる?」
文「僕……? え、なぜ――いいえ、承知致しました……僕にお任せください……」
淳「やっぱり可愛い……」

礼『H! A! R! A! M! E! オラッ!』
 どんな朝礼をやってるんだ――?

奈「くどくど!くどくど!なのだわなのだわ!なのだわーーーーーっ!!」

水「へぇ~喧嘩以外の物も売れたんだ」

ヒ「代入がエックスで挿入がセックスなんだねぇ」

 『今夜のロードショーは、パイズーリオブカリビンビンアンアンアンアン!』





以下シナリオについてのネタバレ含みます



・所感
プレイし終えてから半年経とうというのに書きたいことがまとまりきらず感想を投稿できる気がしなかったので、一旦、まとめられた事柄だけ書いておきます

主題としては「自分のコンプレックス・弱さとどう付き合うか」が前作を含めたすべてのルートにあったように思います。タイトルの「どうすりゃいいですか?」はまさにそのことを言っているわけで。今作、水引の性自認の話は前作の淳之介の立場を意識したお話になっていましたが、桐香は、、、あえて名称を出しますが自閉スペクトラム症であるかのような描かれ方をされ、当人とそのパートナーである淳之介がその特徴とどう付き合って生きていくか、という内容で、テーマを活かせる舞台設定と魅力的なキャラ、そしてたくさんの孕めオラがこの作品を上質…?なエンタメ作品に仕上げていました



・キャラに関して、みんな大好きなんですが、特に言いたいことがあるキャラに絞って感想を
 水引については後日追記予定

 -性帝 及び 淳之介
B世界に転移してしまった淳之介は、あり得たかもしれない孤独な自分を知ることになります。妹を守るためとはいえ、妹を拒絶する形で離別し、本当は嫌なのに自身のイチモツを晒し不特定多数とセックスを行う…と、前作でBADエンドを観たいと思っていた私としては、桐香の誘いに乗ってしまった彼の姿は期待していたものが見れた喜びと、彼の不幸を望んでしまった罪悪感とでいっぱいでした
B世界の自分と水引の苦悩を知り、その上でお前のやり方は間違っていると言うために、かつての敵を仲間に、かつての仲間を敵に突き進む淳之介は非常に頼もしく感じました
続編が出るにあたってキャラクター同士の関係性が強化されるのはよくあることですが、淳之介を中心に見ると特に、同級生という横のつながりが強化されていたように思います。NLNSは組織であり、明確な縦の関係はなくとも狭い範囲での関係性に終始していたのが、郁子やシューベルト、水引らも加わり、更にその中で別の関係性やグループが生まれて、淳之介が青藍島での暮らしを楽しんでいる=島を好きになったと判断するに足る描写になっていました


 -郁子
  淳「よかみが深か~!!」
郁子の場合、淳之介に興味を持つきっかけは完全に性欲からくる性愛でしたが、個別での「愛してほしい」というお願いと好きになってもらえるように頑張るというアプローチ、エロゲーから得た恋愛観と自身の淳之介に対して抱く気持ちのギャップへの驚き、B世界でNLNSメンバーを味方につけた淳之介に対する嫉妬のような感情への気付き、側にいたいから笑っていてほしいから好きなんだという心境の変化、淳之介に対する思いがA世界の女部田郁子自身の物なのかという不安とそれを乗り越えた先での告白シーン…と、青藍島の価値観を受け入れていた郁子がだんだんと普通の恋を知っていく過程が描写され、これまた前作で相対していた美岬ルートのように、いつもの言動がアレなヒロインほど真っ当な恋愛描写で一発食らわせてくる展開になっていました
主題に当てはめて考えるとすれば郁子ルートは、歪んだ愛しか知らなかった郁子が普通の女の子のように恋をし、より大きな愛に包まれるまでの変質を描いたと言えるでしょうか。ぬきたしはやっぱりバカゲーには違いないんですが、基本線となるお話で何を見せたいかがしっかり分かるので、合間に挟まる孕めオラにも安心して笑うことが出来るのかなと感じます
エロだと、ファミレスでの足コキは奈々瀬の悲鳴と終始聞こえている郁子の悪戯めいた含み笑いの声が非常にエッチだと思いました。本編中でもバイノーラルっぽくしてくれてたらもっとはなまれてたんだけどなぁ…


 -奈々瀬
淳之介の一番の理解者であり恩義を返さなければいけない人であり相棒でありと、幼馴染ポジとしてこれ以上ないほど属性が強化されました。実際には幼馴染とは違う関係性だと思うけど
本作で一番好きなシーンが礼ルートの告白シーンなんですが、他のキャラよりも数段真に迫った柳さんの演技と、奈々瀬だからこそ言える台詞とで淳之介を叱咤し激励する姿には涙を禁じえません



・お話の〆
ジュブナイル物のお約束として、「振り返る」視点はプレイ体験の総括としてとても効果的だとあらためて感じました。ヒナミAfterでは、淳之介とヒナミの結婚式に当時の仲間たちが集まる中で久しぶりに出てくる「NLNS」というワード、当時から変わったことや変わっていないことに思いを馳せ思い出を慈しむ。キャラクターとプレイヤーとが同時に同じ感慨に浸りながらエンディングへ…と非常に良い読後感を齎してくれます
文乃Afterはその極致で、使われたCGもクリア後のトップ画面も気が利いていました。本編であんなに頭のおかしいギャグの奔流を浴びせておいてしっかり繊細なエモ演出をキメてくるのでその落差で失神します



・BGM
前作の時点でかなり完成されていましたが、今作では前作で使われていたBGMを意識した新曲が非常に良い仕事をしていました
ボーカル曲は全部好きですが、特にMay Day+^2は、歌詞を読むとあなた、というか淳之介に恋心を抱いている気持ちがこれ以上ないほどに詰まっていて、SS側ヒロインの、一度は淳之介と敵対し、敗北し、和解し共闘するという前作からの流れと、今作での愛を育んでいく流れとを想起させてくれます
前回の+は、手に入れた日常をどうか平穏に過ごせますようにというNLNS組の願いが主だっていたのでテーマ的には重なり合わず、むしろ二つあることでぬきたしのEDとして過不足なく物語を締めくくれているんじゃないでしょうか。まさにめでたし めでたし といったところで



得点の内訳は以下のように考えました
総得点:88/100
シナリオ:35/40
キャラクター:29/30
BGM:10/10
システム:5/10
ビジュアル:9/10