ErogameScape -エロゲー批評空間-

7080526さんの白刃きらめく恋しらべの長文感想

ユーザー
7080526
ゲーム
白刃きらめく恋しらべ
ブランド
CRYSTALiA
得点
75
参照数
1035

一言コメント

仮面の下、前作では日の当たらなかった暗部を主軸としたお話。扱ってる題材が題材だけに登場人物も少な目で寂しい印象があるものの、その分テーマに一貫性があり纏まりのいい作品になってます。これはこれで中々……

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

「人は誰もが仮面を被っている——」
前作はライバルと競いあうことで成長していくのに対して、今作はヒロインが化妖との戦いの中、自分自身と向き合いながら成長していき、自らの壁を乗り越える物語だったと思います。
ヒロイン達の弱さを主人公と一緒に二人で乗り越えていく過程はいいのですが、如何せん共通が短いのでキャラクターにあまり入り込めなかったのが痛い。ただ、要所要所に光るものは感じましたし、伝奇バトルとスポーツの間で揺れていた前作と違い今作は伝奇バトル一本でやりたい事が分かりやすいのがいいですね。前作には及びませんが悪くないゲームでした

ルートごとの感想を少し



・姫芽ルート
トラウマ(化妖による姉の喪失)を乗り越える話
ですが肝心の姉が共通では出てこず個別に入って回想で少しだけ登場、姉との日常シーンなんかもほぼ無かったのでそれ程感情移入できず終わってしまった感
ただこの子はスイーツ食べてる時の表情がすっごく可愛くて癒されましたね このキャラに限らずめくらべの登場人物は恐ろしいほどの甘党だらけなのですが、紗月所属の人間は皆甘党なのだろうか……




・瑠璃ルート
戦闘狂、バトルマニアな子 実は一番好きなルートだったり
初めて彼女の刀「天久遥華」を見たときに「攻撃力特化の代わりに耐久力を削ったピーキーな刀」ということで「これはひょっとすると彼女自身の力の強さと、それ故の精神面での弱さを暗示しているのだろうか……」などと邪推していたが当たらずも遠からず、強い彼女が守りたいものを守りきれず苦難する物語でした

「瑠璃は斬ること「しか」できないんじゃない、斬ること「が」できるんだ」
主人公の言ったこの台詞が本当に好き 俺もこんな風に肯定されてぇ……
この言葉をきっかけに彼女は「理想の自分」になる為に「できること」を一つ一つ探して努力していくんですよね
最後のアレは正直ご都合感ありましたが、今まで努力し続けてきた彼女が誰かを守るために限界を超えて一度限りの奇跡を起こす……まあ、それくらいは報われてもいいのかもしれませんね

いつの日か 理想の自分になるために




・茉莉花ルート
メインだけあって他のルートより気合の入った出来 茉莉花ちゃんのビジュアルで購入を決めた人も多そう
そんな彼女の「仮面」は「風嶺」という家名、それに負けないだけの努力を積み重ねた彼女が主人公と並び立つためにもう一回り成長するお話
なんと言っても茉莉花ちゃんの告白がカッコ良すぎる。「幸せが何なのか分からないなら、私と一緒に幸せを見つけよう」だなんて普通主人公がカッコつけて言うような台詞よね そりゃあ主人公もぐっときちゃうってもんです

後半、化妖に惑わされた彼女は「自分にとって有益だから、自分の苦手なものを振り払ってくれたから付き合った」と迷いを口にしますが、これってそんなにおかしな話でもないですよね 自分を守ってくれる人と一緒に居たいってのは当然の感情ですし 自分が弱っている時は自分を守ってくれる人に頼ったっていいんですし
「風嶺」故の完璧であろうとするからこその苦悩 
要は一人で背負い込みすぎなんですよね ルート序盤で彼女が語った通りに

自らの迷いを打ち払い、より気高く、より強く 「風嶺」の名に負けぬ自分に
無難ですが、悪くないグランドルートでした



最後に一言
シーン数多いのはいいんだけど出来たら前戯と本番で二枚CG使って欲しかったな……せめて初体験だけでも